style
Where the runway meets the street

Asia Typek / Highsnobiety

例年、年の暮れにこの1年間でトリートファッションシーンに影響を与えた、敬愛すべき人物を紹介している。「Highsnobiety Crowns」は編集部がピックアップした中から、読者投票により勝者が決まる。私たちの分野(ストリートファッション)で力を発揮してきたり、業界に変化をもたらす新風をバックアップする私たちなりの方法だ。昨年同様に、受賞者には「Snarkitecture」と『Highsnobiety』によって製作されたアルミニウムキートロフィーが贈られる。

2つの有名ブランドが共同で商品を開発し、同じコンセプトを抱える時代がやってきた。振り返ってみればファッションのコラボレーションは90年代半ばにはすでにあり、日本のストリートウエアのブランドに受け入れられていた。

しかし現在、コラボレーションはファッションに不可欠な要素になってきた。スニーカーブランドや店舗も、提供する品の幅を広げ、新たな風を吹き込もうと本物’のデザイナーとのコラボ商品に頼っている。また、かつては閉鎖的だったファッションブランドも、そのバーを下げアーティストや音楽家、ほかのデザイナーとコラボすることでブランドの再構築を図っている。

ベストファッションコラボレーションの選出は、読者の投票により決定。では、本誌が選んだ各部門のエディターズチョイスとともに、その結果を見てみよう。

 

2017年のベストファッションコラボレーション

ブロンズ― ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン × ザ・ノース・フェイス

Eva Al Desnudo / Highsnobiety

私たちはブランド名の間に“×”が入るのを見慣れている。「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン(Junya Watanabe Comme des Garçons)」も例外ではない。彼がよくコラボするいくつかのブランドは、「リーバイス®(Levi’s)」や「ペンドルトン(PENDLETON)」のようにブランド力がある。しかし彼がそれらのブランドとタッグを組むということは、ブランドを偉大にしているものの中核を掘り下げ、時代精神と結びつけるということだ。

2017-18年秋冬のジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソンとアウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」とのコラボはヒットした。ワークウエアのスタイルを提案するブランド「カーハート(Carhartt)」や「リーバイス」とのコラボも大きな話題となった。誰もがワークウエアのトレンドの全盛期が終わったと考えているが、ワタナベはその考えをこのコラボでもって覆した。

念頭には、ものづくりにおいての敬意と感謝がある。ワタナベは「ザ・ノース・フェイス」で最も人気のあるバッグの一つをとり、分解し、アウターウエアのパーツに組み立て直す。そしてカジュアルファッションのファンのため、「ザ・ノース・フェイス」のキャニオン・パファー・ジャケットをとり、3色にわけて背中部分にスクリーンプリントのグラフィックを施した。

 

シルバー― ヴェトモン x チャンピオン

Eva Al Desnudo / Highsnobiety

ヴェトモン(ブランド名は文字通りフランス語で“衣服”)と、スポーツウエアメーカーでそのブランド名が“winning”と同類語である「チャンピオン(Champion)」は、2017年最も破壊的で分極化したコラボレーションを発表した。ものに対して圧倒的に割高なことが、アピールポイントの一つだった。それは“ラグジュアリー”とは何か?という疑問を投げかけ、デザイナー「デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)」らしいアジェンダ、つまり先進的なデザインと実利的な素材、そしてハイプライスこそステータスというシンボルを兼ね備えた不思議な感覚を生み出した。

このコラボは問題を提起した。もしあなたが単にチャンピオンのスウェットシャツが欲しいのなら、それでもヴェトモンとのコラボレーションを同様にクールと思うのだろうか。ニューヨーク・ロッチェスター生まれのニットウエアブランド「グランテッド(Granted)」を、例にとってみよう。リバース織りのコラボフーディは、そのままMoMAで購入することができる。しかしそれでは、”オシャレ”という観点からはズレているとの指摘もある。ファッションが民主化するにつれ、どうやってエクスクルーシブなオーラを出して行けばいいのか。

挑戦的なプライスレンジ、数量限定で展開されたヴェトモンとチャンピオンのコラボレーションは、この問題の1つの解答になるのではないだろうか。

 

ゴールド ― シュプリーム x ルイ・ヴィトン

Asia Typek / Highsnobiety

「シュプリーム(Supreme)」と「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」のカプセルコレクションは、ストリートファッション界全体を一新した完璧な例だ。堅苦しさとは対極にあった若く情熱的なブランドが、新たな情熱を実現した。

保守的な人の中には、このコラボレーションをよくないものと捉えている者もいるが、一方では突き抜けるほど素晴らしいと見る人もいる。私たちが知っているように、ストリートウエアは今では、単にストリートのものだけではない。キャットウォークでも、デザイナーが最新のストリートファッションを提案する。クールなTシャツからブランドを立ち上げたいと願っている若者にとって、挑戦への限界はないのだ。

「シュプリーム」は、かつてでは考えられなかったほどのブランド力を確立し、若いマインドや若いブランドの力でハイブランドとのギャップを埋めた。「シュプリーム」が「ルイ・ヴィトン」にデザインを提案して排除されたのは大昔の話ではない。しかし、古いものを消して新しい何かが生まれる現在。それより楽しいものはあるのだろうか。

 

エディターズ・チョイス― ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン × ザ・ノース・フェイス

勝負は「マーティン・ローズ(Martine Rose)」と「ナパピリ(Napapijri)」のコラボレーションと、五分だった。しかし我々は、エディターズ・チョイスを「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン」に贈ることに決めた。どちらも、自身が得意とするユニークな捻りを有名アウトドアブランドにぶつけた。その点で2つのプロジェクトは類似していた。しかし「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン」と「ザ・ノース・フェイス」というコンテンポラリーファッション界の2つのアイコニックなブランドがぶつかることで、ファッションの新たな可能性が開かれた。

ワタナベは錬金術とでもいうべき技術で、スタイルやファブリック、そして製品そのものですら新たな形に再構築することで、長きにわたって高い評価を得ている。とりわけ、今回のコラボでみせた、「ザ・ノース・フェイス」のダッフルバッグをパーカーやヴァーシティージャケットに進化させたのは完璧だった。背中部分にまであるベルトテープの取っ手に至るまで見事に再現されたヴァーシティージャケットは、とても魅力的で、それはまるで私たちが知らぬ間に待ち望んでいたコラボレーションの一つだった。

「マーティン・ローズ(Martine Rose)」に関しては、彼女はどのようにビッグネームのブランドを彼女の世界に取り込み彼女らしく表現できるかを明確に示した。もし間違っていなければ、近いうちに彼女はコラボレーションのショートリストに再び名前があがるはずだ。