Takaから読者へ
ONE OK ROCKの破壊と再構築
海を飛び越え活躍する、日本を代表するロックバンドONE OK ROCK。ヴォーカリストであるTakaは、これまで多くの困難を乗り越え、常に新たな目標を定め、自らを追い込みながら道を切り開いてきた。
変化と進化。負けないマインドの強さ。海外シーンで戦うために必要なこと。重要なのはルールの違いの認識。そして破壊的イノベーションを意味する“ディスラプション”からの再構築。
「Stand Out Fit In」でリフレインする“はみだして、なじめ”という強烈なメッセージ。変わることと変わらないことの見極め。まっすぐな目で語るTakaの生き様から、ゲームチェンジャーが入れ替わり続ける変化の時代を生き抜く術を学んだ。
これまでONE OK ROCKは、破壊と創造を繰り返し前進してきたヒストリーを持つ。最新アルバム『Eye of the Storm』にもそんな意図を強く感じた。日本で成功しながらも、世界へチャレンジし続けるバンドにおいて、破壊的イノベーションを意味する“DISRUPTION(ディスラプション)”という言葉について聞いてみた。
僕らはどちらかというと、そこまでかっこいい響きじゃなくて、もうちょっと普通にやんちゃというか。歌詞だったら“break down”って、ロックの世界によくあるワードなんですけど、ぶっ壊すっていう感じの方が僕ららしいかな。でも、ものづくりにおいて、壊しているようで壊していないのが芸術なのかなって。言い方としては、型破りって言葉があるじゃないですか? 型があって初めて型破りが生まれるという。ただ壊してもしょうがないんですよね。
2月13日にリリースしたばかりのアルバム『Eye of the Storm』は、これまでの作品から一変、バンドにとって革新的な一枚となった。海外市場を見据えたチャレンジングな試みが繰り広げられている。
アメリカでの活動もゼロからベースを作っていきました。お金を使って無理やりフェスにブッキングするとかはしなかった。アルバム『Eye of the Storm』でやっていることもその延長線上です。海外へ出て行くと決めたからには、向こうのやり方に沿う必要があるなって。既存のONE OK ROCKの作り方やサウンドを意識せずに、今回は特に振り切って作っています。型破りですね。この先に、きっとまた壊すっていう作業があって、それの繰り返しで目指すべき場所へいつか辿り着くんじゃないかな。たとえば洋服だってそうだと思うんですよ。僕が一番かっこいいと思うファッションってGパンにTシャツなんです。でも、人間力がしっかりしてないと似合わないと思うし。そんな意味では芸術ってすごくシンプルなのかなって気がしています。
ステレオタイプなロック像にとらわれることなく、楽曲ごとに最適なプロデューサーを起用。着実に世界市場における“いま”の空気や時代感を取り入れ、まだ見ぬ未来を切り開こうとするONE OK ROCK。バンドにとって“型破り”となる方向性がみえたきっかけとは。
前回のアルバム『Ambitions』もアメリカで制作したんですけど、ほぼセルフプロデュース的な作品だったんですよ。その時にアメリカのレーベル、フュエルド・バイ・ラーメンと正式にサインを交わして、コミュニケーションを取って、日本以外の国でも発売していこうって決まって。セルフプロデュースでアルバムを作ったときに、レコード会社のA&Rにピートという信頼してるスタッフから、「そのアルバムだと弱いから、もっとちゃんとラジオ向けの曲を作れ!」って言われて。そこから何人かプロデューサーを紹介してもらって曲を1日で作ってみたいなことを1ヶ月ちょっとやったんです。何十曲も作ったんですよ。結局、ラジオ向けに選ばれたのが、すごくキャッチーなアメリカンパンクみたいな曲で。僕はそれをあんまりシングルにしたくなかったんです。「American Girls」っていう曲で。日本のアルバムにもできたら入れたくないな……って。
そして、導かれた一片の光。世界での可能性。
アメリカのアルバムと日本のアルバムは分けてるんです。結局、(「American Girls」は)日本バージョンには入れず海外バージョンだけに入れてリリースしました。結果的に、あまり僕が好んでなかった作品にもかかわらずMVを撮ることになって。でも何ヶ月かしたら、ロスの家からUber(タクシー)でご飯を食べにレストランへ行くときにラジオから「American Girls」がかかってるんですよ。それが自分のなかで衝撃的で。こんなことありえるんだ、みたいな。レコード会社のプッシュがあったと思うんですけど、アメリカでラジオでかかるってすごいことなんだなって。そんなこともあって、この方法論でアルバムを作っていかないと、アメリカでやっていくのは難しいんだなと思って。“郷に入っては郷に従え”じゃないですけど、レコード会社の望むようなサウンドを取り入れながら、先に進めたらいいなって思うようになりました。吸収できるものは吸収してね。
こうして誕生した「Change」など、アメリカ市場のリアルを反映したコンテンポラリーなポップソングたち。反面、日本にいるファンの顔が浮かんだのではないだろうか。
このアルバムを作ってるときに、これまでONE OK ROCKを聴いてくれている人たちからしたら、全然違うものになるなって思いました。でも、自分たちがやりたいのは、ONE OK ROCKが世界でどこまでいけるかっていうこと。そんな姿をみて、何かを頑張ろうって思ってほしいなって。バンドとしてはハタチを超えた感じが自分の中ではしていて。ここから社会人になっていくモチベーションなんです。大学生が社会人になって、社会の波に揉まれていく、みたいな。僕らは好き勝手に13年間バンドをやって、好きな音楽を作ってきて。日本やアジアでは知られる存在になれて。だからこそ大人になって、別のカルチャーを吸収しようとしている最中なんですね。大学生から社会人になった人たちも、好きなように遊ぶことはできなくなるじゃないですか? 世の中の流れを受け止めながら、自分はこの先どのような人になりたいかを設計していく。それと一緒で、バンドもちょうどそういう時期なんですよ。第二章というか。いろんなことも受け止めながらバンド活動をしていくっていうターニングポイントなのかなって気がしています。
楽曲ごとにプロデューサーをたて、様々な方法論を取り込んだというレコーディング。曲作りの方法論も、だいぶ変わったようだ。
今回、プロデューサーが曲ごとにいて、それも全部向こうのA&Rからの紹介で。ツアーしながら作るんですけど、アメリカ・ツアーを1ヶ月半回って、休憩してロスへ帰って、1ヶ月くらいほぼ毎日違うプロデューサーと曲を作って。それが終わったら今度はヨーロッパ・ツアーをやって、とか。その間に……っていう繰り返しで、けっこうしんどかったですよね。メンバーと一緒にひとつのものを作り上げていくというより、ただひたすら曲を50曲くらい作っていくっていう。そのなかから「この曲はいい!」「この曲はよくない!」みたいな感じでピックしていく感じで。
ONE OK ROCKデビュー時に取材したときも“夢はグラミー賞”と語っていたことを思い出す。楽曲制作における手法は違えど、その芯は全くブレてはいない。
メンバーが言ってましたよね。グラミー賞もね、人種の問題とかあるのでなかなか難しいですけど。でも僕が本当に本腰いれてやろうと思ったのは、シンプル・プランの「SUMMER PARADISE feat. Taka from ONE OK ROCK」に参加したことがあって。レコーディングでロスに行ったときに緊張して何もできなくて。英語も全然しゃべれないし。それで悔しくて、この悔しさをバネに頑張りたいって思ったんです。
ターニングポイントは、2011年の出来事だった。
動員数も増えて、日本で活動できることは楽しかったんです。だけど、僕らよりも先にバンドで成功してレジェンドになってる人たちって国内にたくさんいるじゃないですか? だから結局、自分たちが国内で成功して地位や名声を手に入れても、結局その人たちと同じというか。だったら、もっとパイを広げて規模を広げたうえで、さらに1番を目指す方がやりがいがある。「SUMMER PARADISE」のレコーディングのときに、それを強く感じて。これじゃダメだっていう。それが大きなきっかけですね。
その後バンドは、自らの理想を追い求めた傑作アルバム『Ambitions』を完成。そして2019年、ONE OK ROCK第二章の幕開けとなる最新作『Eye of the Storm』へとたどり着いた。
アルバムのタイトルがずっと決まらなくて。タイトルは“台風の目”っていう意味で、そんな存在にこのアルバムでなりたいなと思って名付けたんです。タイトル曲(「Eye of the Storm」)を1曲目に持ってくるって決めていました。曲は1番最初の段階からあって。完成したのは遅いんですけどね。
2曲目「Stand Out Fit In」では、先行してMVも作られ、異文化が混じり合う生活を描いた映像インパクトもグッときた。楽曲でリフレインされるキーワード“はみだして なじめ”。印象的な言葉だ。
内容的には人種問題だったり、そういうものにフォーカスを当ててる映像になってますけど、本当に伝えたいことは……僕はあえて差別っていう言葉は使わないで“違い”って言います。アメリカに住んでみて、そこで受けたいろんな違いに対する嫌悪感みたいなものって、それが子どもの頃なのか、思春期を終えた大人なのかでも感じ方が異なりますよね? 人種問題は、やっぱり根が深いし。でもそれって、“違い”をお互いが認め合うとか認め合わないとかそういうことじゃなくて、いち個人の問題だと思ってるんですよ。だから、日本でもそういう“違い”に対して激しく発言する人達もいるし、それはその人の問題というか。だから受け取る側も“違い”を指摘する側も、もうちょっと違う感覚を持っていれば自分たちが求めている場所や状況になりうるんじゃないかなって。両者に対して自分が、間の立場に立ってバンドとして歌い人として何か伝えられればいいなっていう。だから“違い”について歌ってるんだけど、“違い”は別にそれ自体は悪いことじゃなくて。思いっきりはみだしながら、それでも環境に馴染んでいくっていう意味を込めて歌っています。
ターゲットが広がっているからこそ、余計なものを削ぎ落とし、より本質を大切に、シンプルな歌詞によって強いメッセージを届けていく。
歌詞もどんどんシンプルになっていってます。根本的には、難しいことを考えられるタイプじゃないんですよ。僕自体がシンプルな性格なんで。それを言葉として表現できる範囲内で歌詞を書いていますね。
アルバムの歌詞において独創的なのが、英語詞メインのなか“ここぞ!”というフレーズで挟み込まれていく、楽曲のテーマ性を物語る日本語フレーズ。ふと、浮かび上がってくる日本語の美しさ。
あ、それは単純に契約の問題なんですよ。アメリカのレーベルからは英語オンリーのアルバムしか出せないし、逆に日本でリリースする場合は日本語が入ってないとダメっていう。僕らはいま、2つのレーベルに所属してるんで。なかなかコントラクト(契約)が難しくて。本来だったら最初から最後まで英語で作っているんです。そっちのほうが流れもメロディも素敵なんですよね。だけど、自分としてはやっぱり日本人であって、海外ファンも「もっと日本語を聴きたい!」と思ってくれる人たちが多いんですよ。なので、タイトルが全部英語な分、タイトルの説明くらいは日本語で伝えられればいいかなって。量的にはすごい少ないですけどね。
楽曲クレジットを見ているとCo-Write(共作)作品が多い。メインコンポーザーTakaのみならず、様々なクリエイターが作品作りに参加している。それぞれ役割分担も明確だという。
歌詞のリリッカーがいたり、ポエムみたいなのを提案してくれる人もいれば、メロディー・メーカーもいます。トラックのプロダクションだけ作ったりね。いつもだいたい3、4人はいます。毎回ほとんど初めましてな集まりで。日本での制作スタイルとはまったく違うと思いますね。たぶん日本のアーティストがアメリカに行ってセッションしたら、1000%戸惑うと思います(苦笑)。海外では、詞も曲もプロダクションも全部ひとりやってる人ってほとんどいないんですよ。逆に言うと、たまに出てくる天才を、日本のマーケットではアーティストのあるべき形だと誤解してますよね。日本と海外の違いだと思います。
2019年を代表するアルバム『Eye of the Storm』において、1、2曲ピックアップするとしたらどれになるかを聞いてみた。
「Wasted Night」がすごく好きで。自然体のなかでできあがった曲なんです。あまりプロデュースされてない曲で。もちろんプロダクションはしてもらいましたけど、メロディはナチュラルに出てきたメロディのままなんですよ。愛着ありますね。あとは「Head High」かな。これはプロデューサーがジャスティン・ビーバーも手がけていて、曲も書ける人なんです。この曲は、ほぼ彼が作って。僕は、歌っただけみたいな感じなんですけど、ヴォーカルの録り方がすごかったんです。今までに経験したことのないハイレベルなヴォーカルのレコーディングでした。ディレクションもすごいし、オケのなかで歌わせてくれないんですよ。アカペラで歌うんです。それを、つまんで貼っていくっていう。考えていることがすごいなと思って。
「Wasted Night」は、映画『キングダム』主題歌として書き下ろしたナンバーとして話題だ。最後に、リスナーへメッセージを貰った。
アルバムを聴いてもらってライブに来て欲しいですね。それに尽きます。アルバムがスタートでライブがゴール。その意図が伝わるライブを僕らもしなきゃいけないし、そうなるようにアルバムを作っています。ゴールを観たいと思ってくれる人に、まずはアルバムを聴いてほしいですね。
【書誌情報】
タイトル:HIGHSNOBIETY JAPAN ISSUE02
価格:1,620円(税込)
流通:全国書店・ネット書店
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- Words: Fukuryu at Music Concierge
- Photography: Kodai IKkematsu at Tron
- Styling: Tatsuhiko Marumoto
- Hair & Make up: Takeshi at Sept
- Edit: Takashi Togawa