グレン・マーティンス(Glenn Martens)がMaison Margiela(メゾン マルジェラ)のクリエイティブディレクターに就任してからのデビューイヤーは、メゾンの輝かしい過去への控えめとは言い難いオマージュと、既存のルールを破る意志によって特徴づけられる。初の「マルジェラ・セレブリティ」を誕生させるといった演出も、その姿勢を象徴する出来事だろう。だが、その一連の動きの底には、静かで一貫したひとつの筋が通っている。

年の締めくくりとして発表されたホリデーキャンペーンは、マーティンスによる新生Maison Margielaが秘める力を静かに示している。18枚のヴィジュアルは、声高に主張することなく、ただ淡々と “本当に良い服” に焦点を当てている。もちろん、これまでのMaison Margielaが着られない服だったわけではない。しかしマーティンスの手がける服には、より地に足のついたリアリティがある。

©︎Maison Margiela

ウォッシュ加工のすっきりとしたジーンズは、実用的でクラシック。ゆったりとしたベージュのトレンチコートも、ルーズな袖口からシルクの裏地が大胆に覗く瞬間でさえ、その本質はあくまで正統派だ。

ジュエリーも同様だ。かつては端正そのものだった定番のバングルは、ひねりを加えて歪ませることで、親しみやすさを備えながらも、決して凡庸ではない新しいフォルムへと生まれ変わっている。

©︎Maison Margiela

「Maison Margielaはひとつの思考の流派を生み出した」。2018年、当時新進気鋭だったマーティンスはそう語っている。今や公然たるMaison Margiela愛好家として知られる彼自身は、その “学校” のカリキュラムを自ら編み直す立場にある。そしてメゾンへの深い理解は、洋服そのものだけに留まらない。

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キャンペーンでモデルの周囲を舞う紙吹雪に目を向けてみよう。決定的な瞬間には、いつも紙吹雪が存在してきた。

1990年春夏コレクションでは、モデルのポケットから紙吹雪が投げられた。それは、創業者マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)が、再利用や脱/再構築を軸とした、根本的で民主的なヴィジョンを提示した、転換点となるショーだった。その後も紙吹雪は繰り返し登場し、1995年のブリュッセルでの展示会では床一面を覆い、2003年秋冬には再利用されタビブーツに貼り付けられた。そしてブランド設立から20年、Maison Margiela最後のショーでは、銀色の紙吹雪が空から降り注いだ。

再び舞い上がる紙吹雪。それは今、“良い服” の新しい時代の幕開けを告げている。

©︎Maison Margiela