普段、何気なく歩いている道路に改めてフォーカスしてみると、その表情の豊かさに驚かされる。都市の路上には、思いがけないほど多彩なグラフィックやマテリアルが溢れている。New Balance(ニューバランス)の「574」と「ABZORB 2000」が導く、鮮やかなグレーの世界へ。

 

多くの人々やクルマが行き交う道路は、単なるインフラではない。破綻のないように見える道路であっても、ふと目をやると、幾度も舗装を重ねた継ぎ目があり、その補修跡はパッチワークのようでもある。

雨に濡れた路面は街の風景を映すなど、無機質な道路にも多彩な表現が見え隠れする。足もとのアスファルトやコンクリートには、街の営みが時間とともに確かに刻まれている。

1906年に創業したNew Balanceは、今やあらゆる人々が足を通すスタンダード。伝統的な「574」と革新性を備えた「ABZORB 2000」。対比的な2足のグレーのシューズが、都市の路上というキャンバスで、ひときわ存在感を魅せる。

色の違いに寄ってグラフィカルな模様が描かれた歩道。色の境目に、グレーのNew Balance「574」。

「伝統」と「革新」、2つのアイコン

1980年代のランニングシューズをルーツとする574は、ブランドの「伝統」を示すアイコン。安定感のある履き心地で知られるが、元々はオフロード用に開発されたもの。ブランドにとってのヒストリックなモデルでありながら、発売から約30年が経過した今も現役の定番モデル。日本人の足型にも合うフォルムや豊富なカラー展開によって、タウンユースとして、性別や年齢を問わず幅広く支持を集めている。

2025年にデビューしたABZORB 2000は、ブランドの「革新」を示すアイコン。New Balanceが1990年代に開発したクッショニングテクノロジー「ABZORB」を再解釈。未来的なデザインやミニマルなアッパー、革新的なデザインが融合した新世代のスタンダードとなるモデルだ。3Dツールを取り入れて精密なソールユニットを開発するなど、デザインプロセスにおいても多数の革新的な取り組みが見られる。

シャーロット・リー(Charlotte Lee)が描く、未来のスタンダード

New Balanceのシニアプロダクトデザイナー、シャーロット・リー。

ブランドの資産を新たなデザイン表現に

90年代に誕生した新素材、ABZORBを再解釈し、New Balanceの新しいデザインの方向性を示したABZORB 2000。デザインを手がけたのは、New Balanceのシニアプロダクトデザイナー、シャーロット・リー。

「豊かなアーカイブを土台にしながら、現代のためにプロダクトをアップデートする」とのデザイン哲学を掲げるリーは、イギリスの大学でフットウェアデザインを学び、2014年からNew Balanceのシューズをデザインしてきた。

ABZORB 2000では、New Balanceというブランドが抱える資産であるものの、素材のひとつに留まっていたABZORBに着目。アッパーではミニマムを追求しながら、ソールには対比的に、ABZORBとSBSポッドを組み合わせた個性的な造形を採用。機能だけでなく、見た目にも快適性をアピールする表現を求めて、2000年代のランニングシューズに着想を得た新しいフォルムを導いている。

シャーロット・リーによるABZORB200のデザインスケッチ。
アッパーとソールに対比的な表現を用いながらも成立したABZORB 2000のデザイン。

常に「問い」続けるモノづくりの姿勢

ABZORB 2000で実現したアッパーとソールのデザインの融合の背景には、新たに取り入れたデザインプロセスがある。それが、VR技術を用いたデザイン手法だ。

ヘッドセットを装着したリーが、目の前の3Dオブジェクトを、「スケッチというより粘土で彫刻する感覚」で自在に操る。VRによって、3Dオブジェクトを回転させたり、拡大・縮小したり、リアルタイムに変化させることができる。これにより、例えば、2Dでは捉えにくい角度から確認しながら、立体的な造形を成立させることができるという。

さらに、ABZORB 2000のミニマルなアッパーを実現したのが3Dスクリーンプリント。1mm単位の繊細な印刷が可能なこの技術を用いることで、洗練された印象のアッパーを実現。ソールのボリュームとアッパーのミニマルさを融合させるという、新たな表現を生んだ。

リーは、こうしたものづくりの姿勢にこそ、New Balance特有のクラフトマンシップが存在するという。

「あらゆるディテールに目を配り、常に『なぜ?』と問い続ける。私達がつくるものは全て、そうした丁寧さのもとに生まれています。そうした姿勢を一言で言い表すなら、まさに『クラフトマンシップ』なのだと思います」

3Dスクリーンプリントを用いたミニマムなアッパー。廃棄する裁断パーツの減少にも効果を発揮。
フィット感や破棄心地を支える丁寧な仕上がりにもクラフトマンシップが宿る。

表現の核となるマテリアルとグレー

その名が示す通り、元々はクッショニング素材のひとつであるABZORBを進化させたABZORB 2000。30年続いてきた、快適なクッショニングをもたらすための機能的なマテリアルを、新たなフォルムの実現に用いている。

そのデザインアプローチはユニークでありながら、「大事だったのは、実際に履いたときに、初めてNew Balanceを履いたときの、そして、何度履いても感じるあの品質と快適さがきちんと備わっていることでした」とリーは言う。

ABZORB 2000にも採用しているグレーは、New Balanceにとって特別なカラーリング。グレーを基調に、紫みのあるグレーやシルバーを取り入れたABZORB 2000のカラーリング(TRUFFLE SALT with CASTLEROCK)は、グレーの新たな可能性を切り開こうとしているようにも見える。

ABZORB を採用した新開発のソールユニット。
ABZORBとSBSポッドを組み合わせた個性的な造形。

グレーを通じてブランドを体感する「Grey Days 2026」

グレーをまとったABZORB 2000と574という2つのアイコンは、「Grey Days 2026」 に改めて注目したいモデル。ABZORB 2000は、Grey Days 2026の限定カラーモデルだ。

Grey Daysは元々、グレーというNew Balanceの伝統的なカラーを軸に、ブランドの歴史などを知るワンデイイベント「Grey Day」として2018年にスタート。その後、反響の大きさとともに規模や期間を拡大し、現在では毎年5月の一ヶ月間に渡って開催されるようになった。New Balanceというブランドを体感できるワールドワイドなイベントへと成長している。

New Balanceにとってのグレーは、1980年代当時、白は派手なカラーリングが主流だったランニングシューズに敢えて採用した特別なカラー。どんなスタイルにも溶け込み、履く人の個性やほかのアイテムを引き立てるグレーは、ブランドの大胆かつ個性的な姿勢を体現した色であり、都会のアスファルトに馴染むカラーリングとして誕生している。

Grey Days 2026を祝う、グレーをまとったABZORB 2000と574。どちらのグレーも、都市の路上に広がる、一見すると無機質なコンクリートやアスファルトを鮮やかに映してくれる。