クルーズコレクションが発表されるシーズンとなった。

そもそもクルーズコレクションというのは、1~2月の寒い時期に温暖な地域で休暇を過ごすブルジョワ富裕層に向けたコレクションであり、寒いならヒートテックやらをレイヤードで着込めばいい。という、こちら庶民と暖のとり方の概念とはそもそも日本とブラジルくらいかけ離れたもので、ただでさえ現実離れしたメゾンが、より現実離れした気分に駆られるコレクション。

あたたかさに浮かれる金持ちを見せつけられる様は、かつてのハワイで正月を過ごす芸能人を直撃していたワイドショーを思い出し、神田うの氏がサッチーこと野村沙知代氏に「あんたちょっと叩かせなさいよ」という一言と共にハワイのCHANEL(シャネル)の店前でビンタを食らうというゴシップを呼び起こしつつ、今回は個人的に素敵さにいい意味でこちらも頬を叩かれたCHANELのクルーズコレクション。前記事でもご紹介されているが私からもぜひご紹介したい。

ガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)が初のクチュールハウスを開いた仏・バスク地方のビアリッツで開催され、ディレクターのマチューブレイジー(Matthieu Blazy)も子供の頃の夏に海辺によく訪れていた場所らしく、そこからなんだかロマンティック。

自分がマチューでよく訪れていた海辺を舞台とするならば、濁って茶ばんだ海に同じくらい日焼けにより茶ばんだ肌をした男が、チャラついた音楽をBGMに泥酔しながらナンパに勤み、トビに焼きそばを奪われる湘南で行わざる負えないところである。

それにしてもマチューはBOTTEGA VANETA(ボッテガ・ヴェネタ)にいた時代からも思っていたのだが、個人的に夏物になると確変入った無双状態。

BOTTEGA VENETAのときはイワシの形状を持ち手につけたサーディンバッグや漁をイメージしたデザインなどを発表していたが、CHANELでもマチューの楽しくやわらかな遊び心が詰まっていて、ヒトデや貝殻、イソギンチャクなどをモチーフにしたアクセサリーや刺繍など、もう本当にパチンコの海物語よりも海が大フィーバー、大当たり。

国語で習ったスイミーを思い出してしまうかわいさで溺れてしまいそうなバッグ達。

バッグだけでなく服も勿論、かわいさで溺れてしまう具合となっており。

絵画のようなハーフボタントップ。こちら刺繍なのだろうか。粋が過ぎる。

例によって母なるジャケットシリーズもうまくアップデートされており。

ヒトデを纏った嘉門達夫のようなちょっと危なげなバランス感もプレイフルで好きであり。

この貝殻っぽいボタンの具合など、やはり何ともこちらの心くすぐる憎いディテールを入れてくるのがマチュー。本当に本当に君に夢中。と、完全に溺れてしまったクルーズコレクションである。

庶民のこちらはバカンスに行く予定もなく、馬鹿の巣となる自宅で今年の冬もいかにレイヤードで防寒をするか、どうして人類には冬眠という権限が与えられないのかを、暖房をケチって震えながら不毛に考えを巡らせることになるのだが、もしかしたら現実離れなクルーズコレクションを手に取ったらマッチ売りの少女のようにあたたかな幻想に包まれるのかもしれない。

「目を覚ませ」と幻想で現れた野村沙知代氏にビンタを食らう可能性もあるのだが。