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数々の有名ブランドやファッション誌などが発信する小浪次郎の写真からは、ここ数年でより強く、そして魅力を増した小浪次郎という写真家の力や奥行きが感じ取れる。日本国内で、ファッションブランドにも愛される人気の若手フォトグラファーとして注目されてからニューヨークに拠点を移すまで、ほんの数年だったのではないだろうか。現在もグローバルに活躍する小浪だが、彼の本質や原点はやはり八丈島と、父親との時間にあるのだろう。そのノスタルジックで日本人らしい距離感と親密さは過去のものでありながら、夕方の太陽のようなあたたかさをに恒久的に放っている。現在PARCO MUSEUM TOKYO で開催されている個展「黄色い太陽-Burning Drop-」 では写真家・小浪のはじまりと言える父親の写真から、自らが父となった現在までの作品が85点展示されている。本展示への想いや現在の活動について質問を送ると、ニューヨークヘ戻る直前の小浪から返信が届いた。

 

今回の展覧会タイトル、写真集タイトルについて教えてください。この日本語と英語を選んだ理由や、想いなど。

黄色い太陽と付けたのは、父親の絵に太陽を描いたものがあって、それを見た時に決めました。この絵は自分が小さい頃から見ていて、太陽は黄色い物なんだと思わされていたんです。自分の写真には太陽が沈む瞬間であったり、太陽に照らされた自分を撮ったり、太陽の光を意識する写真がいくつかあります。写真に写る太陽は決して黄色いものではないですが、照らされた光は黄色く輝いていました。英語のタイトルは黄色い太陽が先に思い浮かんで、何かこうメラメラしたものが落ちていく様だったり、ポエティックなタイトルを探していた時に、burning dropが良いのではないかと思いました。自分の情熱の雫なようなものが感じ取れたら良いかと思います。

東京で今回この展示を行うことに決めた理由や経緯はどういったものですか?

PARCOさんから展示のお話を頂いて、展示をするなら写真集も出したいという話になりました。自分の事を長く知っている人、初めて知る人に、一番東京で見せたい作品群が今回の作品でした。

今回お父様が描いた絵も展示されていますね。その意図とは何でしょう?

タイトルの黄色い太陽に根本にある絵です。自分の小さい頃から見ていたもので、いつかこの絵と父親の写真を並べて展示したいと思っていました。

アメリカでの生活について教えてください。自分の中で日本と違う部分はありますか?

作品を撮り、コマーシャルワークもして、常にフレッシュな気持ちで街を歩けていると思います。

アメリカで仕事をすることの良さとは何ですか?


アメリカは常に写真家がしたい事を優先して物事が進みます。写真への愛も日本よりも深いと感じます。それは写真を撮ることから飾るところまで全てにおいてリスペクトの気持ちを感じ取れます。そこが良いところだと思います。自分に撮って欲しいと言われる仕事は基本受けるようにしています。情熱がある人は特に。どこで撮っても自分の写真はそこまで変わらないです。長い付き合いの日本人の人はそこも理解してくれるのでアメリカでも日本でもやり方は変わりません。

常に仕事や写真の事を考えていますか?写真家である自分のスイッチを切ることはありますか?


基本はオンです。子供といる時は目よりも耳を傾けているかもしれません。

特に美しさ、ドラマチックさ、臨場感を孕んだ「動き」のある小浪さんの写真は、現代の写真家の中でも群を抜いて評価される理由の一つだと感じます。ご自身の感覚と経験がそれを生み出しているのだと思いますが、特にどんなことがご自身の作家としての成長過程に大切だったと感じますか?


父親を撮ることから始まって、人間を撮ること、向き合い方を学び、ストリートで出会った人達に写真の暴力性を学び、コマーシャルワークやファッションの舞台で限られた世界の中でどのようにして、美しく、ドラマチックな物が撮れるかを学び、多くの同世代や先輩のアーティストから表現することを学んでいって、今があるのだと思います。

写真家として常に心がけていることを教えてください。

常にフレッシュである事。四角いフレームの外も中も同じくらい見つめる事。瞬間で決定していく事柄に身を寄せ、向き合うこと。

 

小浪次郎 写真展「黄色い太陽-Burning Drop-」
会期:2021年12月24日(金)〜2022年 1月17日(月) 11:00-20:00
会場:PARCO MUSEUM TOKYO
住所:東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 4F
入場料:一般 ¥700、学生 ¥500 ※小学生以下無料

PARCO ART 公式サイト
小浪次郎公式サイト