style
Where the runway meets the street

Highsnobiety / Thomas Welch

数年前に、「Ralph Lauren(ラルフ ローレン)が、いつの時代も最高のストリートブランドであると称されるのか」という議論を行った。少し上からの物言いだというのは分かっているが、近年ストリートウェアを取り込もうとしている多くのブランドとは異なる。Ralph Laurenには、ブランドストーリーを伝えるアイテムや明確な世界観があり、それらを様々な人たちに様々な解釈をさせる力がある。これこそがRalph Laurenが切り開いてきたものであり、多数のストリートファッションブランドへと派生している手法である。

しかし、ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)本人とブランドは、常にこのような話題から距離を置き、独自の世界観の中で邁進する。1967年にラルフ・ローレンによって創造された情熱的な宇宙の中を、自身を含むいくつかの惑星がそれぞれの軌道をえがくように。

ハイテクなスポーツギアラインのRLX(アール エル エックス)、『Red Dead Redemptioncowboy(西部劇を舞台にしたビデオゲーム)』にも出てきそうなPRL(ピー アール エル)、上品で洗練されたアティチュードのPurple Label(パープル レーベル)、リッチな世界観を持つPolo Ralph Lauren(ポロ ラルフローレン)がある。これらの異なるスタイルは、アメリカントラッドとミリタリー要素を少しずつ加えることにより、一貫性を持っている。

「Polo(ポロ)は、今の自分が思い描くライフスタイルに反映できる。王道のプレップ、ヨットマン、カントリージェントルマン、アルペンハイカーの救助チーム、007のジェームズ・ボンド(James Bond)など。これこそが、それぞれのライフスタイルに合った真の洋服だ。」と、Ralph Laurenの長年のコレクターであり、カルチャルコメンテーターのダラス・ペン(Dallas Penn)は語る。

Commonwealth / Roy Macam

Ralph Laurenの優れた点は、色々なアイテムを全てミックスしてしまうところである。タキシードジャケットとウォッシュドデニム、Salomon(サロモン)のトレイルスニーカーを自由に組み合わせる、設立者のDNAを受け継いでいる。Ralph Laurenは、LEGO(レゴ)のブロックのように、洋服を組み合わせるときに、真価を発揮する。もちろん説明書通りに組み立てることもできるが、子供にとってはお城を作るブロックで戦闘ジェット機を作るほうが楽しかったりするものである。

フォトグラファーのトム・ゴールド(Tom Gould)と、Ralph Laurenの熱狂的ファンであり、ブランドの火付け役となったニューヨークの非行集団Lo-Lifes創設メンバーであるサースティン・ハウル・ザ・サード(Thirstin Howl III)による書籍『Bury Me With the Lo On』の中でも繰り返し述べられている。序文にて、ボンズ・マローン(Bonz Malone)はLo-Lifesのことを、「アメリカン・ドリームを掴むことはできないと世間に言われ、洋服を盗んだやつらのグループ」と表現している。

その活動の中でLo-Lifesは、ラルフ・ローレンが想い描いてきたアメリカンスタイルのコードを覆し、Ralph Laurenの洋服へ新たな意味合いを持たせた。スニーカーヘッズがBordeauxやGrapeモデルのJordan(ジョーダン)に再燃する一方、Lo-Lifeは自身らの共通言語を作り上げた。

Ralph Laurenの紋章はクッキーパッチ、シルクシャツはバーバーショップ、Ski ’92コレクションのダウンジャケットはスーサイドスキージャケット(みんなが欲しがるゆえに、外で着ていると死を願っていると思われる)と呼ばれるようになった。Ralph Laurenのコレクションは、ファッション界では賞賛を浴びたが、それはブランドの持つサブカルチャー的要素がデザイナーを神格化し、Loのメンバーが未だに讃える洋服にある種の宗教的尊厳が吹き込まれたものである。

「Lo-Lifeのメンバーは、好きなように着飾り、ストリートに精通している人たちが集まるようなブルックリン、マンハッタン、ブロンクスに影響を与えた。カルチャーを作り上げた。それは自分たちの手柄だと思っている。」とサースティンは言う。

Highsnobiety / Ahmed Chrediy

今年のPolo Ralph Lauren(ポロ ラルフ ローレン)は、これまで最も人気があったコレクションの復刻リリースをすることにより、現在のサブカルチャーの事態へと身を乗りだした。90年代のアーカイブを再構築したStadiumコレクション、Snow Beachコレクション、CP-93コレクション、Downhill Skiを発表した。特に、StadiumコレクションとSnow Beachコレクションは限定で、Polo Ralph Laurenの新たなアイテムが脚光を浴びることとなった。アメリカを感じさせるポロブランドとして知られるPolo Ralph Laurenが公式のキャンペーンビジュアルにトム・ゴールドを起用し、Bodegaは商品によりユースとストリートのエッセンスが加わり、CommonwealthはLoのメンバーであるエディー・フアン(Eddie Huang)をCP-93コレクションのモデルに迎えた。

「Ralph Laurenというブランドとその洋服はカルチャーを超え、様々なコミュニティに属し、様々な興味を持つ自分のような人たちへの偉大なユニフォームとなった。」と、1995年からRalph Laurenの収集と着用し続け、最近ではPublic School(パブリックスクール)とパートナーシップのもと「Lo and Behold」と題されたヴィンテージのPolo Ralph Laurenの展示を行ったエズラ・ワイン(Ezra Wine)は言う。この展示は、どこか懐かしさを感じさせる90年代の寝室を模した部屋をフィーチャーした。Ralph Laurenがストリートファッションで隆盛を極めていた全盛期についてのことである。

トム・ゴールドの起用、サースティン・ハウル・ザ・サードへのコレクションキーピースの無償提供や、RLMAG(公式サイト上でのオンラインコンテンツ)、ストリートカルチャーがブランドへ与えた影響力など、Ralph Laurenはいよいよストリートウェアにおける第二波を生み出している。

しかし、古き良きを正しく導くのはトリッキーである。Snow BeachのプルオーバーやStadiumのアノラックのようなアイコニックなアイテムの復刻には、新たな解釈にそれぞれのラインのレガシーを残している。それは、Ralph Laurenの50周年記念でのショーで見せたStadiumコレクションから着想を得たダウンやオールブラックのSnow Beachコレクションから見えるように、アーカイブ精神を邪魔せずに懐かしさを感じさせること。

「ラルフ・ローレンは自身のアーカイブを掘り下げるに値するけど、リアルなストリート系のスタイリストに対する広い理解がなかったことに少し悲しさを感じる。」とペンは嘆く。「ストリートウェアと復刻版のリリースは、最初に生み出した人物への理解がないと全く意味をなさないんだ」。

Highsnobiety / Thomas Welch

Poloの支持者や長年のコレクターたちは復刻版について複雑な感情を持っているが、サースティン・ハウル・ザ・サードとダラス・ペンは刷新された自分たちのお気に入りアイテムを、その後に膨れ上がった転売価格よりもはるかに安く手にすることができ幸せであった。人気のアイテムが即完売したところで、サースティンにとって復刻版はオリジナルと同等に価値があるものと考える。

「$4,000や$5,000を支払った奴らは馬鹿げている。」とサースティンは指摘する。「復刻アイテムは、この数年で$4,000や$5,000の価値が出てくる。市場をさらに増幅させるだけだ」。

昔からのファンに手にしてもらうのも一つの手だが、 Ralph Laurenはより若い層も取り込もうとしている。クラシックコレクションの復刻もこの層への挑戦だった。Ralph LaurenのCEOであるパトリス・ルーヴェ(Patrice Louvet)は『New Yorker』の記事で、北アメリカのRalph Laurenストアで、この記念すべきStadiumコレクションを購入した78%の人は、新規の客であったと語っている。

それはまさしくRalph Laurenが、Palace Skateboards(パレス スケートボード)とのコラボレーションで獲得したいと望んでいた顧客層であった。この突発的なパートナーシップは、Ralph Lauren初の試みであった。もちろん、Loのメンバーであるエズラ・ワインが頑なに言うように、Ralph Laurenがブランドとしてあるべき道のりを歩み続けることを望んでいた者もいるだろう。

「Poloが他のブランドとコラボレーションするなんて思いもしなかった。そうするべきでないとも思うね。彼らこそがオリジナルなのだから。」とワインは語る。

Palace

昔からのLo-Life好きたちの多数は、ワインの思いに共感するか、新しいコレクションを確認すらしていない。サースティン・ハウル・ザ・サードにおいては、Palaceとのコラボレーションよりも、自身らの時代のRalph Laurenに興味がある。そして彼の子供達は、Supreme(シュプリーム)のようなブランドに熱心だと言う。しかし、ダラス・ペン( Dallas Penn)は、Ralph Laurenがなぜそうしたのか理解し、チャンスを与えるべきだと考える。

「Poloの洋服は、新しい風を必要としている。」とペンは語る。ペンはPalaceとのコラボレーションを全て見ていないが、キックフリップをしているPoloベアーのセーターの昔からのファンであったある。「もし(Palaceとのコラボレーション)が気難しい老人が着ている虫食いのセーターのようならば、そのカルチャーは耳にも入ってこないだろう」。

今後のRalph Laurenは、ストリートカルチャーへの立役者となるであろうサースティンやエディー・フアンのような熱狂的ファンとのコラボレーションがあるのかもしれない。結局、サースティンが所有するLo-Lifeのレーベルは、ブランド公式の復刻版が販売されるより前に、Stadiumコレクションのアノラックのようなアイテムへ敬意を示し、ストリートウェアだと再認識させた。

「ラルフ・ローレン本人とブランドは、昔の姿を取り戻すべきだよ。」とサースティンは語る。僕らのコミュニティに戻ってきて、ブランドをカルト的になるまで有名にした人達への敬意を表して、何かすべきだね。」