マチュー・ブレイジーにかかれば、足もとさえ話題になる。
アーティスティックディレクターのマチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)が、CHANEL(シャネル)のフットウェアデザインチームにヒールの新たなアイデアを伝えたとき、それが比喩ではないと誰が思っただろう? CHANELの2026年クルーズコレクションのランウェイショーでは、極限まで削ぎ落とされたミニマルなサンダルを履いたモデル達が、砂の “ランウェイ” を歩いた。卓越した技巧で知られるメゾンであるCHANELは、足もとにおいてもまた、その巧みさを証明してみせた。
洗練されたエレガンスで知られるCHANELにとって、このハーフスリッパは、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)によるadidas(アディダス)とのコラボ以来、最も大胆なフットウェアかもしれない。とはいえ、これはひとつの強さでもある。ブレイジー率いるCHANELは、これまで独創的な会場演出で話題を呼んできたが、このハーフサンダルは、プロダクトそのものでも主張できることを示している。
このほぼ何もないような一足は、極限まで削ぎ落とされたフットウェアの到達点であり、Vibram(ヴィブラム)のFiveFingersブームからBALENCIAGA(バレンシアガ)のZeroサンダル、そしてCHANELの今回のシューズへと続く、“トゥシューズ革命” の頂点にある。もちろん、常軌を逸している。だが、それがポイントだ。なんせ靴の3分の1ほどしかないデザインなのだから。こうしたものを買うのは、カフタンを山ほど持つような、超富裕層の女性達だけだろう。とはいえ、この珍しさは否定できない。
CHANELのショーは公式スケジュール外で行われたため、ほかのブランドに注目を奪われることがなかった。いずれにせよ、バズは狙って作れるものではない。今回のサンダルをめぐる盛り上がりは、完全に自然発生的なものだった。繰り返すが、あれは靴の3分の1だ。そう考えると、ニューヨークの地下鉄を舞台にしたショーの後にこれを発表したのも納得がいく。
とはいえ、彼が自分のやっていることをよく理解しているのは明らかだ。ブレイジーのデビューコレクションに登場したCHARVETのシャツは、見た目と中身の両方を備えたラグジュアリーを見る確かな目がよく表れていて、実際にハマっていた。それらは、Lystのデータに基づいてファッション界でホットなブランドやアイテムを発表する四半期ごとのランキング「Lyst Index」において、CHANELのプレタポルテとして初めて、確かな存在感を示した。
そして、シャツがブレイジーのプロダクトを成立させる力を物語っていたとすれば、このフルトゥシューズは、クルーズショーのような話題になりにくいところですら注目を集めてしまう彼の手腕を示している。そもそも “クルーズ” がどの季節を指すのか、誰もはっきり分かっていない。それでも、こうして話題になっている。
タイミングとしては完璧だった。CHANELの2026年クルーズショーの翌日、Lystは最新の「Lyst Index」を発表し、ブレイジーの確かなヴィジョンによって、CHANELを世界で最も注目度の高いラグジュアリーブランドと位置づけた。
まさにそれを物語っている。ブレイジーににかかれば、足もとさえ話題にしてしまうのだ。
- Photography: ©︎ CHANEL
- Words: Jake Silbert