「カルティエ ロードスター」の復活が、Y2Kへの熱狂を繋ぎ止める。
バゲットバッグとベロアのトラックスーツで、カルチャーリセットを。Y2Kは(いまだに)健在であり、Cartier(カルティエ)もその流れに加わる。目を引く装いとマキシマリズムが衰えないことを示すように、同メゾンは膨大なタイムピースのアーカイブから、意外な “隠れた名品” を復活させた。
「カルティエ ロードスター」は2002年に誕生し、10年後に生産終了となったが、その短い歴史は当時の空気感を体現している。すなわち、美意識に満ちた自信、やけに細いスカーフ、そしてバグアイのサングラスといったスタイルに象徴される時代である。
その名の通り、「ロードスター」はCartierのカタログに颯爽と登場し、スポーツカーの流麗なボディワークを思わせるトノー型(樽型)のフォルムを採用した。このロードスターの造形は、細型の「タンク」や可愛らしいバスタブ型の「ベニュワール」といったCartierの典型的なエレガンスとは対極に位置している。その主な理由は、40mmを超えるモデルを中心とした大ぶりなサイズにあり、手首の着けたときに存在感を放つ点にある。つまり、これほど大きな時計は、手もとでひときわ際立つ存在感を生み出すのだ。


©︎ HIGHSNOBIETY / SCARLETT BAKER
自動車的な要素は「ロードスター」という名称に留まらず、ダッシュボードを思わせるダイヤルや露出したネジ、ヘッドライトのように湾曲した拡大日付表示窓によって、そのフォルムが特徴づけられていた。
その堂々とした存在感と、Cartierならではの洗練されたスタイルから一線を画したデザインによって、デビュー当時から賛否両論を巻き起こした「ロードスター」は、2010年代に入り、時計文化が “クワイエットラグジュアリー” へと移行したことで短命に終わった。しかし、Cartierが提示したスチール製スポーツウォッチであるこの一本が、いま再び脚光を浴びようとしている。旧モデルの愛用者(母から受け継いだこの一本に感謝!)は、ローライズジーンズを引っ張り出して、そのスタイルを完成させることができるだろう。
2000年代の熱狂が2026年に再び蘇り、Cartierはさらなる磨きをかけている。スチール、ツートーン、18Kイエローゴールドで展開される新たなラインナップは、自動車に着想を得たDNAをアップデートし、よりスリムでシャープ、そして人間工学に基づいたリベット留め(レイヤード)ベゼルを採用している。ミディアムとラージの2サイズが用意され、さらにスポーティーなスタイルを好む人に向けて、ブルーの文字盤に同色のラバーストラップを組み合わせたモデルも登場する——これはCartierによる計算されたアーカイブの復刻だ。やや意外ではあるものの、デジタルカメラやVon Dutch(ボンダッチ)のキャップに象徴されるミレニアムのカルチャーがいまなお影響力を持ち続けていることを思えば、「ロードスター」はついに正当な評価を得ることになるのかもしれない。復活のストーリーに心躍らない人はいないだろう。
- Words: Scarlett Baker