style
Where the runway meets the street

文化もファッションも本質を理解してこそ面白い。ストリートカルチャーのキーマンKatoman渡辺真史が定義する、文化から派生するコミュニティーの強さと日本のクールネスとは。

 

文化の発祥するところには常にキーパーソンが存在する。その人物を媒介して、文化は自然発生的に人々の流れをある一定の方向へ導く。やがて、何かのきっかけで大きく飛躍したとき、確実に存在を確信させるものとなる。そのきっかけもたいてい人だったりする。

文化的背景に必ず影響を及ぼすのが社会情勢だ。1968年にローンチした「セイコー 5 スポーツ」の背景には、ストリートカルチャー・スポーツ・技術といった当時の趣が詰め込まれ、文化や技術への関心の高い若者を中心に大きなムーブメントを起こした。満を持してリローンチを果たした昨年、ファッション性の高いアイテムを中心にまたたく間にカルチャー好きの心を捉えている。

 

ストリートの音楽カルチャーを代表する渋谷の名物バー、BEAT CAFEの名物バーテンダーKatomanとファッションブランド「BEDWIN & THE HEARTBREAKERS」のデザイナー渡辺真史は、東京ブランドの意義を追求し、その役割に真摯に向き合っている2人。音楽とファッションが融合する新しいムーブメントの夜明けを迎える今、2人の感性が刺激し合う、カルチャーの発生源について話を聞いた。

 

 

2人の出会いについて聴かせてください。

渡辺真史(以下W) 当時インターンで働いていた学生が連れてきてくれて、カトマンを紹介されたんだ。年齢も近いし、どんどん話が弾んでいくうちに次第に彼に会いにバーへ行くようになった。Katomanは誰に対してもフラットだし、自分の好きな音楽とか空間を作るのにすごく長けているなと思う。コミュニティーのセンターにいる人だなと。

どんな話をするんですか?

W 今、BEAT CAFEと自分がやっている仕事をシンクロさせて面白いことをやってみようかなと考えている段階で。延長線でBEAT CAFEとDAYZをコンセプトに置いて、ラジオで音を届けましょうっていうのはいいかもねって話になって……

Katoman(以下K)自分たちがラジオ世代でもあるし、今そういうのが求められていると感じたんだよね。自分から聴きにいくというよりもさりげなく流れてきて曲に出会ったりする、あのラジオの感じが欲しいなと。

W  軽いノリなんだけど、メッセージを真剣に伝えていきたいなと思っています。そのノリをそのまま伝えることが大切なんじゃないかな。

 

場所や人との出会いはコミュニティーを形成します。今は携帯の普及や自粛ムードで音楽やカルチャーを体感する機会が少なくなってきていますがBEAT CAFEをオープンするにあたって最初に目指したものは?

K 元々はただのバーで、自分が音楽担当だっただけ。徐々にLAのCha Cha LoungeやNYのMAX FISHといった世界中のアイコニックなバーに行ったりして日本にないバイブスをどんどん散りばめていきました。でも一番強烈に影響を受けてるのは、バーテンがミュージシャンだったり、モデルだったりして、そいつに会いにいくとか、もちろん音楽もその流れで聴けるとかそういう海外のスタイルかも。

W 結局キャラクターがあって、そこにつられてくる人達が最終的にバーの雰囲気を作るから、それが楽しめるのが、バーカルチャーの好きなところで。だから人の繋がりが、音楽とか話の中に溶け込んでくる。今のファッションにしてもカルチャーにしても結局人が楽しむためでしょ。それに尽きると思うんだよね。それを作ってるコンダクターがKatomanなんだよね。

 

 

 

渡辺さんは裏原宿のコンテクストに新しいクリーンなストリートスタイルを打ち出したり、要所要所でハッとさせる提案をする。ファッション界のゲームチェンジャーはどのような流れで新しいアイデアを展開するんですか?

W 単純にいつもそれを人に話したり、それに対して意見をもらったりすることが好きなだけ。新しいものを提案すると中傷とか批評も出てくると思うけど、あんまりそれは気にしてなくて。当然自分も変わるし、世の中も変わるし、ずっとリアルなものがどこにあるのか探し続けると思うけれど、歴史の中でこんなことがあったというのは注意深く見るようにしていますね。

僕の世代は90年代のミックスカルチャーの中で育っているから、こだわりを持つということに違和感はないけれど、いかに自分のフィルターを通して自分が純粋に楽しめるかというところにいたのかな。

K 金曜にテクノのクラブに行って、次の日にはパンクのライブに行って暴れているとか、そういうボーダーレスなノリが当たり前にできた。今は型に当てはめられてしまっているから、そういうところはラッキーだったよね。

W それがストリート的な感覚だと思う。いろんなものが外から入ってきて東京という街を形成したから、その中で自分達らしい根づき方があるんだと思う。Tシャツも着るけど、ネクタイも締めるし、ジャケットは嫌いだったけど、今は大好きみたいな。自分に嘘はつきたくないから、その中でどれくらい好きかを表現できたらいいなと。

K BEATCAFE)に関して言えば、お客さんに合わせていないのがいいのかも。毎日違う音楽をかけているから、それで外れることがあってもそれに関係なく楽しみに来てくれる人がいっぱいいるんだよね。

 

「セイコー 5スポーツ」がリローンチして1年を迎えました。ファッションとしての人気は海外の目利きが強く、今日本でも火がついています。お2人はどうみていますか?

W 今までは、時間を気にしたい時、もしくは相手に対してファッションでマナーを見せたい時に時計をすると決めて、選んできました。SEIKOの時計は由緒があって日本の技術が入っているものだと分かっていながら、自分の世代観ではインポート、舶来物みたいな希少価値の高い物にずっと走っていたんです。でも最近になってSEIKOの良さが分かってきた。というのも、LAに行った時にものすごくスタイリッシュな人が、SEIKOのゴールドのヴィンテージウォッチをつけていたんですよね。ジーパンを買うのに15ドル以上出さないこだわりの強い人が、SEIKOに対するコストパフォーマンスとか成り立ちを理解して身に着けている。それが見えた時に『自分の国にあるいいものを俺は見落としていたぞ』って。

K 俺も同じ感覚が違う切り口であって、ここ10年くらい海外によく行っていると、日本のクラフトマンシップに対して海外の人の方がすごく詳しいのに出くわす。俺は日本のこと知らなすぎるなって。べべたんがDAYZを始めて、日本にこだわったところにシンクロするものもあるし、BEAT CAFEも東京じゃないとこういうバイブスが出せない。日本のクラフトマンシップはやっぱりすごいものがあるから、それを見つめ直す機会でもあるよね。

W なによりもSEIKOの良さって「日本の時計」っていうところ。時間に対する正確さやこだわりがどこの国の人よりもある日本人が作った時計だから、日本人が今まで築き上げてきたものがこの時計に詰まっている。と考えると、ちゃんと自分のファッションに取り入れていきたいですよね。

 

BEAT CAFEDAYZも若い世代から大人までが歳の差関係なしに好きなことをやっている。ミレニアル世代がそれを見ていて、コミュニティーも広がっていくのが面白いなと思います。

W 若い子は新しいツールを使って自分なりの表現ができる。自分の世代では目上の人や海外の人から学んでいたんだけど、今や若い子たちが自分の知らないことを知っている人になった。フラットに20代だろうが50代だろうが意見を言い合うことが一般的になってきたと思いますね。

K 10代、20代の時の衝動とかこういうことをやりたいっていう思いがみんな好きなんだと思う。だからBEAT CAFEに20代の人がいても同じ言語で喋れるし、60年代の音楽も今の音楽も同様に全部面白いねって思える。その時代を生きたわけでもないのに面白がれるっていいよね。20代でグランジっぽい音楽をかけるDJがいたりね。最近20代前半のクリエイターとかラッパーが来てくれるのが、すごくいいんですよね。

 

W 世代や性別や国の垣根を取り払って自分たちの中でまずは楽しむ、そしてそれを共有するっていうのが今なのかな。その中で何が自分にとって真実なのか、自分にとってのこだわりなのかが出ているということがいいのかな。

K  そういった形でそれぞれのカルチャーが育まれていくのかもしれない。コロナになって移動も制限されていかに人と繋がっていくかってなったときに、もうカルチャーでしか繋がれないよね。後はローカルでいいものをどんどん掘っていこうという流れになってくるのかも。

W  ハイプなものがここ数年脚光を浴びて、もちろんそれに対する熱量はあるけど、その反面”普通の尊さ”っていうのを忘れちゃうと世の中がプラスチックな感じになっちゃう。(SEIKOが)100年以上続いている中で普通だってことは素晴らしいと思う。アメリカ人がアメリカのオーセンティックな格好をしている中でSEIKOが入ってくるんだ、渋いな、みたいな。そこがSEIKOの格好良さなんだと思う。

かっこいいとファッショナブルっていうのは同義語じゃない。そこに、カルチャーの良さがあるんじゃないかな。

 

 

 

セイコー 5 スポーツのリローンチ一周年を記念して、「Show Your Style」というコンセプトのもと、自身の感性をかたちにできるカスタマイズキャンペーン「Seiko 5 Sports CUSTOM WATCH BEATMAKER」を実施中。特設サイト上で、現流のモデルのパーツを組み合わせてオリジナルモデルをデザインすると、気鋭のアーティスト8名が製作したオリジナルトラックのいずれかがカスタマイズモデルに合わせて選ばれる。グローバルで展開されるこのキャンペーンは、同時に投票が行われ、一番人気のモデルは来年に商品化され、グローバルで展開される予定。

カルチャーの仕掛け人、Katomanと渡辺真史に加え、同じくBEAT CAFEに集い、2人とも親交のあるラジオパーソナリティユニット、CC RADIOLONOSHOもカスタマイズに挑戦。Katomanは、全体的なメタリックシルバーの中に、ベーゼルブラックのアクセントを挿入。渡辺は、対談でも語ったヴィンテージのSEIKOに思いを馳せ、ゴールドをチョイス。ベーゼルブラックがゴールドと調和し、大人シックな印象に。CC RADIOの2人は、カーキとネイビーのナイロンストラップをチョイスし、ストリートカジュアルを演出。レッドのダイヤルなど、マルチカラーのチョイスでプレイフルなカスタマイズが完成した。

Seiko 5 Sports CUSTUM WATCH BEATMAKER
開催期間:2021年1月中旬終了予定
参加アーティスト:Chocoholic、Joe Hertz、JJJ、Shin Sakiura、PERL CENTER、VaVa、A.G.O、TENDRE
※キャンペーン期間は予告なく変更となる可能性があります。

今回、Katomanと渡辺真史が着用したセイコー 5 スポーツは、ステンレス製のシルバーとゴールドのワントーンにまとまったモデル。同じく、オールブラックに身を包んだモデルは、グローバルでも人気な一本。ステンレス製のケースにナイロンのストラップは、さりげないテクスチャーのコントラストがファッション感を格上げ。

価格:34,000円(税抜)