テンポがずれゆくが「店舗」
先日、探していたものを求めにとあるブランドの店舗へ。
在庫はなさそうだが僅かな希望を抱いて表参道へと出向き、その日共に行動していた友人は来日していた憧れのティモシー・シャラメ(Timothee Chalamet)を追っかけるがために現場へと出向き、インバウンドで溢れる表参道には、だいぶ細目で見たらティモシーに見えなくもない “ジェネリックティモシー・シャラメ” が数名存在しており、ティモシーゲシュタルト崩壊が発生する人混みをどうにか自分はかき分けて目的の店に突入。
そしてささっと担当についてきた方に「こちらに見覚えはないでしょうか?」とオンラインサイトの商品ページを見せての問い合わせ。
「うーん、なさそうですがもしかしたら。ちょっと5分ほどお時間ください。」とバックヤードに消えて行き、こんな思わせぶりに期待させてくる人との駆け引きもうどのくらいしていないだろう……と1987 スプリングのコレクションで世に放たれた “自分” という商品の在庫はしっかりと売れ残り、アウトレットに流れることもなくただただしていく経年劣化……と、することもない5分でしょうもない人生の振り返り。
その横ではいかにも富豪なアジア系のド派手夫婦の夫の方が「この帽子を買うからシャンパンをよこせ」と要求を始め、シャンパンのお通しが帽子ってこと? ここは斬新なコンカフェ? と戸惑い、一方の妻はデシベル高め&勢い強めハンディファンを顔に当てては、その芋虫のような重そうで厚いまつ毛が風に羽ばたきそのまま空に飛んでいってしまうのではないかと他人への余計な心配が始まり、本当に暇というものはよろしくない。
そんな5分では片付けられぬ濃度のカオス空間にようやく戻ってきたスタッフの方。
果たして在庫はあったのだろうか。微かな期待の中、彼は笑顔でこう放ってきたのである。
「やはりないですね〜二次流通などでチャンスがあればそちらで買ってもらうしかなさそうですね〜」
……斜め上な一言に、こちとら富豪の妻のハンディファンでそのまま文字通り斜め上に吹き飛ばされてしまうかと思った。
に、二次流通⁉︎
まさかの正規のブランドのショップにいる者から聞くとは思わぬフレーズ。1987年からの売れ残り在庫である自分、即座に売れてしまった新作アイテムへの現実。そして提示された希望が二次流通。
一気に購買意欲が消え失せてしまい、蛙化である。商品とブランドへの敬意や愛を持って足を運んでもこの様となるのだ。
オンラインが蔓延る中で、フィジカルな店舗の存在価値は空間、そしてそこに立つ人によって生み出される体験。お値段以上の価値がそこにはあるはずなのである。
なのにほかのブランドの店舗でも近頃、商品知識が自分の方が詳しかったりするパターンや、サイズが明らかに合わないのに無理矢理に勧めてくるパターンにも遭遇していたので、こちらはただ雑にばらまかれた餌にありつく鳩だと思われているのであろう。
斜め上に勝手に飛んでいけということなのだ。
そして憧れには会わない方が良い。とも言ったもので庶民はおとなしく眺めているくらいがちょうど良いのかもしれない。
一瞬壇上に上がったティモシー・シャラメの姿を無事おさめてアップしていた追っかけ友人の収穫を画面上で眺めながら収穫なしのこちらは呆然と手ぶらでジェネリックなティモシー達をかき分け帰路に就くのである。
- Words: キクチ