style
Where the runway meets the street

アーティストとしてアクターとして、その才能を長い間、高次元で維持し続け評価を得てきたことは、彼の中にある純粋かつ正直な人間性が成し得た、最もシンプルで、最も困難な成果だ。世の中から認識されている感覚と、自分自身が持つ感覚とのギャップが、その存在をより特別なものにしている。山下智久という存在は、今地球規模で起こっている歴史的な事象の中でも、より宇宙に近い感覚で在り続けている。その存在としての責任は、彼の意識不可能な領域に向かおうとしているかのように。

Coat ¥495,000, Shirt ¥253,000(参考価格), Knit ¥148,500(参考価格), Pants ¥165,000(参考価格), Boots ¥181,500, Belt ¥85,800 DIOR

 

——海外への意識はいつ頃から芽生えたものですか?

僕の祖母の姉がアメリカの方と結婚されていて。その孫が僕と大体同じ歳くらいなんですよ。国籍もアメリカで。それで、彼が小学生の時によく夏休みに日本に遊びに来たりしていて。そういうところから、文化の違いに触れていたというのはもしかしたらあるのかなというのと、あと、小学校の時とかに、仕事でアメリカに連れていってもらう中でいろんなショーを観せてもらったりとか。そういう子供の時の経験から自然と、いろんなカルチャーの違いはあるけど、自分自身で正解に近づけたり、ルールを見つけていきたいなというのがきっかけだったと思います。

——そういう存在が家族のように近くにいると違和感がないですよね。

もちろん子供の時は英語は全然できなかったですけど。でもなんか、感覚でつながっていた部分があるので、言葉は分からないけど喧嘩したりしてたから(笑)。そういう文化の違いはあれど、同じところは同じというか。共通のところもたくさんあって。

——長くお仕事されている中で、海外での活動を具体的な視野に入れ始めたのは何かきっかけがありますか?

具体的なものは特にないんです。今も本当にどこかの国にこだわっているというわけではなくて、自分がワクワクできること、そういう機会があれば、何にでも触れていきたいので、国内外問わずいろんな活動をしていけたらいいなという思いです。

——特に「海外へ」と意識しているというよりは、シンプルに分母を広げるイメージですか?

そうですね。文化によって、いろんな創作物があるじゃないですか。クリエイティビティも、いろんなものを吸収していった方が、自分の中での分母も広がっていくと思うので、そこは吸収できる分だけしたい、貪欲にいたいなとは思います。

——音楽と映像の活動において配分イメージやバランスってありますか?

全然決めてないです。特に僕らの仕事って不規則なので、作品によってスケジュールが変動していったりするから、そういう意味ではタイミングですね。そこは、ある意味流れに身を任せるしかないところであって。どっちも同じくらいやらせていただいてバランスを取ってきたので、今さらなかなか変えられないなって……。どちらも疎かにしたくないなという気持ちでやっています。

Jacket ¥748,000, Knit ¥148,500(参考価格), Pants ¥286,000(参考価格), Boots ¥181,500, Belt ¥85,800 DIOR

 

——音楽と映像で向き合う時の自分の気持ちの違いって何かありますか?

「静と動」みたいな感じですかね。やっぱり演技をするというのは、役に入り込んでいるというか、自分に取り入れていく作業だと思っているんですけど、逆に音楽は、自分の中にあるものを出していく感覚で。ある意味で正反対なものとして僕は捉えています。なので、「陰と陽」じゃないですけど、2つをやらせてもらえて僕自身が整うというか。どっちが好きということでもないんですけど、息を吸って吐くみたいなイメージで、本当に自分は中間でやらせてもらっていたので。そのリズムは僕がいただいた特典かなと思っていて、そのままどんどん磨きをかけていきたいです。

——その静と動のイメージは最初からありましたか?

最初はそんなこと考えていなかったんですけど、お仕事の中でなんとなく音楽と演技の質問をされる場面が増えてきた時に、自分なりに考えて、そういうバランスでやっているんだなというのを思いましたね。

——自分の中から出していくって感覚って、レコーディングとライブでまたちょっと違うのかなと思うんですが、どちらかというとライブの時の方がその感覚が強いのかなと。

確かにそうですね。僕はライブあってこその音楽だという認識だったりします。応援してくれている方々に会える「お祭り」みたいなものだと思っているので。なので、そのお祭りのために準備するっていう感覚です。本当に、コロナ禍じゃなければもっとできることがたくさんあるのになと、葛藤を抱えながら日々過ごしていますけど。

——今回のイシューテーマは「Responsibility / 責任」なのですが、山下さんがアーティストや俳優としての活動を行ってきた中で、ご自身が感じてきた「責任」とはどういうものですか?

そう聞かれてみると、「責任」という感覚ではやっていないところもあるかもしれないです。もうちょっとフラットな気持ちというか。みなさんから愛情をたくさん注いでもらっているので、それをもっと大きくして返すみたいに、キャッチボールのような感覚でやらせてもらっています。やっぱり、いい球を投げ返さないと取れないと思うし、ボールをほかに探しに行っちゃったりもするだろうし。なるべくいい球を、取りやすい球を投げさせてもらって、それでまた返ってくるのを待つ。そういう感覚でやっている気がします。「僕がこうしなきゃ」という感覚はないです。ちょっとゆるい気持ちなのかもしれないですけど。ただ、もらったものを悪用はしたくないんです。そういう意味では「そこに対する責任はきちんと持ってないと」という意識はあります。信頼関係みたいなもの……この芸能のお仕事を始めて20年以上経ちますけど、その中で積み上げてきたものなので、ある意味安心してくれているんじゃないかなと思っています。

「何かを継続するということは絶対その過程で変化が起こる」

Coat ¥550,000(参考価格), Jacket ¥48,0400, Knit ¥148,500(参考価格), Pants ¥203,500(参考価格), Belt ¥85,800 DIOR

 

——シンプルでとても率直な、いい話だなと思います。音楽にしても映像にしても、作る段階からもちろん作品にまっすぐ向き合っていらっしゃるとは思うんですけど、それよりも活動全般としてはお客様がいらっしゃって初めて成り立つという、当たり前のようで当たり前じゃない感覚に対して、今改めてそう仰るということは、やはりその方々のお顔が見えているんだなと。

そうですね。その辺りの感覚は、ある意味特殊な環境で育ててもらったというのは大きくあると思うんですけど、やっぱりずっと、本当に多くの愛情をいただいてきたので、自然とそういう気持ちになっているのかなと思います。逆に演劇活動だけだと、なかなかそういうファンの方との交流っていうのは難しいと思うし、具体的に誰に届けるのかっていうことへの意識が難しかったり。でも僕はわりといつも見ていますね。みんながどう思うのかなっていうのも見ています。ずっと同じことをやっていても飽きられちゃうので、たまには緩急も必要だし。そういう意味では、子供の時の環境がそういう感覚を自然と作ってきたのかなと思います。

——なるほど。例えば僕はずっと本を作る仕事をしてきましたが、お客様が買ってくれないと当然意味がないというか、価値が生まれないということをいつも思っています。ですが、集中して物事を一気に作っている時は、完全に自分のエゴになっていたりもするので(笑)。

ああ(笑)。でもまあ、その方がなんかいいなと思います。輪郭がなんか、浮き彫りになってくるというか。

——本当に、キャッチボールというのはいいですね。そういう感覚で常にいられるというのは。

でも僕も、いい球を投げようとは思ってるんですけど、やっぱりミスする時もあります。思いっきり投げたい時は思いっきり投げるし。それで取れなかったら取れなかったで、またきっといつか取りに行って投げ返してくれるっていう信頼があるので。そういう意味では僕も、エゴではないかもしれないですけど気は遣ってないです。気を遣ってると、たぶん嘘になっちゃう。安心感とか信頼感があるからこそ、自分も心地よくキャッチボールできるのかなって。甘えちゃう時もありますけど。

——だとすると、きつい時ってどういう時ですか?

やっぱり、動きたいのに動けない時ですね。コロナ禍だったり、いろんな状況で「〇〇できない」みたいな状況はすごく苦しい。そういう意味で常に自由になりたいです。

——今、SNSも積極的にやられていると思うんですが。今までは作品を通して発信されてきたものが、SNSで個人から直接的な発信を行うことによって、それに対するファンの方々とのエンゲージメントって何か違いを感じますか?

作品を通してよりも、SNSはもっと直接的だなと思います。すごいテクノロジーですよね。1秒で届けることができるツールなので、新しい時代のコミュニケーションの取り方なんだろうなって思います。僕はある意味タイムマシーンを手に入れたような感覚なので。昔だったら、レスポンス返したいってなったときに、いただいたファンレターに対して手紙で返事を書いて、それが届くまでに何日かかかって、という感じだったのが、今は一瞬で発信できるし、受け取れる。すごくありがたいなと思っています。だからといって、僕はあまりたくさん呟けるタイプではないので(笑)。見せたい景色があったり自分の心が本当に動いた時しかやってないですけど、それでも、すぐに伝えられる方法があるということ自体、すごい進化だなと思います。

Jacket ¥418,000, Knit ¥148,500(参考価格) DIOR

 

——仕事をする上で、ご自身の中で変わらない軸ってありますか?

「成長を諦めたくない」っていう気持ちは子供の頃から変わってないですね。なんか今の時代って、もうちょっとゆるくていいんだろうなとかって思うし、いろいろと多様化が進んでいるので、それぞれの思想があって、基本的にはそれぞれが正解だとは思うんですけど。別に頑張らなくてもいいし。でも僕は、限られた時間の中で、せっかくこの道に入って20年やってきたので、自分としても「どこまで極められるのか」っていうのはとてもやりがいのあることだなと思えています。僕は成長スピードはすごい遅いと思うんですけど、でも遅くても辞めなければ、絶対に10年後は今よりうまくなっているはず。そこだけは、昔から本当に変わってないかなと。休む時もたくさんありましたけど、そういう軸の部分はこれからも変わらないだろうなと思います。

——継続って本当に大事なことだなと思います。意識して継続されてますか?

あんまり意識していないかなあ。単純に好きなのかな?でも何個も継続してできることってそんなにないですよね。1個か2個でも、確かに継続できるものがあればいいのかなって。10個継続しようとしてもやっぱり無理ですし。あと、好きになるまでって時間がかかりますよね、何事も。例えばギターも、3つでもコードを覚えられたらきっと楽しくなる。全然分からない状態ってやっぱり恐怖に近いと思うので、その時は辞めたい気持ちの方が大きいと思うんですけど、続けてるとその気持ちと楽しさが逆転してくるんですよね。僕の場合、英語とかも初めは怖かったし、何言ってるか分からない人たちの中に入り込んでいくって、わりとメンタルが鍛えられたなと思います(笑)。ちょっとでも分かってくると「もっと知りたい!」ってなってくる。ダンスでも、難しいステップが踏めるようになってきたら「次の新しいステップを覚えたい!」って思ってましたね。なので、好きになるまでには何事も初めは少し負荷がかかるものだなと。人に対してもそうですけど、少しでも知ると親近感が湧くというか。少しでも中身が見えてくると、その対象を見続けたいときっと思うのかなって。あとはもう、本当にいくつかのことをやってきて、何かを継続するということは絶対その過程で変化が起こるってことだなと思うので、その変化を楽しみたいっていう欲もあるかもしれないです。

——海外での活動が増えてきている今、世界に対して見せていきたいものって何ですか?

日本の精神ですかね。やっぱり鍛えられていると思うので。島国特有のものだと思うんですけど、この島国の中に閉じ込められている「エネルギー」みたいなものがきっとあると思う。常に文化が循環しているような大陸とは違うものがあるので、そういう点では日本という環境から学べることってたくさんあるし、精神性みたいなものをひとつの美学として届けられたらいいなと思いますね。日本人として、違う文化の中に入って少しでもいい影響を与えられるようになりたいし、少しでも自分の中の「心の質量」を大きくしていきたい。違うカルチャーから学ぶことってたくさんある。すごく大きな話にはなっちゃうんですけど、心の根底にはそういう気持ちがあります。

Pants ¥275,000(参考価格) DIOR

 

「少しでも自分の中の心の質量を大きくしていきたい」

——他の国のいいところを知ったり、違うカルチャーの知識を深める前に、自分たちの国やカルチャーを理解することはとても大切なことですよね。特に日本は「奥ゆかしさ」みたいな価値観があるので、あまり表に出して表現しなかったりする。海外はオープンな国が多いし自分たちの良さをよく知っている。それがとてもいいなと。

本当に、もっと自信を持った方がいいとは思いますね。僕も若い時は日本のそういうところを、堅苦しいなと思ってたんですが、外国に行って向こうから日本を見た時に、そういう奥ゆかしさみたいなところが美しく思えたりもしたし。誇れる文化とか、誇れる環境で育ってこられたことに感謝しました。どっちが上とか下とかではなくて、どこの人も対等だと思います。お互いに認めるところは認めて、学ぶところは学ぶ。ただ、日本人として誇りとプライドは持ち続けていたいなって思います。そういう思いで人と接していきたいです。それは日本人に対してもそうだし、外国の人に対しても同様に。僕は誰に対してもフェアな向き合い方をしたいと思っているので。

——今後予定されている活動は?

11月25日に発売される写真集で、「自然との対比」をテーマにしています。例えば吸って吐くという行為と同じような、「二元性」みたいなところは少しだけ意識して作った作品です。

——テーマはご自身で考えたんですか?

そうですね、いろいろと話し合ってですが。写真集って少し気恥ずかしかったりするんですが、今の自分が思っていることや心の中を描写したいなって。そういう機会ってなかったし、お話をいただけたということ自体すごくありがたいなって思うので。今の自分の心を本にまとめさせていただきたくて。悩んだんですけど……(笑)。わざわざ自分の写真を撮ってっていうのも恥ずかしいなと思ったんです。「でもまあ、一生に一回だな」と思って、ひとつの思い出として作らせていただいてます。やっぱり、全部つながっているというか、ちょっとスピリチュアルな話にはなるんですが、朝と夜があって、月と太陽があってみたいな、いろんな法則が宇宙にはたくさんあるんですけど、僕らも結局その中の一部で、僕らの存在自体が自然なものなので、その中で何ができるかみたいなことを考えながら作った本です。あと音楽活動については、まず配信から始めさせていただこうかなということで準備をしています。何かみなさまの背中を押せるように、僕の今までの短い経験の中での最善を提示させていただこうと思っているので、ぜひ受け取ってもらえたら嬉しいなと思ってます。

Knit ¥297,000, Shirt ¥319,000(参考価格), Pants ¥209,000(※ベルト付属) DIOR

 

——それは楽しみですね。ところで、宇宙が好きとお聞きしたのですが、その話をぜひ(笑)。

いいですよね!宇宙が好きで、本とか図鑑とかたくさん読んでます(笑)。本当に、宇宙って不思議なことがたくさんあるので、新しい世界を見るにはやっぱり学ぶしかないなということを考えさせられますね。それもきっと法則の中のひとつな気がします。やっぱり自然から全て学んでいくっていうのは、昔は当たり前のことだった気がするんですけど、科学が発展しすぎて忘れちゃってるところがあったりとか。もうちょっと、そういうところにも目を向けていくべきだなと。でも僕は、それを誰かに押し付けようとは全く思っていなくて、自分の中で対話していきたいなと。

——話が変わるんですが、心に残っている言葉って何かありますか?

「常にルーキーでいることは大事だよね」っていう言葉を言われたことがあって、僕も大事だなと思いました。言い換えれば「初心を忘れず」ということだと思うんですが。自分を常に新しい環境に置いておけるっていうことは、厳しいことではあると思うんですけど、同時にそれだけ学べるということでもあると思うので、常に新人でいられるような環境を探していきたいなと思ってます。

——変化は楽しいと思いますか?

楽しいですね。僕は、変わり続けていきたいって思ってるので。10年後、20年後のビジョンをなんとなく下書きしていて、だんだんそこに色を足していっているような感覚なので、常にその先のことを考えています。人生が80年くらいあるとしたら「今がピーク」なんて結構やばいでしょって思ってるので、そのピークをもう少し先に持っていきたくて、そのためにはどうするべきかと。自分の道しるべなり目標を持っておくということですね。やっぱり、自分の頭の中で描けることが現実になっていくと思っているので、まずは下書きをするということが大事だと思います。

Coat ¥550,000(参考価格), Pants ¥203,500(参考価格), Boots ¥181,500 DIOR