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From the ground up

彼の手中で我々はただその巧妙な手口を前にひれ伏すことしかできないのだろうか。 カプセルコレクション「AIR DIOR」について、写真集『THE DIOR SESSIONS』販売を記念して来日したDIORのメンズ アーティスティック ディレクター キム・ジョーンズに話を聞いた。

Shirt ¥7,500, Knit ¥150,000, Pants ¥81,000, Bandanna ¥31,000, Socks ¥27,000, Sneakers ¥240,000

——若い頃ストリート文化に傾倒していたんですよね。スニーカーのコレクションもかなり多かったとか。

若い頃から僕はいろんなことに興味があったんだ。GIMME FIVE(ギミーファイブ)というインポートのセレクトショップで働いていた当時は、STÜSSY、SUPREME、GOOD ENOUGH、UNDERCOVERといった、UKでは誰も持ってないようなブランドにたくさん出会ったよ、どれも大好きだった。デザインやクオリティの高さにいつも陶酔していたんだ。当時はそれらのブランドに、HELMUT LANGやMAISON MARTIN MARGIELAなどのブランドを組み合わせて着こなすのが好きだった。 ショップでは自分では買えないような高価な服にもたくさん触れ、学ぶことができた。 僕にとって何より重要なのは、スタイルの違うものをミックスさせるということだ。ロンドンにはロンドンスタイルがあるし東京は東京スタイルがあって、それでいい。デザイナーが誰であれ人々は好きなものを買うわけで、それが現在の全ての基盤になっている。それがどこから来たかということよりも、とにかくそれが好きかどうか、デザインがいいかどうか、それに尽きると思っているんだ。

AIR JORDAN 1 HIGH OG DIOR ¥240,000

——当時のエアジョーダンにまつわる特別なエピソードがあれば聞かせてください。

とにかくかっこよくて大好きだった。世の中で一番クールな存在で、みんなが欲しがっていた。でも当時のUKでは高価だったし、なかなか手に入らなかったから、友達と3人でシェアして買ったんだ。みんなが履きたくてしかたがないから履き回すのが大変だったよ。

——今回のジョーダンはどのようにアウトプットしましたか?

昔のジョーダンの中から個人的に好きなものを持ち出してそこをベースに考えを進めていった。そして、アトリエのティボ(THIBO)が工場でNIKEの担当者と詳細に落とし込んでいってくれた。バッグを作るように緻密に作り上げていったんだ。実際、バッグと同じカーフレザーを使用しているし……。詳細は彼から直接聞いてみて(笑)。ティボはスニーカーフリークだからね、完璧なチームで作り上げることができた。

ティボ:コンセプトは、ジョーダンブランドが紡いできたヘリテージに敬意を表しながらDIOR のクリエーションを融合させること。そのためにディテールの再現を追求しました。底のステッチの長さは1.1センチきっかりなのですが、これは1985 年に韓国で作られた「Air Jordan 1」のディテールそのもの。それに対して、DIORバッグの品質と美学を随所に散りばめました。スウィッシュには「ディオール オブリー ク」モチーフを正確に裁断したものを縫いつけ、インソールには「ディオール オブリーク」のレザーエッチングを施しました。こだわるあまり工場で15日を費やしました。通常2、3日で仕上げるので、非常に異例なことです。

¥210,000

——工場の対応力にも驚かされます。

NIKEのスペシャルプロジェクト用の工場が用意されたんだ。DIORの商品は高品質を守るための厳しいガイドラインがあって、フランスかイタリアで作られないといけないからね。ティボは11月に子供が生まれたばかりなんだけれど、ジョーダンはまさに2人目の子供と言ってもいいほど、手をかけてくれた。実は僕らは15年以上の仲なんだ。DIORに入ってから一緒に働くようになったんだけれど、お互いの好みが似ていて、ファミリーのような感覚でものづくりができている。おかげでとてもいい環境だ。たくさんのプロジェクトを同時に動かすときでも安心して向かうことができるからね。

——モデルに起用したTRAVIS SCOTTの最大の魅力は?

彼のエネルギーが好きだ。そして、実はとてもシャイだけれど、面白いことを言っていつも僕を笑わせてくれる。アートについても非常に造詣の深さがあるよね。服、音楽、写真のこと、気になったことはなんでも話す仲だよ。何より彼自身、ものすごいジョーダンのファンだからぴったりのキャスティングだよ、撮影後にそのまま履いて帰っていってたんだから(笑)。

Vest ¥125,000, Pants ¥87,000, Hat ¥44,000, Arm band ¥40,000, Sneakers ¥240,000

——様々なアーティスト達との交友関係を築きながら新たなコミュニティを作っていらっしゃいますが、その狙いは?

僕のコミュニティにはいろいろな人がいるけれども、昔から僕の友達はいろんな背景を持った文化や年齢がまったく違う人面白い人達ばかり。いま多様性が世界中で求められているけれど、昔から僕はそう思っていた。いろんなタイプの人がいるということは至極自然なことだし、そもそもそうあるべきだ。それによって、グローバルな価値観を持ち、様々な角度からものを見ることができる。それは、DIORという世界的なブランドを続けていく上でも非常に重要なことだ。

——ストリートのアティチュードをオートクチュールメゾンの手法を用いてコレクションに投影しています。時代の変化とともにそれが大きな実を結んできたことについてどう感じていますか?

ストリートウェアっていう括りがあまり好きじゃない。僕は、スポーツウェアとハイファッションという、ものづくりの観点が違う2つのプロダクトがミックスしただけ、と解釈している。元々、僕の好きなブランドはスポーツ由来のものが多い。SUPREMEだってスケートブランドだ。彼らはみんな、機能的なデザインを目指しているよね。今では主流になっているけれど、僕は子供の頃からずっといろいろなものを組み合わせて着るのがあたりまえだった。今はインターネットで膨大な情報が簡単に手にはいる時代だ。HIGHSNOBIETYやHYPEBEASTなどからみんなが同じようなものを見ているうちに同じようなものが好きになって、トレンドが融 合していっているだけだと思うんだ。

——異なるコンテクストからなるブランド・コラボレーションを成功に導いています。その秘訣はなんでしょう?

たくさんのブランドがストリートっぽいことをやろうとしてるけれど、オーセンティッ クじゃないとクールじゃない。その要素がどこから来て、 背景にはどんな人達がいるのかを知る必要がある。例えば(藤原)ヒロシやNIGO®は僕が若い頃に知りあった大好きなデザイナー達だ。尊敬する彼らのものづくりに若いうちから触れることができていたのは非常に幸運なことだった。当時からずっと、彼らのクリエイションがメゾンの潮流と並行して確固たる文化を築き上げていた、ただそれだけのことだよ。

以前、ヒロシと行ったコラボレーションは今までの中でも特にお気に入りのプロジェクトのひとつなんだ。彼は日本を代表するスタイルアイコンであり、素晴らしいプロダクトを作るのにも関わらず、あまりヨーロッパで認知されていない。だから、誘ったんだ。やっちゃってよ! (GO MAKE IT!)って感じでね。

Bomber ¥370,000, T-shirt ¥75,000(参考価格), Pants ¥175,000

——昨今のファッションにおける変化をどのような部分で感じますか?

服によってスノッブな気分になることはできるけれど、それがもう価格によるものではないってことかな。僕自身、特定なことに対してはとてもスノッブだけれど、その基準は本当にいいものかどうか、というフラットなものだからね。(フォール 2020 メンズ コレクションにてコラボレーションを行なった)ショーン・ステューシーとも話していたんだ。ストリートという言葉は特定の服を定義するわけではないけれど、その言葉から仕上がりが良くないものを連想してしまうっていうことに問題がある。それがちょっと厄介だよねって。

——幼少時代から様々な土地で暮らしてきた経緯もあり、よく旅行をされるそうですが、特に好きな場所や最近注目している場所はどこですか?

旅行は大好きだ、全てを見たいんだ。東京も大好きだし、LA、ケープタウン、サンパウロ、コペンハーゲン…とにかく、様々なスタイルを見るのが好き。でも特に好きなのはやっぱりロンドン。なんたって家がいいからね。今年は、数ヶ月以内にアクロという街に行く予定だよ。イースターにはナオミ(・キャンベル)とナイジェリアに、夏にはジンバブエへの旅を予定している。20年以上行ってないから、全く違っているだろうね。とにかく西アフリカが今アツい。アートやファッション界でも面白いことが起きているからね。アクロには好きなアーティストがいて、会えることを楽しみにしている。

Shirt ¥75,000, Jacket ¥250,000, Pants ¥87,000, Tie ¥22,000, Sneakers ¥240,000

——今後DIORを牽引する上で、より必要になってくることはなんだと “認識” されていますか?

何十年という長い間の中で培ってきたDIORの歴史や精神をリスペクトしながら、人々に興味を持ってもらえるようなものを自分らしく作り上げていくこと。僕が作る上で念頭に置いていることは、テーラリング、エレガンス、クチュールに基づいていること。それをベンチマークとしながらアーカイブを掘り下げてコレクションをスタートする。でも、次のコレクションはちょっと違ってくる予定だよ、僕は変化が大好きだからね! 楽しみにしていて!

Shirt ¥75,000, Jacket ¥250,000, Pants ¥87,000(参考価格)

カプセルコレクション「AIR DIOR」を祝し、写真家のブレット・ロイド(Brett Lloyd)撮影によるビジュアルを公開。