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2019年、夏フェスシーンを盛り上げる革命的ロックバンド、サバプロこと「Survive Said The Prophet」が8月21日に新曲『MUKANJYO』をリリースする。ロックのみならずR&Bやソウルミュージック、ヒップホップを掛け合わせ、ジャンルを横断してシーンを塗り替えていく突然変異。メンバー5人に話を伺うことで浮かびあがってきた個性豊かな人間的魅力。いま現在思っていることやクリエイティブ論、自らのオススメ作品について激白してもらった。

——サバプロの洗練されたセンスを持つサウンドに魅了されています。バンド結成のきっかけから教えてください。

Yosh/Vocal(以下、Yosh):2011年にはじめたバンドで。元々はそれぞれ違うバンドをやってたんですけど、音楽に全てを賭けられる連中が集まったのがサバプロですね。この5人になったタイミングから大きく変わりました。ワイドなオーディエンスに触れるきっかけが増えれば増えるほど、自分らの音楽センスも育っていって。今までただのエゴで「No」といっていたことも「Yes」が言えるようになって。その中から生まれた特技が今のサウンドになっていると思います。試すことを恐れないことが、このバンドの強みかな。

Yosh

——日本語詞へのチャレンジもありますもんね。

Yosh:そうですね。もともと自分がこだわっている音楽があって。そんな中、巡り合わせで取り組むことになって。

——日本生まれではあるのですか?

Yosh:はい。両親の仕事柄、周りの友達に外国人が多かったんです。でも、普通に日本の小学校に入って。そこで「日本人でも外国人でもない、なんだコイツ」ってイジメにあって。親が心配して、じゃあインターナショナル・スクールへってなりました。

——そこでの経験はアイデンティティーの確立として大きかったと。

Yosh:それ以前に持っていたものもアイデンティティーの一部だったと思います。そこから成長して、いろんなものを試して経験して。今は、この5人でいることに繋がっていますね。

——Ivanは香港生まれ?

Ivan/Guitar(以下、Ivan):香港生まれですね。もともと香港の路上で、当時の仲間と2人で「KORN(コーン)」や「LINKIN PARK(リンキンパーク)」をアコギでカバーしてました。大学の時に日本に来てアートを勉強してたんです。そのアパレルのバイト先で、Yoshと出会いました。そこからバンドをやるようになって、このバンドではグッズやジャケットのデザインしたりもしてますね。ファッションと音楽って繋がるんですよ。たとえば、アパレルブランドを経営するのとバンド活動は近いものがあると思っています。デザイナーがいれば作曲家もいるし、ブランドのPR担当がいればバンドのプロモーションをする担当もいるし。特にバンド結成して最初の頃はアパレル時代で学んだことをバンドでも実践してました。

Ivan

Yosh:僕は、2年で大学終わらせて日本に帰ってきてバイトしてたタイミングで、Ivanの場合は1年残っていたんだけど「俺たちには大学意味ねぇじゃん!」って気がつくタイミングで。「このまま好きなことをやればいいじゃん!」ってね。メンバーと気持ちを共有して、ひとりひとり個人としてのヴィジョンも生まれて今に至ると。

Tatsuya/Guitar(以下、Tatsuya):一番後にバンドに参加しました。地元がベースのYudaiと一緒で。仙台出身なんですけど、前やっていたバンドでよくサバプロとツアーしていて。3年前ぐらいに前のバンドをやめて、サバプロに入ることになりました。あっという間にサポートからメンバーになって。

Ivan:本当は、前のバンド辞めた後で漁師やるつもりだったんだよね?

Tatsuya:バンド以外の夢がなかったんです。なのでバンドを辞めたら、1年ぐらい漁師やって考える時間が欲しいなって。でも、すぐに誘ってもらえて。サバプロは個性の爆発が大きいバンドですね。完全にセルフでやっているバンドなので。ひとつの作品に向くと、それぞれアイディアがハマっていくんですよ。どの面を出していけばって思ってたんですけど、僕は男気っていうかど根性なところで貢献できればなと(笑)。

Tatsuya

——なるほどねぇ。ちなみに、サバプロは、活動を重ねていくことでグルーヴの進化が伸びているバンドだと思いました。Showさん、ドラマーとしてのこだわりは?

Show/Drums(以下、Show):僕の場合は歌を大事にしたくて。そのためには、ドラムのことだけ考えているとサバプロらしさにはならなくて。他のメンバーもそうだと思うんだけど、ひとつに目的地を置かないといい曲というか作品に個性が生まれないんです。Tatsuyaが加入してから3年で、その距離感というかメンバーそれぞれの性格を理解した上で曲作りできるようになりました。確信が生まれて、洗練さが研ぎ澄まされてきている感じかな。

Show

Yosh:お互いのことを好きでリスペクトしているんです。そうすると「曲のこのセクションは声じゃなくてギターで引っぱるでしょ」みたいな。そんな感覚がアルバム『FIXED』から強くなって。ステージ上で会話をしなくてもお互いわかるんですよ。「こいつこう来るな、ここは渡そう」とか出来るようになって、それがグルーヴ感にも繋がっていて。

——クリエイティビティのぶつかり合いはあまりない感じ?

全員:いえいえ、ありますね(苦笑)。

Tatsuya:そればっかりです(笑)。

Yosh:その仕方でさえ、覚えたって感じです。「ここで爆発するぞ!」みたいな。主に僕なんですけどね(笑)。けっこう溜めちゃうっていうか。でも、もし問題が起きたとしたら、メンバーで集まってスピードで解決できるようになりました。

Ivan:続けるほど、みんなを理解できるようになりました。より物事が早くスムーズに進むし。

Tatsuya:経験値だよね。

——解決の仕方ってのは妥協なのか、抑え方ってのは譲り合いなのか、まったく別方向へいくのか?

Yosh:一番重要だと思っているのは、問題に対してやったことがないことがあれば全力でやるっていうこと。はじめての経験に関してはYes,No言えないですから。やったことあることに関しては意見を言い合ったり、多数決になります。5人というバンドのバランス感を大事にしたいですよね。最後まで意見をしまってしまうと逆に責任感になってしまうので、気持ちがあれば先に言って、無い人達は任せるという。会社でいうと部署間の問題?俺らで言えば得意なことという役割分担。その代わり、僕の役割は全て任せてくれるし、そこは信頼関係ですね。

Tatsuya:妥協って考え方では無いんですけど、譲る時は譲るし、貫く時は貫きますね。

Yosh:成功した時は、案を出した人に対してちゃんと「すごかったね!」って言える自分の気持ちも大事で。結局、みんな頭いいのでいろんなアイディアは出てくるんだけどね。

——見習いたいことです。人それぞれの役割を理解しあって、相乗効果としてパワーを出していくって社会の課題でもありますよね。

Yosh:インターネットができてから、その問題、関係性に向き合う機会は減っていると思うんです。でも、バンドという生活がラッキーで。一緒にいて直接向き合わないと前に進めないんです。意見を出さずにことが前に進んでしまっても、それが俺らのものでなくても勝手に自分たちのスタンスで出されてしまうんです。それとの競争かな。

Show:リスペクトしているからこそちゃんと意見も言えるっていう。じゃないと、ただのディスになってしまうから。

——Bass/Screamを担当するYudaiさんは、サバプロでどんな役割を考えられていますか?

Yudai Bass/Scream(以下、Yudai):バンドはあくまでヴォーカルありきだと思っています。Yoshの歌声をサバプロというツールを通して、どう押し出していくかが大事。僕はセカンド・ヴォーカルという立ち位置なので、そこにどうサポートできるかを考えています。いかにして厚みを増していくかを、頭と技術を使って日々経験値を重ねて考えていますね。以前の作品より今の方が厚みは増して変化してるんです。それでいいと思ってます。バンドは、常に変わっていくものなので。まだ通過点だと思っているので、恐れずにやれるというのがバンドの成長になっていきますよね。

Yudai

——たしかに。そこがサバプロらしさであり走り続ける本質ですね。そんななか、音楽を聴くインフラがストリーミング時代へ変わりつつある過渡期な2019年ですが、サバプロが持つインターナショナルなセンスって実はチャンスというか、世界へ入り口が開かれている現状にぴったりなバンドですよね。よくこの5人が集まりましたよね。

Yosh:ほんと奇跡だと思っています。

Show:元々のルーツが海外の入り口にあるからね。はじめたときからインターナショナルな動き、海外ツアーとか目標にしていました。

Yosh:目標は「世界制覇」って、冗談ではなくこのバンドを結成してからずっと言ってきてるんです。それと同時に現実的には、クアトロみたいなライブハウスでいつでもライブができるようでありたいねって話しもしてました。でも、それはあくまで通過点で。僕らが作品と呼んでいるアルバムをライブでやるときに「どう表現していくのか?」という、より具体的な話も増えてきましたね。

——海外でのライブ経験もこれからは目標ですよね?

Yosh:結成して半年で台湾公演をやって、アジアからまわりはじめて。レコーディングでアメリカ行ったり。それこそ、日本で47都道府県をツアー行ったので、こっからですよね。

Tatsuya:まず、日本でホームを作ってね。

——8月21日に、新曲『MUKANJYO』をリリースします。答えのない内省的な感情をアグレッシヴに爆裂させるナンバーとなりました。

Yosh:ラウドと呼ばれるジャンルってサウンド的に、内容も怒っていることが多いジャンルなんですよ。でも、そもそも僕の中でたどり着くのは「なんで怒っているの?」っていう。歌詞を書くときに、怒る理由をYudaiに聞いたりして。僕は悲しむタイプで、ひとりで泣きながら書くタイプなんです(苦笑)。

Tatsuya:そうだね(笑)。

Yosh:でも「MUKANJYO」は、悲しみと怒りが一致したタイミングで生まれた曲で。たとえば、夢を追っかける時にスタート地点にいる時って良いことしか見えないと思うんです。海外に住んでいる人が富士山を登りたいって夢があったとして、お金を貯めて準備している間には綺麗な景色しか考えられないと思うんです。でも、実際に行ったら観光客がいっぱいでゴミもあったり……。わかります?

——うんうん。

Yosh:そこにたどり着いた時に「なんか違うぞ」って思う瞬間ってあると思うんです。でも、その先に何をするか、感じられるかが大事で。負のサイクルにハマっている自分に気が付けないタイミングってあるよね?って曲なんです。僕にも答えはないし、人から答えを教えて欲しいわけでもないんです。だけど、どこかにこぼすきっかけって必要で。今回、素晴らしいTVアニメ「ヴィンランド・サガ」というストーリー性ある作品でこぼせるタイミングをいただきました。

——いいタイアップですよね。

Yosh:バンドをはじめた頃は「こうなんだよ!」って言い切る歌詞が多かったんです。でも、人に答えを言うよりも質問をしたほうが人は成長できると思うんです。そんな意味もあって歌詞に日本語も入れて、タイトルが「MUKANJYO」というのも答えではなくてここからどうするの? っていう。じゃあ今が「世界の終わりだ」って思うだけじゃなくって。この歳になって、ちゃんと頭を使って次のことを考えられるようになったんだから「考えてみろよ、お前らも」って感じなんです。

MUKANJYO

 

——作品において、方向性をまとめ上げていく上での葛藤は?

Yosh:作品にもよりますけど、曲を作りながらディレクションをしていきますね。僕だけが作っているわけではないんですけどね。Ivanも作ってくるし。

——夏フェスも佳境で、サバプロは新曲『MUKANJYO』もリリースという攻めの季節がやってきていますが、このストリーミング時代においてメンバーそれぞれサバプロでのオススメ曲を最新作にかかわらず教えてもらってもいいですか?

Yudai:基本的に僕がライブのセットリストを提案するんですが、ここぞってときの爆発シーンを意識することもあって。そんな時は、YoshにやばいMC頼んだよって言って、アルバム『Course of Action』の2曲目「Awake You Ask Knda Awakwardly」をやるんです。起爆剤になる曲ですね。

Tatsuya:観てた側のとき、このイメージが強かった。

Show:僕は今、CMで使われているので「Right and Left」を聴いてほしいかな。キッズ時代、テレビで聞いていた曲がかかるとテンションあがっていたから。でも、「Right and Left」から入った人は重めの曲に驚いちゃうと思うけど「T R A N S l a t e d」も聴いて欲しくて。たぶん、一番落差が激しい曲です。どっちも聴いて欲しい。

Right and Left

 

Yosh:この質問自体が難しすぎて(笑)。強いていえば次の作品のことしか考えてないから。今やっているものをベースとして、何が足りないんだろうとか頭を使ってますね……。けど、「Awake You Ask Knda Awakwardly」もなんだけど、いまだに『FIXED』の「Follow」と『s p a c e [ s ]』の「The Happy Song」が最近やってて好きですね。

Follow

 

Tatsuya:それめっちゃわかるんだよなぁ。ちょっと皮肉っているメンタリティーが近いのかもね。

Yosh:あと、このバンドでアコースティックの曲をやるのも好きで。激しい曲もソフトな曲もアレンジして。みんなすごくゆるくなるんですよ。間違ってもジャムだから大丈夫、みたいな(苦笑)。遊び感覚になれるというか、いい意味で我に戻るという。

Tatsuya:いまっぽい感じだと、「The Happy Song」かな。サバプロの最初に感じていたイメージは、「Awake You Ask Knda Awakwardly」でした。あと『Course of Action』から「Mirror」かな。観てた側の時に心を持っていかれたのを思い出すんです。いま聴いてもカッコいいなって。

Ivan:僕も「Mirror」ですね。たまにしかやらない曲なんだけど、作った当時、その頃の景色が浮かんでくるんです。

——ありがとうございます。では最後の質問です。印象的なバンド名、Survive Said The Prophetとはどんなきっかけで名付けられたのでようか?

Yosh:もともと、「〜Said The Prophet」って名付けたいなって頭の中にありました。過去も現在もすべてを知っている預言者(プロフェット)と言われる人たちに、「俺はどうするべきか?」って聞いたら「生き続けろ!」って言われた、みたいな意味なんです。誰かに何かを言われて余計なことを考えるのではなくて「生き続ける」っていうこと。略してサバプロって響きも後付けだけどよかったよね。(笑)

 

New Single「MUKANJYO」 
発売日:2019年8月21日(水)
初回生産限定盤:CD+DVD+「ヴィンランド・サガ」ジャケットデジパック仕様
SRCL-11227~11228 / \1,600+tax
通常盤:CD only
SRCL-11229 / \1,000+tax

<CD収録内容>
1. MUKANJYO
2. Right and Left -“s p a c e [ s ] TOUR 2018-19 FINAL”LIVE Ver.-
3. MUKANJYO -Instrumental-

<DVD収録内容> ※初回生産限定盤のみ
VINLAND SAGA Non Cledit Opening Movie

MUKANJYO … TVアニメ「ヴィンランド・サガ」オープニング・テーマ

「MUKANJYO」先行配信URL

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