アンドリュー・リチャードソンと空山基のエロティシズム

2022年2月11日、Richardson(リチャードソン)が、アーティスト空山基とのコラボレーションプロジェクトをローンチ。人間的であり挑発的、そして極めて性的なクリエイションを続ける両者は、必然的にいつか引き合うようになっていたのかもしれない。超高度な写実力と唯一無二の作風を持ち、40年以上アーティストとして第一線で活躍する空山基を、アンドリュー・リチャードソン(Andrew Richardson)が敬愛するのは、ごく自然であり合点がいく。そしてそれ故両者のコラボレーションも、期待通り際限なく挑発的でエロティックな「作品」となった。

コラボレーションの目玉は、世界限定5点の銀色に輝くペニス形のインセンスバーナー。これに加えて、Tシャツやスウェットアイテムが発売されている。生憎のパンデミックにより発売時に渡米も来日も叶わなかったが、この大胆なコラボレーションについての想いを軸に、両者に7つの問に答えてもらうことに。リチャードソン氏からのリスペクトに満ちた回答と、空山氏の快活且つ実直で、少し笑える回答のコントラストから、二人の信頼関係が垣間見えた。

—— 今回のプロジェクトが実現したきっかけを教えてください。
空山:アンドリューからの押し売り企画です(笑)。
リチャードソン:僕は以前から空山さんの大ファンでした。彼がMuseum of Sexで展覧会を行うと聞いたとき、何か一緒にできる良い機会なんじゃないかと思って提案したんです。

—— 今回エディション5で制作されたインセンスバーナーは、ギュスターヴ・クールベの「世界の起源」という1866年の作品へのオマージュと伺いましたが、このインセンスバーナー作品の背景などについて、より詳しく教えてください。
リチャードソン:インセンスバーナーは、Richardsonを始めた頃に僕らが作った最初の製品のひとつです。何年も前に買ったチベットのリンガム(ヒンドゥー教のシヴァの男根の象徴)とニンフェンブルクの灰皿がベースになっています。空山さんがこの発想を気に入ってくれたことは僕たちにとって光栄なことで、僕らと空山さんの発想の素晴らしい組み合わせになったと思います。
空山:アンドリューから、変なチンコ型のインセンスバーナーが急に届いたんですけど、クオリティーが低いから、わたしが作り直してあげたんです(笑)。「世紀の起源」には、”種”も必要だという明示です。クールベもきっと描きたかったはずです。

—— 作品制作やコラボレーションをする上でのご自身のルールや大切にしている考えなどを教えてください。
空山:ある程度のところで妥協することです。そうしないと人と仕事はできませんから。こう見えても、わたしはちゃんと社会性があるんです。
リチャードソン:僕たちは常に、共に仕事をする人やブランドが大切にしている価値観とつながることを心がけています。どんな人間関係にも、敬意とコミュニケーション大切なように。

—— ご自身にとってエロティシズムとは?
リチャードソン:Excitement.
空山:曲線、光、反射、透明感。

—— パンデミック中、毎日どんな風に過ごされていますか?また、パンデミックが収束したらやりたいことは何ですか?
空山:毎日スタジオにこもって絵を描いてましたよ。誰にも会わずにずっと制作をしていると、集中しすぎてふと怖くなるときがあるので、やはり自由に出歩いて人と会って話せることが大事だと再認識しました。
リチャードソン:パンデミックが終わったら、すぐに最初の飛行機で東京に向かいたいです。

—— 日本の性への嗜好や考え方と欧米のそれはどのように違うと思いますか?
空山:日本人は湿度を愉しむ文化なので、直球勝負の欧米のものとは似て非なるものです。
リチャードソン:西洋だとユダヤ教・キリスト教の道徳に基づく罪の重荷があるので、タブーな発想はより刺激的ですが、その道徳規範の中だけにとらわれない人たちにとっては、とても難しいものでもあります。僕は日本人じゃないので日本について語るのは難しいけれど、日本はそういうユダヤ・キリスト教の規範に縛られることが少なく、日本人の視点はより人間的で、人間の想像力に基づいたものであるように感じます。

—— 空山さんとアンドリューさんは、お互いををどんな人物だと感じますか?また最後にお互いへのメッセージもお願いします。
リチャードソン:空山基という人はまさにGOAT(Greatest of all time)です。パンデミックが終わってまたお会いできるのが楽しみです!
空山:私からするとまだコンサバだけど、好きなものをはっきりと主張するあたりは、わたしと同じような生き物だと思いますよ。これからも、刺されないように、わたしのためにも頑張ってください(笑)。

Richardson x Sorayama のアパレルコレクションはRichardson TokyoとRichardson公式オンラインサイトで発売中。
RICHARDSON TOKYO
東京都渋谷区神宮前4-27-6
Tel: 03-6455-5885
インスセンスバーナーについてはNANZUKA UNDERGROUNDコンタクトページよりお問い合わせください。
Hajime Sorayama Official Website
- Photographer: Yuji Kaneko
- Interview: Saori Ohara