ファッション界とアイウェア迷子問題

私の人生において、2つの真理が証明された。それは、最初失恋が一番引きずること、そして最高のサングラスほど安いということ。そんな感じかな。

長年に渡り、私はサングラスにかなりの金額を費やしてきたし、仕事柄、数多くの高価なサングラスのサンプルを手にしてきた。だが、値段以外でそれらのサングラスに共通していることと言えば、手に入れて間もないうちに失くすか壊すかしてしまって、いまでは手もとにひとつも残っていないことだ。

これは高価なサングラスのせいというより、私自身に問題があるのだろうか? もちろんその可能性はある。しかし、“値段や品質に関わらず物は丁寧に扱うべき” という明白な教訓がありながらも、高価なサングラスから安価な物へと切り替えたことで、ここでは語りきれないほど褒められるようになったし、満足度も高かった。

©︎ HIGHSNOBIETY

実を言うと、私が一番気に入っていて、周りからもよく褒められるサングラスは、ジョージア州のどこかのサービスエリアで、あのくるくる回る回転ラックからたった7ドルで買った一本だ。OAKLEY(オークリー)っぽいデザインだがノーブランドで、超軽量だけど丈夫で、どこかラバーのような質感すらある。吸血鬼のように日差しに弱い私の目でも、真昼間にここまで楽だと感じたことはない。視界の色味が妙に変わるような違和感もないし、頭を少し傾けただけでずり落ちることもなく、くせ毛をまとめるヘアバンド代わりにもなる。

もちろん、ここまでに挙げたような利点を得られるなら、私は喜んでそれなりの金額を払うし、おそらく誰だってそうだろう。だが、正しい基準さえ押さえていれば、サングラスの購入で “ガソリンスタンドの安物で済ませるか、貯金を崩して高級品を買うか” のジレンマに陥る必要はない。その基準の大半は、既にここで挙げた通りだ。

JACQUES MARIE MAGE
クレメンス ラウンドフレーム
Ray-Ban
オリンピアン
MIU MIU
ロゴ入りラウンドサングラス

最近訪れたコモ湖で痛感したのだが、ファッション業界で高く評価されているブランドだからといって、アイウェアまで優れているとは限らない。むしろ私がこれまで見てきたかなり派手なフレームを生み出している責任は彼らにあるとも言える。ライセンス契約のせいなのか、ロゴで注目を集めようとするブランドの方針なのか、あるいは富裕層の判断力の乏しさなのか。あの巨大なアセテート製ゴーグルみたいなサングラスは、誰のためにもなっていない。結局のところ、目指したいのはイケてる人であって、虫ではないはずだ。

ミラノサローネ国際家具見本市の会場をざっと見渡した限りではそう思えないかもしれないが、キャロリン・ベセット=ケネディ(Carolyn Bessette-Kennedy)のトレードマークであるオーバルフレームだけが、虫みたいなデザイナーサングラスに代わる選択肢というわけでもない。もちろん、あれはあれでかわいい。だが、本当に優れたサングラスを決定づけるのは、極端なシルエットや流行のフォルムではない(ましてや、かけるだけでメタバースにアクセスできそうなものである必要もない)。結局のところ、大事なのはどこまでも使いやすいことなのだ。

PORT TANGER
レクタングルフレーム サングラス
Ray-Ban
ダディオー
SAINT LAURENT
ブラック SL 806 サングラス

とはいえ、信頼できるRay-Ban(レイバン)は、まず外れがないと私は思う。中でも「ダディオー」と「オリンピアン I」はいま特に気になっている。細身のブラックフレームで、スポーティなスタイルからスマートな装いまで幅広く馴染むからだ。同じことは、PORT TANGER(ポート タンジェ)の「タンジェリン」や、JACQUES MARIE MAGE(ジャック マリー マージュ)の「クレメンス」にも言える。どれもどこかクラシックな雰囲気を持ちながら、ときには外しとしても機能する。例えば、プレッピーな服にスポーティなサングラスを合わせるような、私好みの着こなしとも相性がいい。

色付きレンズには気をつけたほうがいい。私も好きだが、度を超えると、ただ色付き伊達メガネみたいに見えてしまうことがある。もし求めているのが、ただ見た目がいいだけではなくちゃんと実用的なものなら、偏光レンズの眩しさを抑える効果はかなりありがたいはずだ。

コペンハーゲンの半数がここ数シーズンかけ続けているようなヴィンテージGUCCI(グッチ)や、目をちゃんと覆えているのか怪しいベルリンっぽい極小サイズのマトリックス系サングラスにうんざりしている? 私もだ。CUTLER AND GROSS(カトラー アンド グロス)、GENTLE MONSTER(ジェントルモンスター)、CHIMI(チミ)は、それぞれエッジを効かせつつも、タイムレスさと現代的な感覚をうまく両立しており、トレンド感が強すぎて時代性が出てしまうようなデザインではない。

もし目が魂の窓なのだとしたら、それを少しお洒落にしたり(そして守ったり)することに、なんの恥ずかしさもない。そして、それがどんな形であるべきかを、いったい私が決められるだろうか? とはいえ、どれだけ好みが人それぞれだとしても、アクセントとやりすぎは別物だ……。最後にひとつだけアドバイスをするなら、とにかくサングラスの上に座らないようにすること。どれだけお気に入りの一本でも、そんな圧力にはさすがに耐えられない。