style
Where the runway meets the street

セレブや音楽、サーフやスケートボードなどのカルチャー発信の地、アメリカ西海岸のロサンゼルスは、近年ファッションシティとしての成長が目覚ましい。そのロサンゼルスの中でも、ビートニクやヒッピー、ボヘミアンカルチャーの中心地となったヴェニスビーチは、特に独特で異質な雰囲気を漂わせる。

ストリートパフォーマーやローラースケート、スケボーパーク、ストリートボール、ヘナタトゥーなどを楽しむ人たちで溢れかえり、至る所にグラフィティが描かれている。この多様なカルチャーをはらんだ自由と解放の街ヴェニスビーチが、DIOR スプリング 2023 メンズ カプセルコレクションの舞台となった。

コラボの帝王、キム・ジョーンズはこれまで様々なコラボを仕掛けてきたが、本コレクションではゲストデザイナーという手法で、DIORを異なる視点で見ることができる、ヴェニス出身のイーライ・ラッセル・リネッツ(ERL)を迎えた。カニエ・ウエストやレディー・ガガのMVやセットデザインを手掛け、楽曲制作やアパレル制作などをマルチにこなす弱冠31歳のイーライは、キムと共に自身の生まれ年である1991年のジャンフランコ・フェレ時代のアーカイブに着想し、「マキシマリズム」のアイデアをこのコレクションに詰め込んだ。

キムが得意とするモダンと伝統の融合、二人の個性と二つの都市、ヴェニスのカルチャーとDIORが誇るサヴォアフェール、完璧と破壊、全ての要素が絶妙なバランスで調和する。パープルやブルーのパステルカラー、ビーチを彷彿とさせるサンドカラーを基調にしたリラックスムードに、ポップピンクやターコイズのアクセントが一気にモダンに昇華させる。パール、ビジュー、クリスタルを散りばめた職人技を垣間見るフーディーやパンツのサイドライン、ニットに加え、光沢のあるサテンのテーラリング、キルティングのような「カナージュ」モチーフを用いるなど、テクスチャーやシルエットはこれまでになく豊富だ。

人種と文化のるつぼ、カリフォルニアの多様性が伝統的な職人技でマキシマイズされた最も自由な宴は、世代を超え、世界をつなぎ、解放する。

©︎Alfredo Piola