music
Tune in and turn up

Nae.Jay

2019年5月22日、恵比寿LIQUIDROOM。満を持して爆発した新進気鋭の強烈なエネルギーは、900人の観客を圧巻の渦に巻き込んだ。それから4カ月経った今でも、そこで放たれた熱は冷めることなく広がり続け人々の感興を喚んでいる。9月27日に新曲「Stay!!!」をリリースした、音楽家、常田大希による新プロジェクト“millennium parade”(ミレニアムパレード)。その幕開けとなったライブの模様を振り返る。

19:20を回った頃、3Dメガネを手にした観客が期待と興奮と共に一気にフロアに溢れていった。ステージと観客との間に掛かる薄い幕(スクリーン)に投影された、サングラスをかけた子どもの3D映像と“PUT YOUR GLASSES”の文字。「これから一体どんなことが始まるんだろう」というワクワク感とソワソワ感が、開演を待ち望む人で埋め尽くされたフロアに充満していった。会場の照明が落ち、スクリーンにピンクの顔面CGの集合体(クリエイティブ集団「PERIMETRON」のホームページにも登場)が映し出されると同時に「Fly with me」が演奏され、このライブの始まりを告げた。観客の目の前で蠕動する3D映像の、その距離の近さと迫力にフロアにはどよめきが広がった。また、リズム隊の刻むパワフルなビートと音楽隊のダイナミックでかつ緻密な演奏に歓声が湧き上がった。

Nae.Jay

続いて披露されたのは「盆」。3D映像には、鬼のお面を付けた幼児が踊るCGが映され、その後ろにうっすらと映る音楽隊の指揮を取る常田の姿があり、観客は曲のリズムに合わせて頭を上下に振っていた。

次に演奏されたのは「www」で、いわゆるヒップホップのリズムとサウンドが流れ、それに乗せてラップが始まった。会場にレーザービームが広がると、ドラムとサックスによるジャムへと流れは変化していった。映像には人の頭がどこかアシッド的な世界を見ているようなCGが映し出され、最後は透き通るようなピアノの音で締めくくられた。

一際大きな歓声が上がったのは「Veil」だ。今回のライブで唯一、millennium paradeからMV公開と配信がされていた楽曲。MVに出てくる映像が、X線にかけられているような無機質でありながらもどこか幻想的な3Dとして投影され、柔らかな歌声がそれを後ろ盾していた。

続く「Swan dive」では、ジャズっぽいサウンドに乗せて常田が拡声器で歌い、スクリーンにはそれまでのCG映像とは違うリアルな画像たちが映し出された。

次の楽曲「NEHAN」が始まると、スクリーンの中心に映る黒い人影から幾千もの光の筋が放たれ、観客のボルテージも一気に上がった。重力を感じさせない宇宙の中に飛び込んでしまったかのような感覚に陥ったかと思うと、肉体的で力強いドラムのうねりによってグラウンディングされた“生”を感じた人も多かったのではないだろうか。

続いて「SNIP」では、サックスの美しいメロディラインの中でアニメーション映像を中心にライブが進行していき、途中ステージが赤い光に包まれた瞬間、おそらくこの日初めて音楽隊全員をハッキリと目で認識することができた。メンバーの演奏するその姿は悦びと希望に満ち溢れていた。

次に続いたのは「Dark」。映像はどこか、ヴェイパーウェイヴ的な要素を含んでいたようにも見えた。リズム隊の激しいドラムラインに乗せたラップと、それと対比するような滑らかな歌声とが絡み合い幻想的な空間を演出していた。

「Stay!!!」では、映画のワンシーンのような部屋の中でくつろぐブロンドの女性の映像がアニメーション映像へと切り替わり、現実と空想の世界を行ったり来たりするような感覚にいざなわれた。また、ソフトでメロディアスな歌声の繊細さも印象的だった。

アジアの繁華街を思わせるネオンの映像が映し出され始まった「call me」。力強いビートとともにスクリーンに次から次へと映し出されたのは、このライブに関わった全ての人たちのクレジットだった。観客はそれに対し熱い拍手を送り続けた。

その高揚から一転、海の中を感じさせるような神秘的な映像とポコポコという泡の音で観客は一気に静まり息を飲んだ。Srv.Vinci(サーバ・ヴィンチ)時代の1曲「ABUKU」。水の音はどこかアナログシンセ風の無機質な要素もありつつ、そこに観客の方を向いてしゃがみ歌う、常田のリアルでフィジカルな要素が混ざり合うことで生まれるギャップがどこかとても調和的だった。

胎児の映像が3Dで観客のすぐ側に浮かび上がり始まったのは「Radio」。映像には青や黄色の原色が使われ、それが幻想的に煌めき踊りだしたくなるようなグルーヴィなサウンドとのバランスが絶妙だった。

続いての「Plankton」では、メロウで甘美な歌声と繊細な音の中、夜のガソリンスタンドに止まる車、タイプライターのキーボードを押すと、その車から次々と出て来る動物たちの映像が流れた。

そしてこの日、約70分間の初ライブを締めくくったのは「DURA」。1曲目にあったピンクの顔面や黒髪おかっぱの女性のCGが映し出され、サウンドとともにカオティックな時間が流れた。そして、ここで何よりも印象的だったのは、スクリーン越しに見える音楽隊の一心不乱に音楽を楽しんでいる姿だった。最後の最後に、millennium paradeのロゴがスクリーンに大きく投影されると、観客は惜しみない拍手と歓声を送った。

このライブまでに発表されていた楽曲は「Veil」のみ。millennium paradeの構想版アルバム、DTMP(Daiki Tsuneta Millennium Parade)の『http://』に収められた楽曲からアレンジしたもの2曲と、Srv.Vinci時代の楽曲も演奏されたにせよ、観客はこの日演奏された楽曲のほとんどを知らない状態だった。それにもかかわらず、フロアにいた観客全員が音楽と映像の革新的でカオティックなアプローチに感動、圧倒され続け、その体の動きを止めることはなかった。また、生の音楽と3D映像のクオリティが非常に高く、そういった手法の表現が増えている中で、この日の演出は群を抜いて素晴らしかった。

この日観て聴いて感じたものは集まった人の数だけそれぞれ異なるだろうが、「millennium parade」という東京発の新鋭なプロジェクトは、これから世界に広くその名を馳せることになるはずだ、という認識を共有したのではないだろうか。Let’s get this bread!!!

(※楽曲名は今後変更になる場合があります)

【millennium parade / MEMBER】

Music/Producer:常田大希
Producer/Designer:佐々木集(PERIMETRON)
Director:Osrin(PERIMETRON)
CG Creator:Yuhei Kanbe(PERIMETRON)
Designer:Cota Mori(DWS)
Vocal:ermhoi(Black Boboi)
Bass:新井和輝(King Gnu)
Keyboard:江﨑文武(WONK)
Drums:石若駿
Drums:勢喜遊(King Gnu)
Sax/Guitar/Vocoder:安藤康平
Visual Artist/Programmer:比嘉了(Backspace Productions Inc.)
Visual Artist/Programmer:Kezzardrix(INT)

【millennium parade「Stay!!!」MV】(9月27日リリース)

【millennium parade「Veil」MV】

【ワンマンLIVE「millennium parade Live 2019」概要】

<大阪>
日程:2019年12月3日(火)
時間:OPEN 19:00 / START 20:00
会場Namba Hatch

<東京>
日程:2019年12月5日(木)
時間:OPEN 19:00 / START 20:00
会場STUDIO COAST

プロデュース・企画:PERIMETRON
主催:Sony Music Labels Inc.
制作:Hot Stuff Promotion

チケット購入ローソンチケット

millennium parade「Stay!!!」配信ストア
millennium parade 公式サイト

【関連リンク】
King Gnu常田大希が語る新プロジェクトの未来と哲学