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イタリアの伝説的高級車メーカーMaserati(マセラティ)が、新リテールコンセプトで顧客体験の全面刷新に乗り出す。トライデントのエンブレムを掲げるMaseratiの最高峰を具現化した、五感をダイナミックに刺激する没入感満載の空間を期待して良い。そこにはイタリアが世界に誇る上質なクラフツマンシップと魅惑のホスピタリティが満ちている。足を踏み入れた瞬間目に飛び込むセントラルアイランド「コンフィギュレーションバー」では、ワインにジュース類、イタリアンスタイルのエスプレッソが振る舞われる。

ミラノの歴史的かつスタイリッシュなマジェンタ地区に位置する新スペースに、マセラティ独自の新環境「Sartoria/Officina(サルトリア/オフィチーナ:イタリア語でテーラーショップ、製作所の意味)」が実現する。自動車工学の技術の力強さと、繊細で洗練されたラグジュアリークラフツマンシップが完璧に調和した空間のコンセプトの中核には、オーダーメイドデザインの精神がある。外からでも瞬時に、壁面LEDがドラマティックなヒーロー車のディスプレイに目が引き付けられる。

店内では、カッシーナのカスタムインテリアを始めとする家具類が、イタリアの古き良き片田舎の町を思わせる温かなアースカラーを基調にまとめられている。ここで提供されるMaseratiの新カスタマイズプログム「Fuoriserie (フオーリ・セーリエ:イタリア語でカスタムビルトの意味)」では、美術館から作品を直接買い取る美術収集家感覚で理想の車作りをすることができる。ホイールキャップやステアリングホイールはスライドガラス越しに宝石のように展示され、車体本体は、暗がりのギャラリーに鎮座する女神の彫刻のように、センターステージでドラマチックなスポットライトを浴びる。

Maseratiがそんな没入型空間の実現を託したニューヨークのエクスペリエンスデザイン企業「Eight Inc.」は、AppleやVirgin Atlanticなどの大手ブランドを始め幅広い顧客ポートフォリオを有する。デザインディレクター、マーカス・ノン氏は「Maseratiは熱き少数精鋭の緊密なコミュニティだとすぐに理解できた」と話す。オンラインプラットフォームへの顧客の移行が加速化するなか、なぜわざわざ新しい実店舗での体験に力を注ぐのかという疑問もあるかもしれない。しかし、パンデミック中に立てられていた予想を裏切る形で、顧客はコロナ脱却期の今も、実店舗から離れていない。小売の未来はブランドが実店舗をいかに柔軟かつ有意義に活用するかにかかっていると、ノンも語る。「Maseratiが目指しているのは純粋な販売の場ではなく、ライフスタイル、ホスピタリティを重視したブランド実体験の場」だと。

ミラノ店のグランドオープンに続き、Maseratiの新リテール体験は今後世界各地の既存店舗で展開される。香港、上海、メルボルン、マドリッド、ベルリン店は年内、ロサンゼルス、トロント、ロンドン、東京店は2023年の改装を予定している。