style
Where the runway meets the street

CELINE(セリーヌ)」は、2020-21年秋冬コレクションを男女合同形式のショーで発表した。エディ・スリマン(Hedi Slimane)に承認欲求はない。111のルックを見れば、それは明白だった。彼を称賛する記事を書かなかったためにショーに招待されなかったり、あえて後ろの10列に追いやられたりしたジャーナリストやファッションエディターの中には、このことに同調しない人もいるだろう。だが、CELINEでクリエイティブ・ディレクターに就任して2年が経った今も、エディは変わらず、エディなのだ。

パリ出身のデザイナー、エディ・スリマンのビジョンは一貫している。ルック11を見た後にルック73の正確なフォルムを予測できる人もいるだろう。メンズモデルは、レザージャケットにウルトラススキニーとチェルシーブーツを合わせたダンディなロックスタイルで登場。ショーノートによると、ブラウス、クロップトップ、極細のナロータイはユニセックスで使えるという。エディにとって、メンズとウィメンズのショーを混合で行うのは今回が初だった。

エディの前任、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)は2009年リゾートコレクションでデビューする前、VOGUEに次のように語っている。「私たちがやっていることは、すべて前進するためにあるのです」。実際、彼女のショーのデザインが多くの人々に完璧に理解されるのは、店頭に商品が並び、より大衆に受け入れられたときだった。

エディは、フィービーのような手法を取ることにほとんど関心がない。彼は、自身の「Dior Homme(ディオールオム)」や「SAINT LAURENT(サンローラン)」時代のクリエイティブを参考にし、過去を重んじることを好む。ほかのデザイナーとは異なり、CELINEのアーカイブ作品に一切手を加えることなく復活させることもしばしばだ。今回のコレクションでは、1966年に誕生したハンドバッグ「Sulky(サルキー)」が登場している。

しかし、世界は変わり、ファッションも変わった。今や消費者は、ブランドが単なる商品の売り手以上の存在であることを求めている。ブランドとは、何かを擁護する存在でなければならない。デザイナー、ミュージシャン、アーティスト、映画製作者、その他さまざまなクリエイティブの役割を持ち、作品により広い世界を取り入れることが求められている。

身体の多様性、サステナビリティ、透明性――これらは、今日を生きる若者たちのマインドを占めるトピックだ。しかし、上の世代への追従に反抗し続ける若者に代表される、いわゆるカウンターカルチャーの影響を受けてきたエディには、これらのテーマを探索する余地がほとんどない。彼は一貫して、自身の特異なビジョンを押し出している。業界をリードするラグジュアリーブランドであるCELINEにとって、現代の若者たちに目を向けないことで失っているものもあるだろう。

20年にわたるキャリアの中で、すでに成功しているラグジュアリーブランドの売上をさらに拡張するエディの卓越した能力は、称賛を浴びてきた。Dior Hommeから始まり、SAINT LAURENT、そしてCELINE。結局のところ、彼はどのメゾンにおいてもコートやスーツ、ブーツのキラーアイテムを生み出すことができるのだ。今日、消費者のブランドへの忠誠心はかつてほどないが、「Rick Owens(リック・オーエンス)」や「Maison Margiela(メゾン・マルジェラ)」のファンのように、エディには熱狂的なファン層が存在する。彼らは、エディのすべてのステップを祝福しているのだ。

ラグジュアリーは、ブランドによって定義されている。ラグジュアリーの価値を前進させることにさほど興味のない消費者に対し、エディにできるのは、これまで通り彼のビジョンを貫くことかもしれない。