style
Where the runway meets the street

数あるランウェイデビューの中でも、ファレル・ウィリアムス(Pharrel Williams)のLOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)初コレクションほど盛大なものはなかなかない。

単なるショー程度のものを想像しては、ファレルの実力を甘く見たことになる。現在LOUIS VUITTONのクリエイティブ・ディレクターであるファレルは、パリの歴史を物語る橋、ポンヌフに、バックバンド、ゴスペルの聖歌隊、そして彼の新作メンズウェアを身にまとったモデルを登場させた。

それは単なる一大イベントの範疇を超えていた。あれではファッション・ウィークを構成する他のラグジュアリーブランドが霞んでしまうだろう。

ファレルのLOUIS VUITTONがいかに見ものであったか、各誌の大見出しを賑わすというのは分かりきっていた。決して悪い意味ではないのだが。しかし、考えてみて欲しい。表向きには服が主役になってはいても、ファレルのLOUIS VUITTONとなると、どうしても大スターであるファレルの威力の方が前面に立ってしまう。

Beyoncé、JAY-Z、 Rihanna、 A$AP Rocky 、ルイス・ハミルトン、村上隆といった面々が客席の最前列に座る中、Daveに始まり、再結成したClipse(Pusha TとMalice)に至るまでのファレルの音楽仲間がランウェイを歩くというショーが展開された。

クイーン・ベイ(Beyoncé)がランウェイショーの客席にわざわざ現れたことなど数年ぶりのことだ。しかしあえてそこを気にせず論じるとするなら、服自体の内容も確かに良いものであった。

©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON
©LOUIS VUITTON

今回のコレクションには、ファレル自身のこれまでを思わせるアイテム、ワイルドなステートメント・ピース、新しい独創的なハンドバッグ(LOUIS VUITTONのレザー・ショッパーバッグの登場には驚いた)、そして、レッドカーペットの伝説となりそうな絶品シューズなどが数多く詰め込まれていた。

この投稿をInstagramで見る

 

HIGHSNOBIETY(@highsnobiety)がシェアした投稿

 

この投稿をInstagramで見る

 

HIGHSNOBIETY(@highsnobiety)がシェアした投稿

100着ほどで構成された74ルックは仕立て重視で、かつてのバギーなLOUIS VUITTONルックよりもカットがスリムになり、随所にクリスタルやスタッズが散りばめられていた。

 

この投稿をInstagramで見る

 

HIGHSNOBIETY(@highsnobiety)がシェアした投稿

しかしフォーマルに偏ることはなく、ボクシーなレザーのカーコート、ウエストまでのクロップド丈ブレザー、カットアウトのディテールがギリースーツを思わせるミリタリーテイストのオーバーコートなどが、ファレルの新作「ダモフラージュ」(ダミエ・パターンのカモフラージュ)で登場した。

ランウェイに登場した鮮やかな色彩には様々な意味が込められている。色彩豊かなLOUIS VUITTONとキーポルとトランクの着想源がキャナルストリートの密売人たちの「ハッスル」だということは、ファレルが声明で述べている。またメタリックなブロンズカラーの新作ケースに関しては、銅の「癒し」効果が関係しているとの説明があった。

LOUIS VUITTON側は「LOUIS VUITTON 2024年春夏メンズコレクションは、機会、責任、増強を基軸にしたコレクション」だとしている。

 

この投稿をInstagramで見る

 

HIGHSNOBIETY(@highsnobiety)がシェアした投稿

ファレルの2024年春夏プレスリリースから要点を抜き出しておこう。サヴォアフェールを生かしたバーシティジャケットのテイストは、プリンセス・アン・ハイスクールの思い出。ダモフラージュは、 LOUIS VUITTON伝統のダミエ・パターンとカモフラージュ柄を組み合わせたパリの友人へのオマージュ。履き心地を追求したモノグラム・インターシャ・シアリング・スリッパのアウトソールにはクマの足跡のエンボス加工。カメラのレンズのようにデザインしたサングラスは原色のガラスレンズを通して世界を見ることで集中力を高める。あらゆる人のための日常的なアイコンバッグであるスピーディ・バッグを応用したバッグではキャナルストリートの生き様やハッスル精神を表現。

ここでコレクションの全貌を俯瞰したい。ファレルのLOUIS VUITTONでの初コレクションは未来へのミッション・ステートメントになっている。そして、その未来がどのようなものとなるかについてのヒントや手がかりは、ショーのみならず、それと直接の関係はない事柄からも、得ることができる。

 

この投稿をInstagramで見る

 

HIGHSNOBIETY(@highsnobiety)がシェアした投稿

そもそもファレルが数ヶ月前からずっと着用していたのがLOUIS VUITTONの新しいレザージャケットとパフスニーカーだ。それこそが新しいメンズウェア・コレクションの方向性となる、ということは、他ならぬファレルが自ら告げていたと言える。LOUIS VUITTONのモノグラムで覆い尽くされたレザーのカスタムメイドのダブルライダースジャケットには、「PUPIL LOUIS VUITTON KING」などのスローガンや、このジャケットを所有する有名人(ファレル、JAY-Zなど)の名前が手縫いのスタッドであしらわれている。

 

この投稿をInstagramで見る

 

HIGHSNOBIETY(@highsnobiety)がシェアした投稿

 

この投稿をInstagramで見る

 

@skateboardがシェアした投稿

ファレルのLOUIS VUITTONのジャケットには将来オークションで5桁の値がつくと見られる。手に入れれば自慢のできるラグジュアリーアイテムだ。しかしそれ以上に見逃せないのは、このジャケットがスタイリッシュで強い影響力を持つファレル集団を意味するアイテムであるという点だ。かつて International Stüssy Tribe のジャケットには、時代の有力者集団であったIYKYKクラブへの入会証的な役割があった。ファレルの新LOUIS VUITTONのジャケットにもそれと同じような意味がある。これほど堂々と見せられるともはや秘密の会員証にはならないが。

しかしひっそりとした営みである必要はない。ファレルのLOUIS VUITTONは、話題の新設クラブ的ポジションを確立している。誰もが入りたい。しかしベルベットのロープの向こうに入ることができるのはごく一部。さらに奥の(大勢の)VIPがパーティをしている場所まで通されるのはそのまたごく一部だ。

 

この投稿をInstagramで見る

 

HIGHSNOBIETY(@highsnobiety)がシェアした投稿

しかしLOUIS VUITTON公認の万人向けアクセスも用意されている。ランウェイショーの前に、ファレルの新Instagramアカウント 「@skateboard」では、LOUIS VUITTONの制作の裏舞台、アトリエの風景が公開された。雰囲気的にはヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)のアーカイブアカウントを思わせる。アブロー登場の頃は、彼の投稿をくまなく記録する内容のアカウントが多数登場し、ストリートウェア談義が飛び交った。その中で当時特に目立っていたのがHIDDEN.NYだった。

@skateboardに投稿されたファレルらの仕事風景の生写真についても、すぐさま、いいねやフォロワーを増やしたい数々の第三者IGアカウントによる再投稿が相次いだ。@skateboardのアカウントは、内容こそ新鮮ではないとしても、注目度は高いということだ。

 

この投稿をInstagramで見る

 

Louis Vuitton(@louisvuitton)がシェアした投稿

最初の数枚の投稿写真でファレルが着ているCPFMの “Ye” パーカーもアーカイブ系IGページの定番アイテムだが、それも問題ではない。

@skateboardの真の魅力は、投稿された画像自体の面白さというよりも、そこからLOUIS VUITTONの重要要素に対するファレルのインサイトに触れることができる点にある。遊び心に溢れながらも上等なゴールドのスケートボード、構想段階を見せるファレルのテキストチェーン(ヴァージル・アブロー式の見せ方だ)、北島敬三の写真のスクリーンショットなどがそれに当たる。

@skateboardは、Instagram や Twitterでのデジタルムードボードを通し、ファレル敬愛者にファレルのスタジオの追体験を提供できるよう考えられている。

そうした断片からは実際、2024年春夏メンズウェア・コレクション自体から分かる内容に匹敵するほど、ファレルのLOUIS VUITTONの未来について多くが読み取れる。

ファレルのLOUIS VUITTON全体をひとつの大きなパズルに例えるなら、2024年春夏メンズウェア・コレクションはその中の1ピースに過ぎず、図柄の全体像を知るにはパズルを組み立てなければならない。

 

この投稿をInstagramで見る

 

@skateboardがシェアした投稿

 

この投稿をInstagramで見る

 

HIGHSNOBIETY(@highsnobiety)がシェアした投稿

例えばファレルのスター性によってリアーナのようなビッグネームがLOUIS VUITTONというブランドに引き入れられていることは、ヴァージル・アブロー時代のLOUIS VUITTONの「仲間の連れ込み」精神の拡大版と言える。

また@skateboardが仲介者を飛び越え、直接、気軽な感覚で、流行に敏感なソーシャルメディアの利用者層に情報を発信していることにも注目したい。

LOUIS VUITTONのクリエイティブ・ディレクターに就任したファレルが初めて発表したアイテムは、彼の故郷、ヴァージニア州の謳い文句 “Virginia is for lovers”(恋人たちの州、ヴァージニア州)を、新しく(かつしっかりとブランド名と掛け合わせて)アレンジした “LVERS” のモチーフ入りグラフィックTシャツだった。

こうした多面的かつあからさま過ぎないアプローチこそが、ファレルのLOUIS VUITTONの真意だと言える。そしてそれは洋服に限ったことではない。

 

この投稿をInstagramで見る

 

HIGHSNOBIETY(@highsnobiety)がシェアした投稿

はっきり言うと、LOUIS VUITTONは、誰をクリエイティブ・ディレクターにしようと成功するブランドだ。世界有数のファッションブランドLOUIS VUITTON。そのワールドクラスのクリエイティブチームと認知度をもってすれば、レザーグッズの売上だけでもビジネスは十分に安泰である。メンズのアーティスティック・ディレクター、クリエイティブ・ディレクターが不在であった(ウィメンズに関しては依然ニコラ・ジェスキエール(NicolasGhesquiere)がトップだった)2022年さえ、LOUIS VUITTONは史上最高売上を達成している。

 

この投稿をInstagramで見る

 

HIGHSNOBIETY(@highsnobiety)がシェアした投稿

要は、ファレルの仕事は服をデザインすることではない、ということだ。ファレルの介入でつくり上げられたLOUIS VUITTON 2024年春夏コレクションの服は確かによく考えられたデザインで、見せ方も完璧だった。しかしファレルをクリエイティブ・ディレクターにした目的は、LOUIS VUITTONというブランドの裾野をさらに広げ、より利益を生むことにある。

既に巨大ブランドであるLOUIS VUITTONをさらに成長させようと考えた場合に、その意味でファレルほど適任な人材はいなかった、ということになるのだろう。洋服として良いものができるか否かに関わらず。

とは言え、2024年春夏のできは上々だった。