VALENTINOも知る削ぎ落とした本質の強さ
- By HighsnobietyJapan in style
- 2023年1月17日

©VALENTINO / NICOLÒ DEGNI
鮮やかでボリューム感のあるガウン、ドラマチックなヘッドウェア、高いヒールを多く手がけているイタリアブランドのVALENTINOだが、最新コレクションではベーシックへの回帰を見せている。
クリエイティブディレクターのピエールパオロ・ピッチョーリは、ほぼ常に黒のTシャツ、黒のパンツ、黒のシューズに身を固めている。寒い時期にパーカーを着るとしてもこれまた黒だ。
そんな定番スタイル王であるピッチョーリがVALENTINOからリリースするリュクスなコレクションのタイトルが「Maison Valentino Essentials(本質主義)」であることに違和感はないだろう。
Maison Valentino Essentialsでは、コレクションの名の通り、ゆったりとしたジャケット、パジャマ風シャツ、ルーズなパンツ、オーバーサイズのジャケットが登場している。
一見すると優雅な定番アイテムのコレクションといった印象かも知れない。しかし、ピッチョーリがそこに込めた思いにはそれ以上のものがある。例えば下のキャンペーン画像はAIで生成されているなど、時代を反映したコレクションとなっているのだ。

ここ数年、レディースウェア、メンズウェアの双方に変化が起きていることは疑いの余地のない事実だ。コロナ禍に見舞われ、あらゆるものを受け止める姿勢が社会的に浸透してきたことを受け、各ブランドでは男女混合ショーやユニセックスライン、アイデンティティを特定しない多様なモデルの起用が進んでいる。
ノールールこそが新ルール。自分らしく着たいものを着れば良いというわけだ。
HIGHSNOBIETYの取材に対しピッチョーリは、
「Maison Valentino Essentialsでは、パジャマやテーラリング、クチュールまでを織り交ぜたい。それが個性と多様性が重視され、規則でも役割でも世間体でもなく、個人の表現がものを言う時代を生きる現代人の精神性を描き出すことになると思っている。」
と語った。
言わずと知れたVALENTINOのクチュール、緻密なテーラリング、ストリートウェアの要素、実用性の融合が、Maison Valentino Essentialsの核となっている。
テーラリング(仕立て)とは、身体に合わせて作るというよりも、衣服に流動性を持たせるということ。ピッチョーリが重視するこうしたデザインコードが新たな表現とアティチュードを生み出している。
カラーパレットには、黒もしっかり入っているが、VALENTINOの「クチュールカラー」として知られるピンクPPが採用されており、この色が、今回のコレクションの各アイテムに「新たな意味」を与える役割を果たしている。
「Maison Valentino Essentialsでは、さまざまなルックやシルエットを通してコアにあるものを幾重にも探訪し、爆発させることを目指した。」とピッチョーリ。
「ピンクは何世紀にもわたって捉えられ方や意味が最も多様に変化してきた色。だからこそ今回のコレクションに使いたいと思った。」
汎用性、控えめな表現、そして何より、資質の良さで勝負するタイムレスさといったワードローブベーシックの核を凝縮しているのが今回のコレクションだ。Vロゴが全面に躍るというようなことはない。
VALENTINOのミューズの新時代の幕開けを告げ、新たなワードローブを提案するMaison Valentino Essentials コレクションは、VALENTINOストアおよび公式WEBサイトで発売中。
「ストリート、クチュール、テーラリングそれぞれを単体に扱っているだけでは、この時代を表現することはできない。こうしたものの融合こそが現代だ。」
とピッチョーリ。
「このコレクションは、メンズ、そしてあらゆる人の装いについて新たな考え方を示すという意味で重要なコレクションだ。」
- Words: HIGHSNOBIETY
- Translation: Ayaka Kadotani
