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Where the runway meets the street

最先端の技術やテクノロジーを駆使し、常に革新的なプロダクトを追い求め、生み出してきた「ナイキラボ(NIKELAB)」。今回、現在のファッションシーンにおいて最重要ブランドの一つとなった「アリクス(ALYX)」のクリエイティブ・ディレクター、「マシュー・ウィリアムズ(Matthew M Willimas)」とのコラボレーションを発表した。これまで「フラグメント デザイン(fragment design)」や「マッキントッシュ(Makintosh)」との協業、先日幕を閉じたばかりのパリメンズコレクションではブランド名を「1017-ALYX-9SM」に変更して自身初のランウェイショーを開催するなど、その勢いは増すばかりである。そんな多忙を極めるなか、このスペシャルコレクションの日本初お披露目とエクスクルーシブなトレーニングセッションのために、マシューが来日。そのセッションの様子や本プロジェクトについてインタビューした内容をレポートする。

会場に選ばれたのはインダストリアルな雰囲気が漂う寺田倉庫。スペースに入りまず目に入ったのが、「アリクス 」でもショートフィルムなどを手がける「ニック・ナイト(Nick Knight)」が撮りおろした力強いヴィジュアルだ。さらに奥へと進むとメンズ・ウィメンズの両コレクションが立ち並ぶ。メンズはTシャツやショーツ、ウィンドブレーカー風のトレーニングジャケット、ウィメンズはブラトップやトラウザーを中心に構成されている。また、もう一つの重要なキーとなっているのが、ベルトやストラップを使用したアクセサリーだ。保湿と保温性に優れたパッカブル仕様のバラクラバ、ロゴが大胆に配されたディタッチブルタオルやダブルレイヤーソックス、着用してウェアの一部となるコインケースなど遊び心と機能面、そして様々なシチュエーションに対応可能なアイテムが揃う。ウェアとアクセサリー、二つがお互いに作用することによりこのコレクションは完成する。

そして、コレクションを紹介するうえで欠かせないのが、去年発表された『A.A.E.1.0』コレクションのTシャツ技術の採用だ。これは未来を見据えてデザインされたもので、高度な体温調節や生体力学にこだわり、従来のガーメントのパターン作りを見直すことにつながるという。マシューはこれに関し、次のようにコメントをしている。「コンピューターによるデザインやデータから新たなデザインの未来が生まれることは間違いありません。今までとは異なる物の見方や、これまでできなかったことも可能になり、これを基に新しい視点からデザインができるようになります。データと感情の両方の視点から行う作業は大変おもしろいです」。

また次のようにも話している。「データをうまく解釈するためには、やはり人間の介在が必要。プロダクトにどのような意図があるかを人の感情に訴えられるよう、琴線に触れるようにストーリーを伝えるということが私の役割です」。

確かに実際一つ一つのピースを見ても、布を切りっぱなしにしたようなディテール、あえて残したステッチがアクセントとなり、コレクションをさらに引き立てている。またそれらのデザインをまとったウェアからは、全てを機械に頼るのではなく作り手の温かさや人間味を感じた。

まさに「ナイキラボ」の最先端技術とマシューの意匠がいたるところに反映された、ハイブリッドコレクションと言えるだろう。なお今後の予定はまだ明かされていないものの、もし今コラボレーションが引き続き行われるならば、今回はラインナップしなかったパリにてお目見えしたフットウェアの登場にも期待したい。

以下は、デザイナーのマシューとのインタビュー内容。

ーーまず最初に、パリでの初のランウェイショーの開催、「ナイキラボ」とのコレクションローンチおめでとうございます。このプロジェクトはどのように、そしていつ頃から始まったのでしょうか?

「ありがとう。実はどちらかが先にコンタクトを取ったとかではなく、間に共通の友人がいたんだ。その人の紹介で僕らの関係は始まり、このコラボレーションはとても自然な流れで始まったね。『ナイキ』はとても大きな規模のブランドで、自分のブランドのコレクションより時間がかかったね。だから実際には、1年半前ぐらいからすでに動きだしていたんだ」。

ーー本コレクションのインスピレーションを教えてください。

「僕がニューヨークに住んでいた頃、都市部だとジムに行く途中で友達や仕事仲間に偶然会うことが、度々あったんだ。だから家からジムまで、そしてまた家までといったように一貫して着用できるかつ、おしゃれなトレーニングウェアを作ろうと考えたのが最初のアイディアかな。例えばこの靴みたいに(パリメンズコレクションにて発表されたフットウェア)、街を歩くときは外側のパーツをつけて、トレーニングのときは外すといったようにね」。

ーー一般的にトレーニングウェアとは機能面を重視するもので、装飾要素は必要ないようにも思えます。そのトレーニングウェアをあえてファッションブランドのデザイナーであるあなたが手がける意義とは何でしょうか? また「ナイキラボ」は何を期待したのだと思いますか?

「まず、『ナイキラボ』は、僕が『アリクス 』でやっていることを気に入ってくれていた。個人的見解では、彼らはアスリートがより良いパフォーマンスを発揮できるようサポートするためのプロダクトをたくさん作っている。だけど、違う見方を持ったデザイナーを起用することにより、これまでにはなかった全く新しいウェアを作ってほしかったのだと思う。さっき言ったような屋内外で着れるものだね。他にも、このコラボレーションを通してデザインに対するアプローチ、クリエイティブに関する新しい何かを得ようともしていたのじゃないかな。この点がこのプロジェクトにおいて、一番貢献できたことだと思う。僕だけでなく、他のデザイナーとコラボレーションすることによって、デザインチーム、『ナイキ』という会社のクリエイティブな点がより良くなっていくと素晴らしいね」。

ーーデザインをする中で何かしらの制約などはありましたか? またどこから着手されたのでしょうか?

「実は特になくて、『ナイキ』はとても自由にさせてくれたよ。ただ『A.A.E. 1.0』というモデルがベースの一つにあって、それらのテクノロジーをどうやってデザインに落とし込むかというところから始まった。そこから発展させていき、自分の好きなように作った結果、このコレクションが生まれたんだ」。

ーー少し話は逸れるのですが、スポーツウェアブランドとファッションブランドとの距離はこれまでになく非常に近い存在にあります。まだその勢いは続いていますが、なぜここまで両者はお互いにとって重要な存在となったのでしょうか?

「正直、分からないね。だけどこのコラボレーションに関して言えば、『アリクス』でなく、あくまで『ナイキラボ』と『マシュー・ウィリアムズ』というデザイナー間のコラボレーションなんだ。普段あまり身近にないテクニカルなファブリックやボディーマップシステムを使うのは楽しかったよ。クリエイティブな業界では、コラボレーションという行為を通じて、また新たなクリエイションが生まれることに意味があるのだと思うよ」。

上記の会話を通して「アリクス 」というブランドではなく、1人のデザイナーとしてこのコラボレーションへ取り組む姿勢がうかがえた。

インタビュー終了後には、著名人をクライアントに抱えるトレーナー「横手 貞一朗」氏を迎え、今回のためだけに組まれたというトレーニングプログラムが開催された。参加者もインフルエンサーの他、現日本ラグビー代表、シュートボクサー「RENA」や次世代を担うアスリートなど豪華な顔触れとなった。光やサウンド効果を駆使した「ナイキラボ」らしいフューチャリスティックな空間を作り出した。最後は参加者全員でデザイナーを囲んでの記念撮影も行われ、なごやかな雰囲気の中この特別なイベントは幕を閉じた。

「ナイキラボ x マシュー・M・ウィリアムズ」コレクションは、7月12日(木)から『NIKE.COM/NIKELAB』、『NIKELAB MA5』、『DSM GINZA』その他一部の販売店で発売が予定されている。

問い合わせ先/ナイキ カスタマーサービス 0120-6453-77
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