GIVENCHY マシュー・M・ウィリアムズとプレイボーイ・カーティの固い絆
マシュー・M・ウィリアムズ(Matthew M. Williams)とプレイボーイ・カーティ(Playboi Carti)、固い絆で結ばれた二人。カリフォルニア州ピズモビーチで育ったウィリアムズは現在35歳、南アトランタ出身のカーティは現在24歳と10歳以上離れているが、お互いについての話しぶりは、まるで年月を経て再会した双子のようだ。マイアミでの最初の出会いをカーティはこう振り返る。「マシューがうちのスタジオに来たんだけど、俺ちょうどその時エンジニアと言い争ってて、かなり脅かせちゃったんじゃないかと思ってさ。翌日、『なあ、俺は好きだぜ。俺の悪いところは叱ってくれよな』って電話したんだ。それ以来ずっと切っても切れない関係だ。あの時スタジオで激怒してた俺のことも、仕事に真剣だからだって、マシューは思ってくれてる」
二人は当初、一緒に音楽を聴き、楽しむ、気の合うアーティスト同士だったが、やがて自然と、ウィリアムズがカーティの動画やスチール撮影にアイデアを提供するようになった。メジャースターの親友はウィリアムズにとってカーティが初めてではない。レディー・ガガやカニエ・ウェストのクリエイティブディレクションにも長年関わってきたからだ。月日が経ち、カーティは今や、ガガやウェストにもなぞらえられる、野心あるアーティストへと進化している。その動向はカオスとも取れるが、本人は計算し、考えていると言う。
「カーティはカーティ自身のクリエイティブディレクターだからね。自分のビジョンを持っているし、自分らしくしかいられないタイプだ。僕は、カーティがアイデアをぶつけられる近しい友達っていう感じかな。曲作りでも洋服作りでも、カーティのサポートをしてくれる人を集めてくることでも、僕で力になれること、カーティの活動の助けになることなら、いつでもなんでもするよ」とウィリアムズ。カーティの言葉によると、ウィリアムズは彼に「バランス(均衡)」をもたらしてくれる存在なのだという。
カーティは自身を、ウィリアムズを刺激する存在だと考えている。昨年秋、世界は初めてウィリアムズのディレクションによる「GIVENCHY(ジバンシィ)」を目にした。その時に流れたニック・ナイトのディレクションによる映像では、カーティが、フランス語発音の「ジバンシィ」とアメリカ英語化した発音の「ジバンチー」を織り交ぜたものを叫んでいた。ウィリアムズのクリエイティブディレクター就任のお披露目にふさわしかったと言えよう。以後数カ月、カーティは自身を、広告塔タイプではないと断言はしているものの、GIVENCHYのミューズとしてもキャンペーンモデルとしても登場した。「俺はイエスマンとは程遠いから」とカーティ。「気に入らないことがあればマシューにちゃんと言うさ。でも、マシューのすることで気に入らないことなんてないんだよね」
ウィリアムズとカーティは互いをコラボレーター以上に友人同士と捉えている。家族と言ってもいいかもしれない。「マシューは兄貴みたいな感じだ。マシューの子供達のことは自分の子供みたいに思ってるし、マシューも俺の息子のことを自分の子のように思ってくれる。ごく自然にそうなんだ。そんな関係ってあまりない。マシューには真心がある。俺の身体を気遣って、元気か気にしてくれる。俺もマシューのことを気遣っている」
10代の頃からファッション、ポップ、デザインの第一線で活躍してきたウィリアムズと、2017年のシングル「Magnolia」で一気にスターダムに躍り出たカーティ。活動の時間軸は異なる二人だが、2020年には二人とも、新たな高みへ上った。ウィリアムズはパリ発のファッションブランドであるGIVENCHYを指揮するという夢を叶え、カーティもクリスマスの日、24トラックにエネルギーほとばしる待望のアルバム「Whole Lotta Red」をリリースした。
ウィリアムズがGIVENCHYの新ビジョン策定を進めるなか、カーティはツアー敢行を待ちわびている。「早くステージで伝えたいんだ。ショーに来て、マトリックスの世界に入ったみたいに「Red」の世界観に没入してもらいたい。最高のムーブメント、ライフスタイルとして作ったアルバムだから、ステージにしたらすごい反応があるはずなんだ」
多忙の二人だが、共にニューヨークで過ごす週末があった。そのうちの一日を小誌に割いてもらい、ウィリアムズのGIVENCHYデビューコレクションと友情の力について聞いた。
“If I’m doing things that I’m inspired by, then it’s more than likely that’s going to be exciting to some other people. There’s no strategy other than that.(自分にとって刺激になることは他の人にとっても刺激になる。それ以外の方法なんてない)” – Matthew M. Williams
“If you make emotional clothing, it can be understood by everybody.(感情に訴える洋服は、誰にでも通じる)” – Matthew M. Williams
“If the world’s going right, I’m gonna go left. If your cross is straight, then I’m gonna put my shit upside down.If you hate cigarettes, then I’m gonna smoke as many as I can. I’m anti-everything.(世間が右と言うなら俺は左へ行く。世間が十字架を掲げるなら俺は逆さまにしてやる。タバコが嫌いだと言うなら、吸えるだけ吸ってやる。ありとあらゆることに対するアンチなんだよ。)” – Playboi Carti
“We don’t go a day without talking to each other. We discuss what he has going on with Givenchy and ALYX, to what I’ve got going on. We talk about real-life shit, about our kids and how to be good fathers. We just feed off each other. I think every piece he makes is a reflection of me. And I think my music is a reflection of Matthew.(話をしない日はないね。GIVENCHYのこと、ALYXのこと、俺のこと、いろいろ話す。家庭の話、子供達のこと、父親としてどうするべきか、意見を言い合う。マシューの洋服にはどれも俺が映し出されていると思うし、俺の曲もマシューの写し鏡だ)” – Playboi Carti
“Carti is a great muse. I believe in him so much. As a person, and an artist, and the man that he’s growing into, he’s such an inspiring figure for me. The music that he makes is so pure and authentic. It’s a mood that I’m into and that I relate with. When I’m with him, we literally feed off each other. It’s a super important friendship in my life.(カーティは最高のミューズだし、僕はカーティの実力をすごく信じてる。カーティという人間、アーティスト、これからのカーティの未来、どれも刺激的だ。カーティの音楽はすごくピュアで、本物で、のめり込めるし、共感できる。一緒にいて本当にお互いを吸収し合ってる。自分の人生の中で本当に大事な友達だね)” – Matthew M. Williams
”If you want to be a bad guy, there’s no days off. You commit to whatever your vision is and make it every day, every time someone sees you. Even if it’s a fucking paparazzi pic, you’re still in rock star mode, even when you’re not trying to be seen. I’m on that at all times. Because vampires live forever. They look good. They never have a dull moment. You never catch a vampire off his pivot. Period.(バッドガイになろうっていうなら毎日気を張ってないとな。自分で定めたビジョンにコミットして、いつどこで見られてもそのモードでいなきゃだめだ。不意打ちで撮られたパパラッチ写真にだってロックスターらしく写るようじゃないと失格だ。俺は常にそのモードだからね。ヴァンパイアは不死身って言うだろ?かっこいいよな?ダレる瞬間なんて絶対ないんだ。ヴァンパイアが油断する瞬間なんて、絶対にないんだよ)” – Playboi Carti
- Words: Adam Wray
- Photography: Aljani Payne
- Styling: Corey Stokes