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From the ground up

巷でよく耳にするようになった「サステナブル」や「SDGs」に、耳が痛いとも言っていられない。それぞれがそれぞれのかたちで地球について考えなければいけない時代だ。そして、少しずつでいいから持続可能な社会への一歩を個人のレベルで考えてほしい、と大衆を啓蒙するのは、日本でもカルト的人気を誇るカルチャー人の一人、ショーン・ウェザースプーン(Sean Wotherspoon)だ。

アメリカで6店舗を運営するヴィンテージストア「Round Two(ラウンドツー)」の共同創設者の一人で、熱心なヴィーガンであるショーンは、その審美眼とセンスでストリートカルチャーの権威達から一目置かれている。ヴィンテージストアのオーナーでありながら数々のスニーカーコラボを手掛け、世界は熱狂。そしてその熱は冷めることを知らず、昨年には「adidas Originals(アディダス)」のスーパースターをモデルに完全ヴィーガンの「SUPER EARTH」を発売。そして、前作のコンセプトを踏襲したadidas X ショーン・ウェザースプーンの第二章が幕をあけようとしている。

発売を目前に控えたショーンに、今作に込めた想いとヴィーガニズム、SUPER EARTHプロジェクトの裏話を聞いた。

——ヴィーガンについては奥様からいろいろ教わったそうですね。ショーンさんの考えるヴィーガンプロダクトの重要性についてお話しください。

そう、ヴィーガニズムについて最初に教えてくれたのは妻のアシュリー。たくさん教わったよ。いろいろなことをきちんと知った上でどうするかについては僕に自己判断してほしいとアシュリーは思っていたんだ。もうかなり昔のことだけどね。ヴィーガンになった時、僕はプロダクトデザインをしていたわけではなかったけど、ただヴィーガンにはなるべきだと思っていた。

後になって自分でスニーカーを作る機会に恵まれるようになった頃には、ヴィーガンというものが生活の大きな部分を占めるようになっていた。だからデザインにおいてもヴィーガンというテーマを貫くべきだと思った。だから、自分のプラットフォームを使って、これまでとは違った感じで学ぶ機会を提供できないかとずっと考えてきた。そして今、ヴィーガニズムについて話したり、自分のプロジェクトでヴィーガンのテーマを扱ったりして、ヴィーガニズムがどういうものか、どう地球の助けになるのかを、たくさんの人に知ってもらえるようにしている。

——いち個人、そして企業、ビジネスとして、サステナビリティーについて最初はどのように思っていましたか?

100%完全なサステナビリティーというものがほぼ不可能だということをまずは認めて、それからその先を考えるようにした。ビジネスにおいても生活においても、何らかの廃棄は必ず出てしまう。でも、より持続可能な方法に向かうように決意して取り組むことが大事なんだ。

adidasとのコラボレーションでは、製造工程についていろいろ新たに学んだ。それが僕自身の私生活を変えるきっかけになった。プロダクトのデザインをしたり、新しい技術や素材について知ると「これは家でも実践してみないと!」と思う。アシュリーと一緒に娘のオムツやお尻拭きを再利用できるものに変えてみたり。こんなこと、言うつもりは全然なかったんだけどね!

自分自身や自分のこれまで習慣的にしてきたことを変える方法について、業界全体を本当に変えるにはどうしたらいいかをずっと学び続けているよ。

——持続可能目標に向けて取るべき行動や責任は個人と企業で違いがありますか?

SW:究極的には人類全員が地球に対して責任がある思う。企業だって個人の集まりだし、まずは小さな変化を起こさない限り大きな変化が起きることは絶対ないと思う。全員が何らかの方法で貢献しないと。「トントンにする努力をしよう」って僕はいつも言っているんだ。私生活や仕事で、ちょっとしたことでいいから自分の出した悪影響を回収できるような方法を見つける。まずそれがとても大事だと思う。大々的なことをしたり暮らしを完全に変えたりしなくてもね。

——最近世間の意識は単なるデザインや実用性といったものよりも「ストーリー」に向いてきていますよね。投資対効果よりもエモーショナルな価値を求めているというような。プロダクトへのストーリーの投影はどのようにしていますか? デザイン全般においてのことと、それからadidasの例について教えてください。

スニーカーでもTシャツでもマーケティングキャンペーンでも、何かをデザインする時は、自分自身がターゲットの消費者だと考えるようにしている。シューズのどんなところに自分がワクワクするかを考える。そんなふうに内省を繰り返しているうちに、自分がいかにプロダクトの中に隠されたディテールを自分で見出すのが好きかということが分かってきた。僕のデザインしたものに関して、買うその瞬間が興奮の最高潮なんてことがあったら嫌だね。僕の作ったシューズは、買ってくれたお客さんがワクワクしながら家に持って帰って終わりじゃなくて、家に持ち帰った後にさらにいろいろな発見をしてもっと喜んでもらえるようなものであってほしいと思う。

adidas Originalsとのコラボレーションでは、地球という惑星をめぐるSUPER EARTHのストーリーの語り方が隠れたディテールになっているよ。去年のSUPER EARTHのヒールタブをめくると「SuperEarth」のロゴが出てくる。そこにロゴが隠れていることに気付いている人はかなり少ないだろうね。そこがいいんだよ! それから「ZX 8000」では地球の多様性を表現するためにパッチワーク素材を使うことにした。どれも完全なヴィーガン素材で、手に取ると全部質感が違うのが分かる。

自分のプロダクトにはできあがっているものを受け取って終わるようなものであって欲しくない。手にした人が自分のストーリーを考えられるような余白を残しておきたい。「これはどういう意味?」とか「なんでこんなのをここに付けたんだろう?」みたいな疑問を掻き立てるものに仕上げられると最高だね。

——今回のZX 8000のコラボレーションについて教えてください。去年のスーパーアースと違うストーリーがありますか?

ZX 8000はSUPER EARTHのストーリーの続きなんだ。もちろんシルエットも違うし、それぞれアイコニックな歴史を持ったシューズだけど、僕はスーパースターもZX 8000も両方キャンバスのように捉えて、そこに、地球という惑星がいかに特別なものかというストーリーをのせている。

SUPER EARTHは当初、何かadidasと大きなことがしたいなと思っていた時にコンセプトとして浮かんだものなんだ。なるべく多くの人により持続可能な社会の一環になってもらうきっかけになるような大々的な何かをしたいと思っていた。地球を客観的に見つめて、地球のことをスーパーヒーローだと思ってもらえるきっかけになるような連続的なストーリーを作って、複数のシーズンにもわたって展開したいと思った。地球は僕達に必要な全てを作り出してきてくれた。だから僕はフットウェアを通して、人類がかつて触れてきたものの中で地球ほどすごいものはないということを示したかったんだ。

僕はコラージュやコレクションが自分の人格の一部と言っていいほど好きなんだ。だからSUPER EARTHプロジェクトでもそれぞれのシューズがストーリーの一部を受け持つようになってるよ。

——ビジネスにおけるサステナビリティーについての考えを聞かせてください。私はメディアで仕事をする中で、各企業の持続可能目標に関するメディア予算が徐々に増えていると感じていて、それは良いことだと思っています。10年前であれば「サステナビリティー」をマーケティングに「濫用」しているととられたかもしれませんが。

そこについては僕もこれまでたくさん考えてきたけど「サステナビリティー」という言葉には注意が必要なんだよね。「真に」サステナブルになるのは極めて困難なことだから。でも大事なのは僕達の業界が地球への影響の最小化に向けて手を打っていくことだと思っているよ。「サステナビリティー」という言葉がキャッチコピーみたいになっているけれど、ずっと使われてもっと認知度が上ってほしいと思う。もっと認知が高まってサステナビリティーについて語るブランドがもっと増えれば、文化として浸透して、世界全体がそこに付いてくるはずだ。誰もがサステナビリティーに関する情報に触れて、その一端をどう担うか自分で意識的に決められるようになるのは絶対にいいことだよ。

ZX 8000 SUPEREARTH SW

「ZX 8000」をモデルに、リサイクルポリエステルと天然素材のキャンパス地、アウトソールには廃棄ラバーを使用したサステナブル仕様に加えて、多種多様なテキスタイルのコラージュは、地球に住む人類の多様性を賛美したデザインに。4月16日(金)7:30まで、アディダス アプリで抽選販売応募を受け付け中。

発売日:4月16日(金)
価格:17,600円(税込)
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