style
Where the runway meets the street

ブランド:1BLOCK STUDIO(ワンブロック スタジオ)

ゲームやアプリ上の“仮想”の自分に好きなファッションをまとわせ、そのビジュアルをリアルな人間関係に紐づくSNSでお披露目する、といったアクティビティの人気が過熱している。時に自分のアカウントやキャラクターを使い分けながら、リアルとバーチャルのフィールドやコミュニティをパラレルに行き来するメタバース世界へと、人々は歩みを進めている。

改ざんできず、取引記録を未来永劫価値として残せるブロックチェーン技術の登場によって、リアルアイテムとデジタルアイテムの価値は大差なく捉えられるようになった。昨今では、メタバースの可能性への期待感によって、デジタルアセットが“リアルなモノ”の価値を凌駕するケースも増えている。とりわけ、どんな近未来的・非現実的な装いも可能にするデジタルファッションの価値は上昇の一途をたどっている。パラレルな世界を横断する人々にとって“バーチャルな見た目”は自己表現やアイデンティティと密接に紐づいている。

その役割は、好みのスキンを装着してゲームをプレイしたり、アバター同士で仮想の街中で交流したり、といった行為のみに留まらない。3DCGによって生成されたNFTを含むデジタルファッションを、ホルダー自身がAR上で装着できるアプリ「METADRIP(メタドリップ)」などの登場によって、NFT×ファッションは実用性とフィジカルな体験としてのアプローチを兼ね備えた、革新的なフェーズに到達している。仮想でも現実でも、自由にハイブランドやユニークなメゾンのクリエイティブを着た自分をアピールできるシーンが現れた。

希少性という付加価値によって、人気が過熱し続けるデジタルスニーカーのマーケットプレイスに目を向けると、市場規模はすでに数十億ドル規模にまで到達。デジタルオーナーシップが広くマスに近い層にまで獲得されつつある現在、潮流を左右するのはユニークでコレクティブなアイテムたちだ。デジタルコレクションの最新事例では、世界最大級のマーケットプレイス「OpenSea」(イーサリアム)のNFT取引高において一時、世界ランキングで1位を記録した。

「MetaSamurai」を手掛ける1BLOCK STUDIOが先に展開したバーチャルスニーカー「AirSmokeZero(エアスモークゼロ)」は2021年から100足の無料配布からスタートしたプロジェクトだが、現在の最低購入価格は6ETH、日本円で約120万円(2023年1月現在)と高騰している。

「AirSmokeZero」は、人気コミック 「範馬刃牙」や、「BABYMETAL」「JP THE WAVY」などの有名アーティスト、ストリートカルチャーを牽引するクリエイター「backsideworks」などとのコラボを実現させ全アイテムが完売しているが、「MetaSamurai」についても「COACH」「atmos」「BEAMS」といったブランドやセレクトショップのほか、人気IP「LUPIN THE ⅢRD」等とのコラボが展開され、今後も「攻殻機動隊」とのコラボが発表されている。

2022年末のホリデーキャンペーンとして展開された「BEAMS CULTUART X MetaSamurai」は、期間中に繰り返しTwitterでトレンド入りし、1BLOCK STUDIOのフォロワーのほか、アート、音楽、ストリートカルチャーなどに対する、感度の高い双方のファンとのエンゲージや来店促進に繋がった。

コレクティブなデジタルアイテムを通じて曖昧になるリアルとバーチャルの境界線上に生まれる新たなコミュニケーションは、高次のフィールドであるWeb3.0においても、ブランドやIPの価値や思想、世界観といったものを定義するカギとなることは間違いない。

アイテムへのアクセシビリティ、信頼性、流動性、またオーナー同士のコミュニティ形成といった様々な面からも、デジタルコレクションにはリアルな“モノ”のコレクションには成しえなかった、ダイナミックな機能の拡張が期待できる。IoTを超越したMoT(Metaverse of Things)へと舵を切るデジタルのトレンドをリードする「MetaSamurai」は、周辺に形成される正当なマテリアルの一つとして価値を確立しつつある。

急激な普及を経て、以前よりもやや落ち着きを見せているNFT市場において、コレクティブなアイテムたちは今後の仮想クリエイティブの成長やデジタルデータのヴィンテージ化に伴うトークノミクスの醸成にも貢献するはずである。