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Where the runway meets the street

ファッションブランド「1017 ALYX 9SM(アリクス)」の創設者であるマシュー・ウィリアムズ(Matthew Williams)が、「GIVENCHY(ジバンシィ)」のメンズとウィメンズコレクションのクリエイティブディレクターに就任したと公式発表された。このニュースはGIVENCHYの公式Instagramで確認されている。

今年4月、3年間ブランドを率いた英デザイナーのクレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)の解任を発表し、直後から後任は誰なのか様々な憶測が飛び交った。LVMHは、ウィリアムズをケラーの後任として迎え、10月に新コレクションを発表する決意を固めた。

ウィリアムズは「GIVENCHYのクリエイティブディレクターに就任し、本当に光栄に思っている」とGIVENCHY公式Instagramへ投稿したボイスメモでコメント。「この役目を負うのが僕の長年の夢だったし、ここにいることが未だに信じられない。15年もの間、このただ一つの目標のために日々精進した。同時に、今までにない大変な時代だからこそ複雑な気持ちでもある。僕のコミュニティーの仲間や同僚と共に希望を与え、GIVENCHYを媒介として、この業界と世界にいい変化をもたらすことができればいいなと思っている」

 

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A voice note from our new Creative Director, @MatthewMWilliams.

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ストリートウェアをラグジュアリーに昇華することで知られるウィリアムズは、ミラノを拠点とし、自身の長女の名を冠したブランド1017 ALYX 9SMと共に数年でメンズラグジュアリーファッション業界の時の人となった。ウィリアムズと親交のある、「Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)」のアーティスティック・ディレクターであるヴァージルアブロー(Virgil Abloh)やDIORのバックルで協業したキム・ジョーンズ(Kim Jones)など、LVMHファミリーとは親密で、GIVENCHYのクリエイティブディレクター候補として早くから噂されていた。

LVMHグループの代表でCEOのシドニー・トレダノ(Sidney Toledano)は、「ウィリアムズがLVMHグループに加入してくれてとても嬉しい。LVMHプライズの一員だった頃から今日までのウィリアムズの成長が見られて嬉しかった」と述べている。

2012年、ウィリアムズは、カニエ・ウエスト(Kanye West)と仕事をした際や、裏側のコネクションで出会ったヴァージルアブロー、ヘロン・プレストン(Heron Preston)、ジャスティン・サンダース(Justin Saunders)と共に、DJクルーからストリートウェアラインで、権威あるクリエイティブの小さなコミュニティーを創るためのアンダーグランドなサブカルチャーのルーツとなり、その後いくつかの人気アイテムを輩出した、ネットから生まれたコレクティブ「Been Trill(ビーントリル)」の一員だった。

昨年Highsnobietyで、コレクティブは「ファッションを征服しようとしたのではない、ただ新しさを取り入れただけ。それが、ストリートウェアとより認識されるようになった」と語った。しかし、伊老舗リテーラーSlam Jamのルカ・ベニーニ(Luca Benini)の後援もあって2015年に設立した1017 ALYX 9SMでは、常に変化し続けるユーズカルチャーを代弁するラグジュアリーの開拓者としての自身を確固たるものにしている。

1017 ALYX 9SMと共にウィリアムズは、ストリートウェアの美学や、ドロップスタイル、購買者とコミュニケーション、「Nike(ナイキ)」「Moncler(モンクレール)」「Stüssy(ステューシー)」「Mackintosh(マッキントッシュ)」など様々なブランドとコラボをすることで、ラグジュアリー業界における現代的なラグジュアリーブランドのあり方を確立した。サステナビリティや革新に焦点を当て続けて。現在、商業的に成功しているこのブランドには、メンズやウィメンズ、キッズ、アクセサリー、ジュエリーのほか、時計や家具、ドッグウェア、ルームウェアなどにも足を踏み入れている。

昨年、Highsnobietyのポッドキャストで「僕の目標は、現代的なクラフトマンシップの例となるブランドを創ること。サステナビリティはモダンラグジュアリーだ。なぜラグジュアリーは既存のクチュール技術を用いる必要があるのか。なぜそうした技術は現代的な解釈を示せないのか」と語った。

ケラーやGIVENCHYの元CEOフィリップ・フェルトゥナート(Philippe Fortunato)時代のGIVENCHYオーナーのLVMHは、20億ユーロを超える収益を記録したDIORのファッションビジネスに成長させたいと願っていた。GIVENCHYの推定収益はその15分の1に留まった。この目標を達成し得るのか。2カ月前、DIORアメリカの代表兼CEOだったルノー・ド・レスケン(Renaud de Lesquen)を同ブランドの新CEOに任命した。

そして今、ウィリアムズが舵をとるGIVENCHYが初の広告キャンペーンを公開。

ウィリアムズは、長年の友人であり協力者でもある写真家、ニック・ナイトが撮影した一連のヴィジュアルで、GIVENCHYに対する自身の美学を表現。今後ウィメンズとメンズ両コレクションにおいて前面に打ち出していくハードウェアシンボルをフィーチャーした。

パリでの新生活から着想を得て、愛着を感じた場所や象徴的なエンブレムをデザインに取り入れた。自ら撮影したセーヌ川の橋にある「Love Locks」の写真は、同ブランドの新シグネチャーのきっかけになったという。

定番のチェーンに独自のヴィジョンを融合させ、フラットで角度のある環を「G」の形に定型化。ゴールドで仕上げた「ジバンシィロック」は、Uロックのデザインを採用し、テクスチャーのあるネジとシンプルで幅の狭いボディに、細長いシャックルを組み合わせてデザイン。エキゾチックレザーのエンボス加工を施した南京錠は、ボディの底部に2つのアシンメトリーな穴を配し、小ロックを取り付けても、外しても使用できる。

ウィリアムズが監修し、ナイトが撮影したデジタルプラットフォーム用の動画では、ウィリアムズのもう一人の親友であるラッパーでソングライターのプレイボーイ・カルティ(Playboi Carti)の声を起用。メゾンの新しいシンボルが高解像度プリンターから流れ出る「制作進行中′」映像に乗せて、カルティが「GIVENCHY」を正しい発音と間違った発音で繰り返す。

キャンペーンでは、新シンボルとして、小さくした「GIVENCHY」及び「4G」のシグネチャーを自由裁量、世俗、洗練を主張するために静止画で際立たせた。