style
Where the runway meets the street

暗がりを走るベースのリズム音。レッドカーテンに包まれたボックス。CELINE(セリーヌ)2020年メンズサマーコレクションの幕開けである。

ファーストルックで魅せたのは、エディ・スリマン(Hedi Slimane)が得意とする細身のテーラリング。グレーのスリーピースは、スワロフスキーがちりばめられたシャイニールック。

今回のショーのために制作されたという、ニューヨーク・ブルックリンのアートロックユニット「BODEGA(ボデガ)」によるオリジナルミュージックをBGMに、フォーマルからデニムのカジュアルスタイルまでが次々と続く。

©︎Highsnobiety / Juliem Tell

エディ特有の細長いシルエットはそのままに、70年代を感じさせるカラーパレットやハイウエストが登場し、音楽家や俳優、ファッションアイコンとしてマルチな才能を魅せたフランスを代表するアーティスト、セルジュ・ゲンスブール(Serge Gainsbourg)のスタイルを想起させるルックも登場。胸元を大きく開けたシャツにデニム&ジャケットやタキシードルックなど、数々の色恋を経験したゲンスブールらしいロマンティックスタイルがエディらしく解釈されている。スーツジャケットの襟を飾るバラのコサージュも目を引いた。

©︎Highsnobiety / Juliem Tell

さらに、「I have nostalgia for things I probably have never known.(おそらく知らなかったものに、なつかしさを感じる)」というコミカルなメッセージが刺繍されたストローバッグは、ニューヨーク在住のアーティスト、David Kramer(デビッド・クレイマー)とのコラボよるもの。ショーのインビテーションやCELINEのインスタグラムのティザーでもコラボしている気鋭のアーティストの一人だ。そのほかに、ザック・ブルーダー(Zach Bruder)やアンドレ・バッツァー(André Butzer)、ダービー・ミルブラス(Darby Milbrath)、カルロス・バレンシア(Carlos Valencia)といった新進気鋭のアーティストとのコラボアイテムを発表した。

5人のコラボアーティストの一人、デビッドにコレクション直後にインタビューを敢行した。

—ショーはどうだった?
素晴らしかったよ。ショーを見るのは人生初だったしね。音楽も演出もすばらしかった。

—今回のCELINEとのコラボはインビテーションからプロダクトまで幅広かったですね。
インビテーションは素晴らしい仕上がりだったね。そのほかにもショーでは見せていないTシャツやバッグに僕の作品がプリントされたものも出てくるよ。ショーのバッグにテキストが載っていたのも僕の作品から引用されたものなんだ。

—自分のスタイルはどのようにして生まれました?
小さい頃からずっと絵は描いた。いろんなライフスタイル商品の広告を雑誌や新聞で見るようになって、それを絵と組み合わせるようになったのが始まり。子供ながらにアルコールなどの大人の広告にとても興味があったんだ。

—CELINEとのコラボで登場した作品は、いつの時の作品ですか?
ほとんどが去年の作品だよ。近年の作品は自分のiPhoneで撮った写真、特に夕日を参考にしながら絵を描いていると、テキストが思い浮かんでくるんだ。絵にアクセントを加えるにはテキストを入れる。テキストはとても重要な要素なんだ。今回のコラボでは、ファッションアイテムに「脚注」を入れるように、全体のコレクションにアクセントを効かせているようだった。

—コラボに至ったきっかけは?
アートフェアや個展、インスタグラムでアクティブに活動をしていて、それを発見してくれて、話が舞い込んできたんだ。こうやってファッションとアートの世界が交わることは面白い予感しかしないから、このプロジェクトに参加できて本当に光栄だよ。

—ショーの前にCELINEのインスタグラムでインビテーションが公開されました。今までのCELINEとは違ってポップでカラフルなアートが現れて、「予想外」だと思いました。
そうだね。僕のアートはカラフルだから、ブランドとしては思い切った挑戦だったのかもしれない。ペインティングに載せるテキストも自分の中の気づきを少し皮肉がかったコミカルな要素を加えているんだけれど、誰もが共感できることだからね。それから僕の作品は「70年代感」を加えているんだ。それがアニメーションやファッションに至るまでうまく噛み合わさっていたのは素晴らしかったよ。


いくつか作品を送ったのだけれど、指示はとても明確だった。そして、編集作業もなしで、アートをそのままプロダクトへと落とし込んでいった。ほとんどの人が「皮肉」を遠ざける傾向にあるけれど、それを恐れずに成し遂げてくれた。

—デビッドさんの作品のようなカラフルなCELINEのアイテムを期待できますか?
そうだね。たくさん出てくると思うよ。それから刺繍のものもね。

—これまでにコラボをしたことはありますか?
自分の個展でTシャツを作ったり、 ビールやワインのラベルを描いたこともあるけれど、今回のコラボが一番大きなプロジェクトだね。小さい頃からアーティストになりたいと思っていて、今回のコラボはその目標のリストにはなかったけれど、アーティスト史上一番のイベントになったよ。このコラボ商品が発売される頃には、日本で個展を開きたいね。

CELINE 2020年メンズサマーコレクションの全ルックは下記よりチェック。