XAVI SIMONS
シャビ・シモンズはオランダサッカー界の次なるアイコン
オランダサッカー界のスーパースターであるシャビ・シモンズ(Xavi Simons)は21歳。今最も注目される若きアイコンの一人だ。オランダ生まれ、スペイン育ちのシモンズは、攻めのミッドフィルダーとウイングの両方をこなし、ドイツ、ブンデスリーガのRBライプツィヒ、そしてオランダ代表チームで、眩いばかりの試合を見せている。

欧州屈指のサッカーイベント、UEFA EURO 2024(ユーロ2024)。2024年大会準決勝、イングランドに敗れこそしたものの、鮮やかな先制ゴールを決めたのはオランダ代表のシャビ・シモンズであった。試合開始7分、何気ない走り込みからネットの左上隅への完璧なゴール。それはシモンズが自らの実力を発揮し「存在感」を示した、ファン待望の瞬間であった。
それほどの超人的才能の持ち主であるだけに、2024年10月、チャンピオンズリーグ2024-2025、リヴァプールFC戦での彼の負傷は大きな打撃となった。シモンズにとって選手人生初の大きな痛手でもあった。ボールを奪おうとした相手チームの選手のタックルで左足首の靭帯を損傷。即手術となった。初めての大がかりなリハビリ生活を支えたのは、それまでの彼を形づくってきた基盤だった。家族、サッカーへの思い、そして謙虚さ。サッカー界最高レベルのスターであるにもかかわらず、まだ最高には達していないと考えている。
シモンズは負傷後パーソナルチームを集め、怪我を乗り越え、さらにそれをバネにする方法を考えた。「最初の2、3日は精神的に辛かったが、家族や友達、エージェントと過ごすうちに前向きな気持ちになった」と彼は言う。ブンデスリーガでの試合が迫る中、怪我は当然望ましいものではなかったが、シモンズはクラブとオランダ代表チームの両方での目標を再設定する機会を得た。「以前より、もっと貪欲になっている。それはとても良いことだと思っている」。これまでのサッカーへの優先度を調整した。単に元気にというのみならず、以前よりも強くなってピッチに復帰できるよう懸命に努めた。理学療法により、サッカー選手としての向上よりも自身の体に意識を集中し、怪我に繋がる体の弱点の調整に取り組んだ。シーズン中のトレーニングでは後回しにされがちなことだ。
家族の存在はシモンズの回復に不可欠だった。兄、妹、母の支えがなければ、今の彼はなかっただろう。「自分の人生は全部家族のおかげ」と彼は言う。昔から母思いの彼は、家族の中でも「一番大切な存在」だという母を特に大切にしている。兄妹についても、「そばにいてくれると、なんでもできるパワーと気持ちが湧いてくる」と感謝を絶やさない。

そんな飾らない人柄とひたむきな姿勢も、世界のサッカーファンを魅了している。PUMA(プーマ)も昨年11月「インへイル」の顔としてシモンズを起用した。印象的なブラック、レッド、パープルのカラーウェイで最近刷新されたライフスタイルスニーカー「インへイル」は、カジュアルかつ遊び心のあるシモンズのスタイルにぴったりだ。シモンズは仲間に恵まれている。インへイル OGは、A$AP Rocky(エイサップ ロッキー)がPUMAと手がけた最初のシグネチャースニーカーで、PUMAの2024年のストリートスタイル復活を後押ししたモデルのひとつだ。「PUMAは家族のようだ。アスリートに必要な配慮をしてくれる」とシモンズ。
ファッション業界との仕事は初めてではないが、テイストメーカーとしての新たな地位を、シモンズ自身、楽しんでいるようだ。「ファッション好きの部分は昔からずっと自分の中にある」とシモンズ。少年時代にはサッカー界のスタイルスター、デビッド・ベッカム(David Beckham)の真似をし、そこから自分のスタイルを編み出していったという。「子供の頃から、学校にもサッカーにも服装をしっかり決めて行っていた。それからだんだんファッション業界にも興味が高まってきた。(ファッションブランドとの仕事は)自分の人間性ともよく合うし、自分のもうひとつの側面を見てもらえる手段だとも思っている」
ユニフォーム規定に縛られる試合当日はファッションを思い切り楽しむことはできないが、自分らしいスタイルは取り入れるよう努めている。「サッカーでは全員同じユニフォームを着るけれど、キャップやブレスレット、時計にシューズくらいの小物は足すことができる」と彼は言う。
世界的スーパースターであるにもかかわらず、シモンズの強さの最大の秘訣は謙虚さにある。取材中、その点はシモンズ自身の口から何度も語られた。そんな冷静な姿勢は、ある意味長い間脚光を浴び続けているからこそ生まれているとも言えるだろう。2010年、7歳でユース育成チームに参加。10代前半には、FCバルセロナの名門育成アカデミー、ラ・マシアでプレイし天才と評された。今のシモンズに、見たことのない景色などほぼない。「14歳で一気に道が開けて、たくさん学び、経験した。あの歳でそういう時期を過ごせてとても良かったと思う。今でもまだ若いけれど、おかげでいろいろなことに対処できる」
夢の人生を生きながらも、シモンズは自らのルーツを常に忘れず、また周りに対しても常に話している。「僕は今でもアリカンテ出身のシャビ少年だ」と、少年期の大半を過ごしたスペインの街に思いを寄せる。「今でも同じ人達に見守られている。だから謙虚さを忘れず、地に足を着けていられる」



- Photography & Set: Luke Abby
- Styling: Lawrie Abei
- Hair & Make-up: Anastasia Boukli
- Words: Will Schube
- Executive Producer: Tristan Rodriguez
- Local Producer: Luis Gaensslen
- Production Coordinators: Diarmuid Ryan, Zane Holley
- Production: T • creative