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日本の音楽シーンを牽引するバンド、「King Gnu(キングヌー)」のフロントマンとして活躍するヴォーカリスト、井口理。ロックサウンドにシアトリカルな物語性を与える稀有な歌声を武器に、躍進のきっかけを生み出したキーマンだ。

King Gnu前身バンド、Srv. Vinci時代、ライブハウスには両手で数えきれるオーディエンスしかいない日があった。しかし、スキルフルな才能集団であったバンドは、井口のハイトーンヴォイスを武器に自由度の高いフロントマンとしての可能性を見いだし、日本のロック / ポップミュージックをアップデートすることを目的に進化してきた。気がつけば、今年のフジロックフェスティバルではKing Gnuに改名した2017年の初出演から、たった4年間でグリーン・ステージのヘッドライナーへとたどり着いた。異例のスピードである。

井口のユニークなポイントは、学生時代から歌と俳優をパラレルな表現として続けてきたことだろう。レギュラーのラジオ番組出演で確立したユニークなキャラクター性からは脱皮し、オーディエンスを鼓舞するロックスター像へ成長することで唯一無二のポジションを確立したことにも着目すべきだ。

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——なぜ、井口さんは歌と俳優の両面に魅せられたのでしょうか?

家庭環境として親が好きなクラシックが家の中で流れていたんです。音楽に触れるのは自然なことでした。それに映画をよく観る家だったんです。4人兄弟、6人家族だったんですけど、みんなで食卓を囲みながら近所のレンタルビデオ屋さんで借りてきて。僕以外は、小さな頃から地元の市民劇団に所属していました。なんとなく、兄弟がお芝居をやっているのを観ていたので自然なことだったんですよ。

——井口さんの原点ですね。

大学に入るまで、僕は役者をやっていませんでした。でも、どこかでやりたいなという気持ちはあって。バンドをやり始めたのも大学2年の時で。その時期に、学校で学んでいたクラシックが自分に向いていないなって考えが浮かんで。周りもうまい奴らが多いし。やっていけないかなと思った矢先、他のことにも手を伸ばしてみようと思った延長線上にお芝居やバンドがあって。20歳ぐらいの時に道に迷っていて、手を出したり足を突っ込んだりしていた同時期でした。バンドなのか俳優なのか、はたまたミュージカルなのか。今後もやっていけたらいいなという選択肢だったんです。

——学生時代、可能性が未知数なままに、自分という人間のあり方を確立するのは難しいと思います。悩んで動けなくなってしまう人も多い中、なぜ井口さんは踏み出せたのでしょうか?

たぶん、諦めたからかな。「じゃあどうする?」という気持ちになって。いい意味で追い込まれてたんですよ。いろいろやらないといけないなって。アイデンティティ探しですよね。自分の強みとは?どうしたらこの道で一流としてやっていけるんだろうって。そんなプレッシャーがなかったら逆に腐っていたかもしれません。

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——両親の影響は大きかった?

歌が好きな両親なんですよ。この間、やっと馴れ初めを聞いたんですけど。父親と母親はいま70歳と65歳なんですけど、当時フォーク世代でニューミュージックが流行っていて。田舎にもフォーク連合というコミュニティーがあって、その歌の場で出会ったらしいんですよ。音楽が本業ではなかったんですけど、歌が好きなふたりですよね。

——へえ。そして4人兄弟の末っ子だったと。となると、兄弟からのインプットも受けますよね。

そうですね。末っ子だったことは大きいですよね。完全に兄弟の背中を追いかけていたからいまがあると思っているので。一番上が姉ちゃんで、あとは男なんですけど。姉は吹奏楽でトランペット吹いていて。その下は本気で役者目指した時期もありましたし。3番目は声楽を続けていて。努力している姿を見てきたのは大きかったですね。ああ、こうやって自分も続けていけたらいいなって理想像だったんで。

——King Gnuでも末っ子感を、井口さんは漂わせていますよね。

あはは。生粋の末っ子気質だと思いますね。上に3人もいますから。

——常田さんも言っていましたが、井口さんはムードメーカーとして、バンドを回していく上で大事な役回りでもありますよね。

めちゃくちゃ人の顔色を伺うタイプに育っちゃったんで。それも別に嫌ではないし、みたいな。

——それでいうとオールナイトニッポンのラジオ番組とか、面白かったんですけど期待に応えすぎてしまったりとか。

ちょっとね。ぶっ壊れちゃったんですけどね、気持ちがしんどくなったり。

——歌と俳優って、ある種作品を演じる立場として共通項がありますよね。

そうかもね。

——兄弟以外で、影響を受けた方なんていましたか?

なんだろうなあ……。ぱっと出てこないけど、あ、クリント・イーストウッドは親兄弟がどっちも好きで。家でよく流れていて。これは前に、雑誌の対談で荒木飛呂彦さんと話したんですけど、立っているだけで様になる人はかっこいいよねって。荒木先生はそれがクリント・イーストウッドだって言っていて。

——ジョジョ立ちならぬ、クリント・イーストウッドだったんだ。

あはは。生き方だったり、その人自身からにじみ出てくるものっていいですよね。

——井口さんも、エロスというかにじみ出てくるものがありますよね。

ありがたいな。1%ぐらいはクリント・イーストウッドに近づけたかな(苦笑)。

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——そして、今号のテーマが「責任」なんです。政治やオリンピックなど、「責任」について問われること、語られることが多い時代となりました。井口さんが現在立ち向かわれているヴォーカリストと俳優の表現は、「やりきる」という「責任力」がとても大事なクリエイティブだと思います。しかも、井口さんはオーディエンスの注目を一手に集めるフロントマン。多くの人に声を届けられる表現者としての「責任」をどのように考えていますか?

責任が自分の外にあるのは怖いですよね。ライブで何かをやりきったりするのは、自分に対して持っている責任というか。これは説明が難しいんですけど……。なんか、自分を裏切ることが嫌なんです。手を抜いていたら自分がつまらない人間になるじゃないですか?そんな意味での責任感というか。誰かに対しての責任ではないんです。自分が面白くいないといけないよなとか。それは自分が飽きちゃうからだし。この仕事をやっていく上で大切なことだと思っているんですよ。自分を楽しませられなかったら終わりだから。たぶん、そうなったら辞めちゃうだろうし。僕は誰かに向けてとか、大衆に向けてとか、外側に向けての責任は持っていなくて。むしろ、バンドメンバーを困らせたらまずいなとは思いますけど。世間的な責任は持ちたくないですよね。

——ほんと嫌な世の中になったなあと思いますよね。

ホントそうっすよね。人を糾弾できるほどの責任を持っているのかって、文句言っている人を見ると思うし。

——糾弾してもいいのは、本当に関係性ある近しい周りだけだと思います。

そうだよね。SNSが普及した世の中になって、変に全部つながっていると誤解してしまっているんでしょうね。自分と世間の境目がなくなっているというか。すごく悪い意味でつながっているんだなって。

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——そうですよね。ちなみに、井口さんって、日本のポップ・ミュージックではどんな表現者が好きですか?

僕が洋楽を聴かなかったのは歌詞が好きだからなんでしょうね。歌謡曲を聴いたり、日本語が持つパワーってありますよね。僕は他の言語が分からないのでなんとも言えないですけどね。

——それって、King Gnuが向かってきた方向性と一致しますよね。ちなみに表現者だったら七尾旅人の影響は大きい?

すごいですよね。初期のアルバムから考えると、歌い方も音楽性も時代性も兼ね備えて変わってきている。そして旅人さんの人間的な繊細さや優しさが音楽にあらわれている。

——井口さんは自分で歌詞を書いたり曲をつくったり、舞台の脚本を書いたり、映画を監督してみたりなんて思いは芽生えたりしましたか?

あああ、クリエイティブ側ね。まだ湧いてこないかな。ちょっと書きたくなっている自分もいるんですけど、もう少し待ってみようかな。

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——井口さんにとって、東京藝術大学という学びの場は、今から振り返るとどんな存在でしたか?

う〜ん、大学の4年間って一番挫折した時期だったんですよ。才能ある奴なんて山ほどいたし。でもやっぱり鏡というか、自分を見れた4年間だったのかな。学生生活がなかったら、何も顧みずというか、「人の振り見て我が振り直せ」というか。俺、一浪してるんですよ。1年浪人するのが嫌でギター買って上京しようかと思った瞬間もあったんです。

——その頃から葛藤があったんですね。

あったんですよ。でもそれをしないでよかったなって。学校にはライバルと思える存在もいたし。こいつを超えたいなっていう存在がいっぱいいたのはよかった。大学に行ったおかげで、クラシックのアプローチはルーツとして入っているし。いまの自分の身になっているなって思いますね。

——King Gnuの個性を司るオリジナリティーとして大きいですよね。

うん、常田(大希)もやっぱりクラシックなんですよ。ミレパ(THE MILLENNIUM PARADE)とか聴いても、「FAMILIA」とかどこかにクラシックの要素が入っていて、進行とかね。

——そう言えば、King Gnuの前身バンド、Srv. Vinciへ藝大の学祭で常田さんに誘われた際、どんな印象を持ちましたか?

最初はコーラスでサポート的な位置だったんですよ。ティグラン・ハマシアンというジャズピアニストがいて、アルメニアだったかな。彼のバンドに女性のサポートコーラスがいて、割とそれに近かったかな。

——当時から常田さんは、アカデミックな要素がありつつもストリートカルチャーを織り交ぜごった煮感。まさにミクスチャーセンスがありましたもんね。

そうですね。もともとあいつ(常田)とは地元も一緒だったし。中学ぐらいで出会いましたけど、どこか特別というか、何かが違うなって思っていました。物の考え方もすごいし。なので、声をかけてもらえて嬉しかったです。

——結果的に、振り返ってみるとKing Gnuは井口さんが加入したことでオーバーグラウンドでの成功が加速しました。

分からないですけどね、あはは。そもそもこんな風に売れるとは思っていなかったんですよ。ベースの新井和輝と板橋の家に住み始めた頃だったかな。「おれら大丈夫かな?」ってあいつに話したことがあって、2DKの真ん中の5畳ぐらいの部屋でこたつに入りながら。たしか、バンド始めて2年ぐらいだったかな。そうしたら「絶対大丈夫だよ!」って。「このバンドはちゃんと売れるよ」って言ってくれた。もちろん「かっこいいことやっているな」って気持ちはあったんですけどね。どこかまだ信じきれなかったからこそ頑張れたと思うし。割と泥臭くというか、宣伝の仕方とってもいろんなことをやってきましたから。「バンドが売れるためには!」って、姿勢として毎日考え抜いてきたことがよかったのでしょうね。

——King Gnuは、現在進行形でありながらも、ある種到達点にたどり着いたと思いますが、役者としての井口さんはどんなことをやっていきたいなどイメージはありますか?

経験も浅いしあれですけど、お芝居をやっている自分は未熟だなと思っていて。役者を極めたいというより触れていたい、ずっと側にいたいという思いが強いかな。

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——そしてKing Gnu、ひさびさの新曲「BOY」がリリースされるそうですね。

テレビアニメ『王様ランキング』のオープニングテーマですね。元気系なナンバーです。アルバム『CEREMONY』のレコーディングはとにかく時間が足らなかったので、その時と比べると心機一転というか遊び心を入れられる余裕が生まれていますね。従来のKing Gnuらしさから少しはみ出た要素があるかな。

——よりクリエイティブな工程を楽しめるようになったと。

すごく良いサイクルかな。と言いつつも、以前のように常田が忙しくなってきているので心配はしていますが。まあ進んだり休んだりをこれから先繰り返していくんだろうなって思っています。

インタビュー全文は、こちらから。

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