ファッション界の “ラブブ化” 現象は、そろそろ落ち着き始めているのかもしれない。だが、煌びやかな小物やぬいぐるみのようなキャラクターで自分らしさを出したいという欲望は、いまだ健在だ。このトレンドはここ数年で爆発的に広がったが、街に出ればいまなお、バッグにじゃらじゃらと付けられたチャームや、やたら大ぶりなキーチェーン、そして身に着ける人の “イケてる感じ” を演出する無数のピンやパッチを目にする。

そんな “じゃらづけ好き” 達を後押しするかのように、COACH(コーチ)は今回も抜群のアクセサリーセンスを見せつけた。BRAIN DEAD(ブレインデッド)とタッグを組んだ今回のコレクションでは、レトロなドレスや限定Tシャツ、フットウェア、レザーグッズ(なんといってもCOACHなのだから)、そして大量のチャームまで、どこか奇妙で遊び心のあるムードのメンズ&ウィメンズコレクションを展開している。

このコレクションは、ニューヨークのミートパッキング地区で開催されたローンチパーティーの最中、80秒間のサプライズランウェイによって披露された。モデル達は観客の間を自然にすり抜けるように歩いた。ランウェイに登場したアイテムは、まさにZ世代の空気感を的確に捉えていた。Oリングを大量に配したスエードジャケットには、半ダースものキーチェーンチャームが揺れ、アニメ風のマスコットキャラクター(Kachi、Xerx、Zilly)やロゴマニア柄、Tシャツやタンクトップに重ねた刺繍、バイアスカットのギンガムスカート、さらには東京のヴィンテージスポーツウェアを思わせるラグビーポロやメッシュジャージなどが登場した。

ローンチイベントそのものも、両ブランドの世界観をそのまま現実に持ち込んだような空間だった。会場にはカーニバルのアトラクションや景品ゲーム、綿あめの屋台が並び、無数のトリンケットや装飾によって、架空の遊園地が現実となったような、一夜限りの空間が作り上げられていた。「かなり早い段階で、カイル(Kyle)が僕達のためにBRAIN DEADの世界を作ってくれたんです。そして、それがすぐにクリエイティブの扉を開いてくれたように感じました」と、COACHのクリエイティブディレクター、スチュアート・ヴィヴァース(Stuart Vevers)は語る。「僕達は単にプロダクトをデザインしていたわけではなく、一緒にひとつの世界観を作り上げていたんです。難しかったのは、それが紛れもなくCOACHらしくありながら、同時にBRAIN DEADのスピリットやエネルギーも全面的に受け入れたものにする、そのバランスを見つけることでした」。

BRAIN DEADは着想源として、1990年代に巻き起こった1970年代ファッションのリバイバルを深く掘り下げた。そこから生まれたのが、ベビードールドレスやフレアブルージーンズ、そして驚くほど美しいスニーカーとクロッグのハイブリッドシューズなどだ。さらにその上には、東京のストリートスタイルやスーベニアカルチャー、カートゥーン風グッズの要素が幾重にも重ねられ、あらゆるところに散りばめられている。このコレクションに登場するほぼ全てのバッグやジャケット、シャツ、ショーツには、そうした架空のグッズが何らかの形でびっしりと施されている。

「Tシャツにグラフィックを載せるという行為には、バンドや映画、アートなど、自分が好きなものや趣味嗜好を表現する意味があったんです」と、Brain Dead共同創設者のカイル・ウン(Kyle Ng)は語る。「チャームは、プリントや刺繍よりも立体感のあるグラフィック表現になり得ると感じました」。

そしてこのコレクションは、現代のY2K熱をさらに加速させる。かぎ針編みのクリーチャーやパッチ、ピン、光沢のあるプラスチックチャームからは、ホログラム仕様のトレーディングカードやカプセルトイ、ラインストーンで装飾されたガラケーといった記憶が呼び起こされる。ここにあるのは、単なる創造的自由へのノスタルジーだけではない。モノを集めたり、夢中になったりする感覚そのものへの懐かしさでもあり、それこそがいまのカルチャーを形づくる大きな要素にもなっている。

「僕はテーマパークのスーベニアカップを集めているんです」と、ウンは付け加える。「プラスチック製のスーベニアカップを手に入れることに人々が熱狂するような世界には、すごく美しい何かがあると思うんです。だから僕達も、自分達なりのテーマパークキャラクターを作って、その周りにひとつの世界を築きたいと考えました」。

ウンによるリバイバルとCOACHが持つ伝統的なレザーコードが交差したことで生まれたのは、まるで『FRUiTS』のページからそのまま飛び出してきたかのような、奇抜で雑多なカルチャーのパッチワークだ。受け継がれていく価値のあるものを作るという思想のもと築かれてきたヘリテージブランドにとって、Z世代流の “じゃらづけする楽しさ” に寄り添うことは、どこか理にかなっているようにも思える。受け継がれるのは必ずしも家宝ではなく、積み重ねられたチャームなのだ。

「このコレクションは、パーソナライズやユーモア、キャラクター性、自発性を通して、人それぞれが自分なりに楽しめる余白を作るようなものになっていきました」と、ヴィヴァースは付け加える。「BRAIN DEADは、元々そういう世界観を自然に体現しているブランドなんです。そして、そのエネルギーをCOACHに持ち込むことは、いまの自分のクリエイティブともすごく自然に重なりました」。

コラボレーションの中でも、いくつかのアイテムは特に目を惹いた。ピンクのぬいぐるみベアバッグやプラスチックチャームで装飾された「タビー」、レザーストラップ付きのカートゥーン型押しランチボックス、そしてBRAIN DEADロゴヘッドバッグなどだ。ショーの主役をさらったのは、間違いなくバッグとそこに付けられた小物類だった。それは両ブランドの持ち味を踏まえれば、当然の結果だろう。

カルチャーは既に、“じゃらづけ” カルチャーから次の段階へ移ろうとしているようにも見える。だがCOACHとBRAIN DEADは、それでもなお、あらゆるものの自分らしさを表現する楽しさを改めて証明してみせた。