輝かしい成功の裏に、幾度もの失敗と孤独があったスティーブ・ジョブスは、瞑想によって集中力と直感力を向上させたというのは有名な話だ。自己実現や睡眠向上、本質を見極める判断力を養う事ができる、と既に世界中のクリエイティブピープルに取り入れられている瞑想。豊かな自然に囲まれたリトリートは、初心者から熟練者まで包括的に次のステージに導いてくれるはずだ。

 

日本のほぼ中心に位置するとされる淡路島は、穏やかな青い瀬戸内海に囲まれた豊かな島だ。古事記によれば、神であるイザナギノミコトとイザナミノミコトが最初の島として淡路島をつくり、そこから国生み神話が始まったとされる。そんな神聖な島の北部、山中に禅坊 靖寧は突如として現れる。

全長100mの空中回廊を抱き、まるで深い森に船が浮かぶように幻想的な建築を手がけたのは、プリツカー賞受賞建築家の坂茂。コンクリートと鉄を巧みに使い分け、細部まで計算された木造構造には、建設で伐採された木材が再利用されている。1986年に再生紙の紙管を発表して以来、サステナブルな建築の先駆者として知られる坂。その素材や構造への挑戦、美と合理性の両立、公共性を取り入れた建築美学が、人の手によって自然との美しい調和と融合を実現している。

食事は、肉・魚・油・小麦粉・白砂糖を一切使わないオリジナルの発酵料理「禅坊料理」。醸造料理人であり日本の発酵食文化伝承人、伏木暢顕の監修のもと、地元や自家栽培の野菜を主役に調理される。味噌や醤油、麹といった古来の発酵調味料の中でも、1年から3年かけて伝統的な製法でつくられたものを厳選し、生きた酵素や菌をそのまま届けることを信念とする。四季の味覚と細やかな手仕事を感じながら、口の中で完成する味わいをじっくりと楽しむことができる。

月一回開催のZEN Detoxリトリートは、ヨガや瞑想、呼吸法といったワークが組み込まれたプラン。禅由来のメソッドが、日常で散漫になった思考や精神を整えてくれる。宿坊のように並ぶ部屋では、畳製のベッドに自ら布団を敷き、寝床を整える。一つ一つの儀式を丁寧に行うことで、心が静寂へと向かっていく。360度のパノラマで自然が広がるウッドデッキで行う昼のヨガ、森の静寂に包まれる夜の瞑想、そして早朝の雑巾がけが、心の塵を払う。部屋や回廊には禅語が記されており、一つ一つの行動が意味を持つ。清らかな脳内に、その時々に必要とされる言葉がスッと入り込み、新たな学びの扉を開く。独特な波長によって、自己が静かに調律されていく。

ここで得られるラグジュアリーは、高価なソファや高級素材で設えられたオーベルジュのそれとは異なる。全長約100mのウッドデッキに並ぶ特徴的なリトリートチェアに腰かけ、深い緑に身を委ねれば、自然の色、音、香り、風、光、時間が、宇宙のように広大な空間となる。やがてそれらが静かに自身の中へ拡張していくのを感じるだろう。深く潜り、脳内を巡る思考と向き合うことで、身体の中心に一本の糸が紡がれる。その糸は次第に太く、強くなり、自らの本質をかたどっていく。瞑想による精神体験は、誰とも共有できないパーソナルなもの。己のコンディションで感覚は全く異なる。真の冒険は内にあり、人生は旅なのだ。自身をしなやかに高め、研ぎ澄ますリトリート施設として、最高の環境がここにある。

 

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禅坊 靖寧
ZEN Wellness 日帰り ¥23,000〜 1色付き
ZEN Stay宿泊 ¥48,000〜 2食付き ほか様々なプラン