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Where the runway meets the street

ニューヨークを拠点に活動する現代アーティスト、トム・サックス(Tom Sachs)がNike(ナイキ)と組み、4月27日(土)から順次発売する新作コレクションの中でも、ウェストパックのような見た目から「変身」するポンチョ「ナイキ×トム・サックス ポンチョ」は、4年間にわたる数々のテストと改善を繰り返し完成した「力作」だ。

ポンチョは一見、ウェストパックにも見えるが、フロント部分の「安全ボタン」を解除して、色が付いたコードを引くと、雨風を遮るポンチョがパラシュートのように開く仕組みになっている。開かれたポンチョを前から後ろに向けて被り、脇のスナップを止めれば、悪天候の中でもより安心だ。詳細はこちらのムービーをチェックしてもらうと分かるだろう。

変形するアパレルを考えるデザインチャレンジの結果、2015年に考案されたこの変形ポンチョは、Nikeのスペシャル・アパレル・プロジェクトに関わるシニアデザインディレクター、ジャレット・レイノルズなどのデザイナーたちが製品化に取り組み始めた。

レイノルズが「最初の試作品には、完全に切り離せるジッパーを採用しました。素早くポンチョを着るために一瞬で力強く大きく開けるようになりましたが、ジッパーの配置にとても苦戦しました」と語るように、細かいディテールに富んだプロトタイプにもかかわらず、その後2年間で8~9個のコンセプトが生まれたものの、各コンセプトの実用性を生かせず、「ポンチョとして完璧ではなかった」という。

そこで、レイノルズがポンチョのビデオを見せたのが、当時同社とコラボレーションしていたサックスだった。「トム・サックスが『これは何とかしないといけない』と言ってくれました。トムとそのチームは問題解決に優れ、我々とは違う視点で物事を見ることができます。まさに違う視点が必要だったのでとても嬉しかったです」

プロジェクトは、アーティストとのコラボレーションにより、独創的なものへと発展していく。サックスはインタビューの中で、このポンチョが手探りの試みから「ナイキクラフト」プロジェクトへと発展した経緯を語っている。

プロダクツ製作の経緯について、「まず『ナイキクラフト』は単なるブランドではなく、透明性とものづくりの根拠に基づいてプロダクトを作るという理念でアプローチされている」と前置きした上で、「ジャレットからポンチョのアイデアと問題点を教えてもらったとき、ジャレットは複雑すぎると言っていました。そこで私は『大丈夫。動画を作ってみます』と伝えました」と、動画制作を通してポンチョを閉じる仕組みや収納する方法をシンプルにしていったと説明。

続けて、「ドラッグレース(約402メートルの直線走行を競うモータースポーツ)から着想を得たパラシュートが開く構造や、ウエストバッグなどのアイデアを取り入れていきました」と、プロダクトが完成に近づいていった過程を明かす。

ドラッグレースにたどり着いた理由については「最初の試作品を見たとき、マジックのトリックを連想しました。その後、偶然ドラッグスター(ドラッグレース専用車両)のパラシュートが開く構造とパラシュートを折りたたむところを見て、我々が抱えているポンチョを開く複雑な構造についての問題が他の業界では解消されていることを知りました」とサックス。「高速から低速へスピードの変化を可能にするこのメカニズムは、ポンチョにも応用できると考えたのです」

コレクションの製作過程に多くの人が関わる中、今回のポンチョは特にベトナムを強調しているのも特徴だ。「今回協力したベトナムの工場は、これまで協力してきた工場の中でも特に優れていると感じました。単純に言われたことだけをやるのではないという、まさに真のコラボレーションに必要な要素を持っていたのです」とスタッフを称え、「透明性という観点からも、ものづくりに携わる人について伝えることも重要だと考えています。様々な要素を取り入れてナイキクラフトの商品を仕上げるためには健全な関係性が必要です」とも訴える。ポンチョの機能は、現在特許申請中という。

ポンチョには、「超強力繊維」ダイニーマをはじめ、サックス スタジオで製作されたセラミックビーズなどの素材を採用。フィドロックバックルでウエストバンドの利便性を高め、ポンチョ自体は最小サイズで最大限の範囲をカバーする防水性と通気性に優れた3層構造の生地を取り入れた。ポンチョの背面には生産地ベトナムの名が堂々とプリントされている。

サックスは「このコレクションには、素材とものづくりの透明性に対する我々の考え方がうまく反映され、作品に携われたことを誇りに思っています。私がスタジオで作る他の作品と同じ価値観、品格があります」と話している。

ナイキ×トム・サックス ポンチョは、「東京オペラシティ アートギャラリー」で開催されるサックスの展覧会「ティーセレモニー」に合わせて、4月27日から、NIKELAB MA5、DSM GINZAで販売予定。

 

 

ナイキ×トム・サックス ポンチョ(54,000円、税込)

 

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