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Where the runway meets the street

北アメリカの東海岸をずっと南へ。にょきりと突き出た半島は、最南端のフロリダ州。先端に位置するマイアミから突き出たサウスビーチには、プエルトリコやキューバ、ドミニカ共和国といった近隣の島国からの移民も多い。カラフルなアール・デコ建築の町並みに陽気でラテン基質の開放的なムード。きらびやかに輝く豪邸、人口のヤシの木と砂浜、ゴージャスな水着姿、ファッション、アート……サウスビーチの最盛期90年代とともに育ったデザイナー、エステバンは当時を振り返る。

デザイナーのエステバン・コルタザール(左)

「学校のバスを待っている間、ニューズカフェ (私が住んでいた場所の1 階) でいつもジャンニ・ヴェルサーチが朝食を食べているのを見ていました。Joiaレストランでマドンナに会ったとき、私が被っていたカウボーイハットを彼女に渡したら、その後それをパフォーマンスでも使ってくれたこともあるんですよ」

コロンビアで生まれたデザイナー、エステバン・コルタザールは幼少期に受けた刺激をそのままクリエイションに落としこんだような鮮烈なテイストが特徴的だ。16歳にマイアミでキャリアをスタート、18歳でNYコレクションデビュー。その後エマニュエル・ウンガロを経て、2014年に自身の名を冠したブランドをスタート。ビヨンセやリアーナ、ケイト・ブランシェットと、個性を存分に引き出してくれる彼を頼りにするセレブリティは後を絶たない。

Desigual(デシグアル)でのはじめてのコラボレーションでは、自身の原体験であるマイアミのバイブスを前面に打ち出すコレクションを発表。画家である父親ヴァレンティノ・コルタザールがサウスビーチで描いたモチーフ「El Beso」を大胆なドレスやシャツワンピースに。また、写真家のアンディ・スウィートがサウスビーチを写した70年代の写真をパッチワークに落とし込んだ。個性豊かでエキセントリックな作品からは、人々の熱気があちこちでバブルのように弾け、街の彩りへと変幻していくマイアミのイメージがそのまま閉じ込められているようだ。

「今回のコラボレーションをきっかけに、Desigual.と私は思っていたよりも多くの共通点があることに気づいたんです。 色、プリント、そして夏を愛することに加えて、私の生まれ年 1984年に設立されたこと、そして前向きでハッピーなメッセージを発信していることです」

長い間、マイアミビーチの黄金時代にインスパイアされたコレクションを作りたいと思っていたという。

「アーティスト、ファッション、ラテン カルチャー、スーパー モデル、ドラァグクイーン、エキセントリックな退職者など、多くの素晴らしいクリエイティブな人々のるつぼで、非常に特別で解放的な空間そのものでした。そこで、このアイデアを共有するのに最適なプロジェクトだと思いました」

2019年のアート・バーゼル・マイアミでは、ファッションショーやエキシビションを発表したDesigual.。ショーにはマドンナの愛娘、ローデス・レオン(Lourdes Leon)を始めとしたダンサー達が素肌で混ざり合い愛を表現し、スペインのアーティスト、ミランダ・マカロフのヴァギナの入り口を通ってふわふわしたピンクの子宮へ入るインスタレーションは、個人の解放や多様性の包括を示唆しながら楽観的に訴えかけていた。

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ファッションは多様性をセレブレートする恰好の媒体であり、違いやコンプレックス、マイノリティこそが魅力であるというありかたが力となって新しい世の中へと牽引する原動力を秘めている。COVIDを始めとした様々な社会背景で生じた分断に対して、エステバンは愛やパッションで直接的に訴えかける。

「私は憎悪犯罪、暴力、あらゆる種類の虐待に反対です。 今まで以上に、私達はプラットフォームと声を使って、希望、団結、前向きなメッセージを発信する必要があると思います。 お互いに親切で、インクルーシブであることはクールだということをファッションを通して伝えていきたいと思います。ポジティブであるということは選択であり、ライフスタイルであり、私たちを一つにする力なのです」

エステバン・コルタザールのコレクションは、一部のデシグアル ストア、公式オンラインストアにて発売中。