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Where the runway meets the street

ガイ・ベリーマン(Guy Berryman)と聞けば、ほとんどの人が「Coldplay」のベーシストとしての彼を思い浮かべるだろう。しかし、ガイは「車好き」としても知られ、クラシックカーの収集や修理、雑誌『The Road Rat』の制作にクリエイティブ・ディレクターとして関わるほどの情熱を注いでる。

今度は「ファッション」の分野において新たに才能を開花させている。自身が手がけるメンズウェアブランド「APPLIED ART FORMS(アプライド・アート・フォーム)」を、COVID-19のパンデミックの影響で世界が大きく変化するなかでスタートしたのだ。

昔からクラシカルなワークウェアやミリタリーウェアに興味があったという彼が、ブランドをスタートした経緯や想い、そしてクリエイティビティについて語った。

——自身のブランド「APPLIED ART FORMS」を始めようと思ったきっかけは?

僕は常に「創造する」ことが必要な人間なんだ。創造することで人生が楽しくなるし、ハッピーになる。いつも音楽やアート、写真、デザインに情熱を注いできたんだけど、洋服のブランドを立ち上げたことで、自分の創造性を探求するための別の場所ができたんだ。

——いつから服のデザインを始めたのですか?

3年前に始めたんだ。デザインと製造に関するプロセスを自分で学ばなければならなかったんだけど、最初は結果に全く満足していなかった。今回発表したコレクションは、これまでの長いプロセスの結果で、デザインや品質にはとても満足しているよ。全てが美しく作られていなければならないからね。

——「APPLIED ART FORMS」はミリタリーにインスパイアされたデザインです。生活においてはどのようなところからインスピレーションを得ていますか?

ミリタリーやユーティリタリアンな服は、機能に追随したフォルムが美しいといつも感じているよ。実際、僕が好んで集めているのは、ほとんど全てがこの哲学に従っているものなんだ。ディーター・ラムス(Dieter Rams)のインダストリアルデザインやイタリアのカロッツェリア(コーチビルダー)である「Zagato(ザガート)」などは、機能を通じた美しさのクリエイションを提供している良い例だね。

——どのように創造性をブランドに反映させていますか?

コンセプトからデザイン、素材の選定、製造に至るまで、僕は全ての工程に携わるようにしている。全ての過程が完璧じゃないとダメなんだ。

——カーゴパンツやデニムジーンズのようなアイテムは日本製ですが、なぜ生産を日本にこだわるのですか?

僕は他のどのファッション文化よりも、日本のファッション文化に親しみを感じているんだ。日本には実用的な服への愛がいっぱい詰まってるし、日本の人々が僕と同じように現代的なスタイルを評価しているというのが好きだからだよ。

——日本のクラフツマンシップについてどう思いますか?

日本の文化には、豊かな発想力とクラフツマンシップへの情熱があるよね。僕は、同じシンプルなものだとしても、複雑なデザインよりも、美しさとクオリティーが高いシンプルなものを作りたいと思っているんだ。それが日本らしさだと感じるよ。

——制作したアイテムのなかで、お気に入りのものを教えてください。

これまで作ってきたもの全てに満足しているけれど、「AM2-1 Modular Parka」は特別なもの。このコートは、天候に応じて襟、フード、ライナーコートを交換できるようになっているんだ。技術的な感じのするアイテムだけれど、とてもクリーンでエレガントな一着。1940年代にイギリスで開発された100%コットンの天然素材「ベンタイル」をアウターウェアに使っていて、これは経年変化を楽しめるようにという考えのもとに開発されたものなんだ。

——ファッションに携わってきて、音楽とファッションに違いはありますか?

クリエイティブなプロセスは、音楽とファッションは似ているんじゃないかな。自分のアイデアを盛り込んで何かを構築していく際に、自分のまわりの世界、自分の好きなものを見て、解体して分析していくという部分だね。

——音楽とファッションとでは、どのように感覚を使い分けますか? または同じですか?

よく似ているけれど、「Coldplay」の場合はグループでのコラボレーションで、一人で作るものとは全く違うものを常に生み出している。一方、「APPLIED ART FORMS」では、どちらかというと単一のヴィジョンを持っているんだけれど、優れた才能を持つ人達と協力して、アイデアに命を吹き込んでいるよ。

——パンデミックの影響で自身の変化はありましたか?

パンデミックの最中にブランドを立ち上げることは、確かにチャレンジングなことだった。僕達は多くの仕事をリモートで行わなければならなかったけど、どうにか全部こなすことができたよ。パンデミックが始まったとき、「クリエイティブ」という部分の過程はすでに終わっていたから、この状況を乗り切ることができると確信していたんだ。世界が、僕が記憶している場所に戻ってくるのを楽しみにしているし、そうなったら旅行も早くしたい。日本がとても恋しいけれど、いつか日本で「APPLIED ART FORMS」を代表して活動できることを楽しみにしているよ。

——クリエイティブな活動にも影響がありましたか?

僕のクリエイティビティは、どんな状況でも常に存在している。パンデミックによって生産過程が遅れているけれど、アイデアは浮かんでいるんだ。

——今後、ブランドをどのように成長させていきたいですか?

僕達はシーズンごとのコレクションに焦点を当てていないので、コレクションを常に成長させ、進化していきたいと考えているよ。今は、夏と冬のシーズンに向けて、より多くのスタイルを作り出していて、小物やバッグを制作しているんだ。他のブランドとのエキサイティングなコラボレーションも進めているよ!

——今後の予定を教えてください。

年間を通して、様々な新作を発表していく予定なんだ。例えば、カプセルコレクションでの新しいグラフィック、インディゴの日本製のデニムジーンズ、アウターウェア、デコンストラクション(脱構築)的な美しいコットンスーツなど。今年の夏には、アムステルダムにポップアップストアをオープンする予定で、直接来てくれた人達とコミュニケーションを取りたいと思っているよ。いつか、日本でもできたらいいな!

※本記事は2021年4月に発売したHIGHSNOBIETY JAPAN ISSUE 06に掲載された内容です。

【書誌情報】
タイトル:HIGHSNOBIETY JAPAN ISSUE06
発売日: 2021年4月9日(金)
価格:1,650円(税込)
仕様:A4 変形版
※通常版・限定版ともに、表紙・裏表紙以外の内容は同様になります。

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