ブラウンの次はオレンジだ。
上質な服の世界において、ブラウンこそが新たな定番だ。ブラウンの服はとにかく素晴らしい。汎用性が高く、ニュアンスに富み、奥深い。面白みがありながら、それを主張しない。そして、言ってしまえばオレンジはブラウンを明るくしたような色だから、ブラウンに次いで優秀な色というわけだ。


この意見は、オレンジそのもののように刺激が強すぎるだろうか? そう思うのは、センスがない連中だけだ。オレンジのような “派手” な色は、たとえ控えめに取り入れたとしても着こなしにくい、という考えが根強くある。ばかばかしい。 どんな色の服だって、自由に着るべきだし、実際に着こなせる。中でもオレンジは、とりわけ着こなしやすい。実際、ニュートラルカラー以外の色で最も着やすいと言えるだろう。
オレンジがいま注目されているのは、その影響だろうか? 火付け役は、ティモシー・シャラメ(Timothée Chalamet)が『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』で着用したシグニチャーのオレンジジャケットかもしれない。あるいは、NASAがアルテミスIIミッションでクラシックなインターナショナルオレンジを復活させたことだろうか。とにかく、いまオレンジが旬なのだ!
だが、オレンジはずっと昔から存在している。AURALEE(オーラリー)やvisvim(ヴィズヴィム)、Casey Casey(ケイシー ケイシー)、LEMAIRE(ルメール)、Jan-Jan Van Essche(ヤン ヤン ヴァン エシュ)、NICENESS(ナイスネス)といった、世界でもとりわけクールなブランドのコレクションでは定番色だ。彼らはオレンジをスパイスとして使う。常識的に考えて、入れすぎると料理が台無しになるから、風味付けにほんの少しだけ。だが、スパイスがなければ料理は味気ないものになり、それはクローゼットにだって同じことが言える。




その不安も分かる。オレンジはイエローとレッドをかけ合わせた色であり、どちらも日常使いには難易度が高すぎる色、ましてや特別な日にはなおさらそう思われがちだ。そして理屈だけで言えば、そんな奇抜な2色が合わされば、さらに扱いづらい色になりそうにも思える。だが、これらの色の真の美しさは、あまりに型破りであるがゆえに、普通という概念を超越してしまっている点にある。
こうした色は溶け込まない、というよりそもそも溶け込めないからこそ、白黒と同じくらい気軽に扱うことができる。無理に馴染ませようとしなくていい。その代わりに、その唯一無二の存在感を楽しめばいい。思い切って受け入れること。スパイスとして味わうこと。確かに、全身イエローやレッド、オレンジでまとめるのは少し慣れが必要だが、存在感のある一点物なら何にでも合う。何にも馴染まないからこそ。
まず試すなら、オレンジはうってつけだ。イエローやレッドは、正直なところ私ですら少し慣れが必要だと思う——いや、本当にね。だって暖色だからね。……拍手は不要です。だが、オレンジは、主役にも脇役にもなれる。
オレンジは、シャツでも靴下でも、それひとつで存在感を発揮する。もちろん、オレンジのジャケットにオレンジのパンツを合わせたセットアップみたいな着こなしだってアリだ。ブラウンのような落ち着きがありながら、より派手な色ならではの刺激もある。オレンジチキンや本物のオレンジみたいに美味しそう。ちょっとしたご褒美みたいなものだ。そして、コーディネートの味付けとして、全体の色味を引き立ててくれる。
だが実際のところ、オレンジは言われるほど派手な色ではない。オレンジを着ることは、交通誘導員のような格好をすることとは違う(もちろん彼らへの悪意はない)。思い出すのは、常に素晴らしい服を作り続けているオーストラリアのブランドMAN-TLE(マントル)が2020年に発表した、素晴らしいオレンジ色のセットアップだ。単体でもセットアップとしても、本当にかっこよかった。そして思い返してみれば、MAN-TLEは最新シーズンでもまた同じようなセットアップを作っていた。

オレンジは、そういう意味でも面白い。一筋縄ではいかない色だからこそ、見るたびに新しい側面が見えてくる。
ブラウンは元々柔らかい色であり、濃すぎても淡すぎても、その柔らかい印象は増していく。一方で、オレンジはどんなトーンであっても強さを失わない。だからこそ、本当にいいオレンジは貴重なものになる。Evan Kinori(エヴァン キノリ)の色褪せたオークルとRier(リア)のレトロで鮮烈なシトラスカラーはその両極を象徴するような色だ。
オレンジは、親にあたるイエローやレッドと同じく、“気にしたら負け”な色でもある。つまり、着こなすには少しの自信とセンスが必要だ。彩度が低いほど着こなしやすく、それはどんな色にも言える。だが、もしあなたが人生でずっと無難な選択ばかりしているのだとしたら、それは本当に生きていると言えるのだろうか?
イエローやレッド、濃いブルー、そしてもちろんオレンジは、濃い色には勢いを与え、淡い色にはより深みを加えてくれるので、スタイルがどこかマンネリに感じられるときこそ手に取るべき色だ。
そんな先入観に惑わされないで。こうした色は、褒め言葉以上の価値がある、頼れる色なのだ。むしろ、人生そのものを豊かにしてくれる! デザイナーのビル・ブラス(Bill Blass)は、「迷ったらレッドを着ろ」と言った。オレンジにも同じことが言える。
- Thumbnail Photography: ©︎ STÜSSY / ANTOSH CIMOSZKO
- Words: Jake Silbert